Geekに恋した2人

べいかー

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三角関係 四

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 「ユイカちゃん、今度の仕事なんだけど、最近新人賞をとった、森田奏くんって知ってる?」

「えっと…。すみません、詳しくは知らない方なんですけど、どういった仕事ですか?」

女性マネージャーからの問いかけに、ユイカは正直に答えた。

「分かった。

森田奏さんは、最近流行りの、新人作家。この間、小説の新人賞をとって、それで過去の著作も、ブレイクしてきてる。私も何作か読んだけど、なかなか面白いわよ。

それで仕事の方は、一応、雑誌の対談企画なんだけど、テーマは『20代、若き2人の才能』で行きたいと思うんだ。大丈夫かな?」

「もちろんです!ありがとうございます。それと、相手の方に失礼がないように、その、森田奏さんの著作、読んでおきたいんですが…。」

「そうだね。さすがユイカちゃん。一応、ネットにアップされているものは何作かあるけど、新人賞をとった作品は、『未来からの使者』っていうタイトルのものだから、すぐに持ってくるね。」

「いえ、それだけじゃ不十分だと思います。森田奏さんの著作は、ネットにアップされているものがあるなら、それも含めて全部読みたいです。その、『未来からの使者』だけじゃなく、全部紹介してもらえません?」

「分かった。そこまでしなくてもいいとは思うけど…、やっぱりユイカちゃんはユイカちゃんだね。すぐに全部、用意するからね。」

「ありがとうございます!」

ユイカは、モデルの本業だけでなく、こういった仕事にも熱心で、準備は決して怠らない。その姿勢が、今回の対談の企画にも、如実に表れていた。

 そして、ユイカは奏の著作を、読み始めた。読み終えた後の奏の「第一印象」は…、文章の構成がしっかりしていて、頭の良い人だな、という印象であった。また、小説を書くことが、本当に好きなんだなという印象も、ユイカは奏に対して持った。とにかく、対談に当たって、粗相がないようにしないといけない…。ユイカはこの時は、そのことだけを考え、奏との対談の日を待った。
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