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第1章 山岳国家シュウィツアー
第28話 証拠集めの進捗状況
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先日行った警務隊のゲオルグ・シュドリッヒとの話し合いの際、ゼフィーロ王子は以下の疑問も口にしていた。
「兄上の元婚約者ロゼライン嬢の母親が、何度も毒物を携帯したまま王宮を出入りしていたようだが、出入りの際の警務隊の検査体制は一体どうなっているのだい?」
ゲオルグは答えた
「申し訳ございません。検査に携わっている隊士たちは下位貴族や平民出身の者が多く、高位貴族の者から強く言われれば、それ以上のことは要求できなくなってしまうのでしょう。押して検査を行い別の形で報復されることを恐れた彼らの気持ちもわからなくはありません」
「なるほど、身分が下の者でも安心して任を全うできるような体制を整える必要があるということだね」
「はい、そういった体制が整いさえすればこれほど助かることはありません」
ゼフィーロはその後父王にかけ合って、高位貴族の者たちが王宮への出入りの際の持ち物検査を拒否することを罰する王命を出してもらった。
その王命が出されて数日後、王太子の元婚約者の母親のロベリア・ノルドベルクが毒物を携帯しているのが発見されたのである。
「これは着付け薬として持っているだけよ!」
ロベリアは強弁した。
確かにその毒物は少量なら着付け薬として使える。
それを毎日少量摂取して慣らしていけば耐性ができ、大量に摂取しても若干体の具合は悪くなるが命を失うまでには至らない。そうやって自分だけ身体に慣らして、耐性のない者と同じ食品を摂取し相手だけを死に至らしめる、古来より暗殺などによく使われてきた毒物である。
ロベリアはそれをお茶会の時に、気に入らない婦人の飲み物に死なない程度の量を入れて具合を悪くさせ、場のイニシアティブをとらせない事にも利用していた。
着付け薬という言い訳も苦しいが通じないわけではない。
しかしそれならば、なぜそれを携帯していることを届け出なかったのか、と、ロベリアは尋問を受けた。
「今までだったら何の問題もなかったじゃないの!」
ロベリアは大声で尋問している警務隊士に抗議した。
「あーあ、自ら墓穴掘っちゃって」
その様子を上空から観察していたクロがつぶやいた。
ロベリアの処分は夫であるノルドベルク公爵が手を尽くして、今回だけはおとがめなしという事にしてもらった。しかし二度目はない。普段は妻の言いなりになりがちな公爵も、この件ばかりは妻に厳しく言い渡し、ロベリアは不貞腐れるばかりであった。
「へっへっへ、外堀は一つ埋まったわね」
この件に関してゲオルグがゼフィーロの部屋に報告に来ており、もちろんロゼラインも一緒にそれを聞いている最中、クロが笑いながら言った。
「少なくともこれで今回だけでなく以前にも彼女が毒物を王宮内に持ち込んでいたことが周囲に知れ渡ったわけよ。このことだけでロゼラインを毒殺したことと直接結びつけることは難しいにせよ、印象って大事よね」
「確かに、ノルドベルク公爵夫人の『今までだったら』という発言は彼女が以前も毒物を王宮に持ち込んだことを証明している」
ゼフィーロが付け加えた。
「とはいえ、それだと心証だけの問題ですのでもう少し確かな物証とかが欲しいですな」
ゲオルグが言った。
「それなんだが、魔法省に頼んで例の追跡魔法というものを試みてもらったんだが、時間がたちすぎておぼろげにしかわからず、証拠として扱うのは難しいみたいなんだ。何とかならないかと食い下がったら、魔法省内にはいないが、時間がたってもわずかな思念の痕跡から触れた人物を全て言い当てることのできる凄腕の魔導士が存在するらしく、その人に頼めないかと使いを送ったところなんだ」
