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第1章 山岳国家シュウィツアー
第29話 ロゼライン目撃談
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報告が終わるとゲオルグは自分の任務に戻っていった。
さて、ロゼラインについて困ったこと。
最近ロゼラインの姿の目撃談が増えたことである。
それを彼女たちと話し合いをするため、ゼフィーロはアイリスの執務室へと向かっていた。
彼女たちとはアイリス、ロゼライン、黒猫のクロ(彼女も一応女の子)、そしてゾフィである。
先日ゾフィの実家に訪れた時の話し合いの結果、ゾフィはアイリスの侍女としてウスタライフェン家に雇われることとなった。
彼女の能力を埋もれさせるのが惜しいということ。
そしてロゼライン毒殺事件において、ゾフィが重要な証言者であることに王太子やノルドベルク家の人間が気づけば彼女の身に危険が及ぶ可能性があるため、ウスタライフェン家が盾となるようにしたのである。
王宮内の噂についてはゾフィとゾフィの指示を受けた侍女たちが聞き取りをしてくれていた。
「ロゼライン様の目撃談はおひとりで王宮内をさまよっている姿もありますが、多くはゼフィーロ王子殿下の後ろに漂っているというものでした」
なるほど。
たしかにゼフィーロの調査について回り、一緒に結果を聞きに行くことが多いので当然かもしれない。
「それにしてもここにきて噂が急激に増えたのはどうしてでしょうかね?」
アイリスが問いを発した。
「まず一つは、今までロゼラインがやっていたことを代わりにしている者が期待外れだったからではないでしょうか?」
ゾフィが推測して答えた。
「うんうん、噂によるとサルビア嬢は王族の妃がまかされるはずの仕事を今もほとんどできていないし、すぐ罵声を上げたり、場合によっては暴力も振るうという。義姉上の方がよっぽどましだったと、改めて思う人が増えたってことだろうね」
ゼフィーロも相槌を打った。
要するに後釜が勝手に墓穴を掘ってくれていると……。
ロゼラインとしては若干複雑な思いだった。
生きている間は一生懸命仕事をしてもそれを当たり前のように周囲は考え、母や王太子に好き勝手罵られているのをかばってくれる人もいなかった。
それをいまさら惜しまれても……。
「まずは、という事は他にも理由が?」
ロゼラインは尋ねた。
「そうですね、亡くなられたロゼライン様の姿を目にしても普通は自分の目がおかしくなったのでは、と、考えます。現に自分もそうでした。でも誰かが『視える』と口火を切ったら、『自分も』と明かす人間がどんどん出てきて、それが今の状態なのではないでしょうか」
ゾフィは人間心理の分析も長けている。
そのくらいでなければ王族の妃の相談役は務まらない。
「それにしても、目撃情報が僕と一緒の時が多いというのは少しマズいかもな。今の調査は秘密裏に行っているから、僕と義姉上を関連づける話が広まると動きにくくなる」
ゼフィーロが考え込んだ。
「そうね、調査で分かったことを一緒に聞きたくてついて回っていたけど、今後はそれをしない方がいいのかしら?」
アイリスの部屋でおとなしく待っていたほうが?
それはそれで退屈だしじれる。
そして、次はアイリスと一緒の目撃談が増えるだけのような気もする。
一人でうろついていろいろ調べてみようか?
それも一人の時の目撃談が増えるだけ。
「う~ん……」
ロゼラインが頭を抱えていると、聞き覚えのある声が響いてきた。
「そろそろ行き詰まる頃だと思っていた。だから助太刀に来たぞ、我が小さな眷属と薄命の美姫よ」
さて、ロゼラインについて困ったこと。
最近ロゼラインの姿の目撃談が増えたことである。
それを彼女たちと話し合いをするため、ゼフィーロはアイリスの執務室へと向かっていた。
彼女たちとはアイリス、ロゼライン、黒猫のクロ(彼女も一応女の子)、そしてゾフィである。
先日ゾフィの実家に訪れた時の話し合いの結果、ゾフィはアイリスの侍女としてウスタライフェン家に雇われることとなった。
彼女の能力を埋もれさせるのが惜しいということ。
そしてロゼライン毒殺事件において、ゾフィが重要な証言者であることに王太子やノルドベルク家の人間が気づけば彼女の身に危険が及ぶ可能性があるため、ウスタライフェン家が盾となるようにしたのである。
王宮内の噂についてはゾフィとゾフィの指示を受けた侍女たちが聞き取りをしてくれていた。
「ロゼライン様の目撃談はおひとりで王宮内をさまよっている姿もありますが、多くはゼフィーロ王子殿下の後ろに漂っているというものでした」
なるほど。
たしかにゼフィーロの調査について回り、一緒に結果を聞きに行くことが多いので当然かもしれない。
「それにしてもここにきて噂が急激に増えたのはどうしてでしょうかね?」
アイリスが問いを発した。
「まず一つは、今までロゼラインがやっていたことを代わりにしている者が期待外れだったからではないでしょうか?」
ゾフィが推測して答えた。
「うんうん、噂によるとサルビア嬢は王族の妃がまかされるはずの仕事を今もほとんどできていないし、すぐ罵声を上げたり、場合によっては暴力も振るうという。義姉上の方がよっぽどましだったと、改めて思う人が増えたってことだろうね」
ゼフィーロも相槌を打った。
要するに後釜が勝手に墓穴を掘ってくれていると……。
ロゼラインとしては若干複雑な思いだった。
生きている間は一生懸命仕事をしてもそれを当たり前のように周囲は考え、母や王太子に好き勝手罵られているのをかばってくれる人もいなかった。
それをいまさら惜しまれても……。
「まずは、という事は他にも理由が?」
ロゼラインは尋ねた。
「そうですね、亡くなられたロゼライン様の姿を目にしても普通は自分の目がおかしくなったのでは、と、考えます。現に自分もそうでした。でも誰かが『視える』と口火を切ったら、『自分も』と明かす人間がどんどん出てきて、それが今の状態なのではないでしょうか」
ゾフィは人間心理の分析も長けている。
そのくらいでなければ王族の妃の相談役は務まらない。
「それにしても、目撃情報が僕と一緒の時が多いというのは少しマズいかもな。今の調査は秘密裏に行っているから、僕と義姉上を関連づける話が広まると動きにくくなる」
ゼフィーロが考え込んだ。
「そうね、調査で分かったことを一緒に聞きたくてついて回っていたけど、今後はそれをしない方がいいのかしら?」
アイリスの部屋でおとなしく待っていたほうが?
それはそれで退屈だしじれる。
そして、次はアイリスと一緒の目撃談が増えるだけのような気もする。
一人でうろついていろいろ調べてみようか?
それも一人の時の目撃談が増えるだけ。
「う~ん……」
ロゼラインが頭を抱えていると、聞き覚えのある声が響いてきた。
「そろそろ行き詰まる頃だと思っていた。だから助太刀に来たぞ、我が小さな眷属と薄命の美姫よ」
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