20kHz

べいかー

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好きな人の幸せを願うということ 三

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 亜美子は、トシの話に、聴き入っていた。そして、途中から涙が止まらなくなり、亜美子はかすれる声も気にせず、トシに話しかけた。
「でも、余命宣告なんて、当てにならないですよね?もっといい治療方法が見つかるかもしれないし。…何なら、医療がもっと発達している、2010年代の薬を、そっちに送ることはできないですか?私、白血病のことは何も知らないけど、スマホで調べて、頑張って、送りますから!」
「残念ながら、物を送る機能は、ついていません。一応、無線ですから。
 でも、ありがとうございます!やっぱり亜美子さんは、優しいですね。その辺り、お母さんにそっくりだと思います。お母さんも、病気の僕に優しかったですから。」
 「そんなんじゃありません!私の気持ちは、お母さんとは違います!私は、私は…」
亜美子は、今まで言えなかった、気持ちをついに口にした。
「私は、トシさん、池上俊樹さんのことが、好きなんです。その、好きっていうのは、友達としてではなくて、その、男性として、というか、恋人として、というか、そういう意味で…。」
「そうでしたか。それは気がつかなかった。ごめんなさいね。
 でも、僕なんか、2010年代の亜美子さんからしたら、50代のオッサンですよ?」
「私は、それでも良かったんです。もし、50代のトシさんが、私のことを見てくれるなら、それでもいい、そう思って、あなたに逢おうって、決めたんです!」
 「ごめんなさい、亜美子さん、約束守れなくて。繰り返しになりますが、自分の身体のことは、自分がよく分かります。僕の体調は、日増しに悪くなっています。この分だと、もう1ヶ月も、もたないでしょう。
 だから、これが正真正銘、最後の通話になります。
 何か、言い残しておきたいことは、ありませんか?」
亜美子の涙は、とどまることを知らなかった。そして、亜美子は、何とか声を絞り出して、こう言った。
「…分かりました。じゃあ最後に、フランスの話、聴かせてください。」
「そうですね!では、何から話しましょうか?」
「あと、脱線は止めてくださいね!」
「…難しいですが、努力します!」
 そしてその日2人は、夜遅くまで、語り合った。フランスの話、また過去と未来の話、また他愛もない会話…。それは、これが最後の通話になることが嘘のようで、また、トシがこの世からいなくなることも、嘘のようで、亜美子たちにとって、楽しい、楽しすぎるほどの、またかけがえのない、時間であった。
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