ゼフィーロの言葉に二人と一匹は、裁判に堪えうる証拠がそろうまでもう少し時間がかかることを理解した。
ただそれはいいとして、実は別の問題がロゼラインに降りかかっていた。
「兄上の元婚約者ロゼライン嬢の母親が、何度も毒物を携帯したまま王宮を出入りしていたようだが、出入りの際の警務隊の検査体制は一体どうなっているのだい?」
ゲオルグは答えた
「申し訳ございません。検査に携わっている隊士たちは下位貴族や平民出身の者が多く、高位貴族の者から強く言われれば、それ以上のことは要求できなくなってしまうのでしょう。押して検査を行い別の形で報復されることを恐れた彼らの気持ちもわからなくはありません」
「なるほど、身分が下の者でも安心して任を全うできるような体制を整える必要があるということだね」
「はい、そういった体制が整いさえすればこれほど助かることはありません」
ゼフィーロはその後父王にかけ合って、高位貴族の者たちが王宮への出入りの際の持ち物検査を拒否することを罰する王命を出してもらった。
その王命が出されて数日後、王太子の元婚約者の母親のロベリア・ノルドベルクが毒物を携帯しているのが発見されたのである。
「これは着付け薬として持っているだけよ!」
ロベリアは強弁した。
確かにその毒物は少量なら着付け薬として使える。
それを毎日少量摂取して慣らしていけば耐性ができ、大量に摂取しても若干体の具合は悪くなるが命を失うまでには至らない。そうやって自分だけ身体に慣らして、耐性のない者と同じ食品を摂取し相手だけを死に至らしめる、古来より暗殺などによく使われてきた毒物である。
ロベリアはそれをお茶会の時に、気に入らない婦人の飲み物に死なない程度の量を入れて具合を悪くさせ、場のイニシアティブをとらせない事にも利用していた。
着付け薬という言い訳も苦しいが通じないわけではない。
しかしそれならば、なぜそれを携帯していることを届け出なかったのか、と、ロベリアは尋問を受けた。
「今までだったら何の問題もなかったじゃないの!」
ロベリアは大声で尋問している警務隊士に抗議した。
「あーあ、自ら墓穴掘っちゃって」
その様子を上空から観察していたクロがつぶやいた。
ロベリアの処分は夫であるノルドベルク公爵が手を尽くして、今回だけはおとがめなしという事にしてもらった。しかし二度目はない。普段は妻の言いなりになりがちな公爵も、この件ばかりは妻に厳しく言い渡し、ロベリアは不貞腐れるばかりであった。
「へっへっへ、外堀は一つ埋まったわね」
この件に関してゲオルグがゼフィーロの部屋に報告に来ており、もちろんロゼラインも一緒にそれを聞いている最中、クロが笑いながら言った。
「少なくともこれで今回だけでなく以前にも彼女が毒物を王宮内に持ち込んでいたことが周囲に知れ渡ったわけよ。このことだけでロゼラインを毒殺したことと直接結びつけることは難しいにせよ、印象って大事よね」
「確かに、ノルドベルク公爵夫人の『今までだったら』という発言は彼女が以前も毒物を王宮に持ち込んだことを証明している」
ゼフィーロが付け加えた。
「とはいえ、それだと心証だけの問題ですのでもう少し確かな物証とかが欲しいですな」
ゲオルグが言った。
「それなんだが、魔法省に頼んで例の追跡魔法というものを試みてもらったんだが、時間がたちすぎておぼろげにしかわからず、証拠として扱うのは難しいみたいなんだ。何とかならないかと食い下がったら、魔法省内にはいないが、時間がたってもわずかな思念の痕跡から触れた人物を全て言い当てることのできる凄腕の魔導士が存在するらしく、その人に頼めないかと使いを送ったところなんだ」
ゼフィーロの言葉に二人と一匹は、裁判に堪えうる証拠がそろうまでもう少し時間がかかることを理解した。
ただそれはいいとして、実は別の問題がロゼラインに降りかかっていた。
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