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第2章 精霊たちの世界
第58話 小さな虹と大きな虹
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人も動物もすべての生き物は死んで現身を失うとそれぞれにふさわしい場所に向かう。
ここもその一部。
広々とした柔らかな草原、穏やかな日差し、豊富な食べ物。
すべてが満ち足りたその場所で動物たちはかつて愛してくれた人間が訪れてくれるのを待つ。
愛してくれた人と再会した動物たちは、その人とともに虹の橋を渡って天国へ行く。
すべてが満たされた場所で愛し愛された人間を待っている動物たちと違い、愛されず虐待されたものたちがたむろしている一角があり、そのあたりの猫や犬を二足猫は「ナナシ」と呼んでいた。
そんな「ナナシ」は時々やってくる、同じく誰にも愛されなかった人間と心を通い合わせ一緒にこの場所を去っていくときがある。
互いに何物にも愛されず生前に出会う機会を逸したもの同士がであって奇跡を起こすのもこの場所だった。
黒猫クロの立場はナナシに近かったけど、彼女は人間を連れてここにやってきた。
これはイレギュラー中のイレギュラーで、彼女たちは筋金入りの「珍客」だったのだ。
ここまでやってきた経緯は変わっていてもロゼラインがその場所でやっていたことは他の人間と変わらなかった。
ナナシたちの近くに座っていた人間は愛されなかった過去を思い出す。
周りの大人のずるい本音を見破る能力は子供の方が優れていることがある。
ずるい大人たちは決して反撃しない相手をターゲットにいたぶってくる。
親と子の密室で誰も聞いていない場所での暴言。
「あなたのため」といった言葉で正当化する子供の意思を無視した操作。
思い通りに行かない場合の罵声や人格批判。
様々な苦しい過去を思い浮かべる時、その人間の周りには黒い霧が発生した。
その黒い霧に触れると病気になると、草原にいる犬や猫は噂しあった。
ロゼラインの身体からも黒い霧が発生し、彼女自身がそれを止めることはどうしてもできなかった。
努力しても認めてくれず手ひどい裏切りを見せた彼らに対して湧き上がる殺意や復讐心。
持ちたくて持った感情ではないのに、人の世はそんな感情を持つことすら悪い事のように語られる。
持ったことすら非難されるなどまったくもって理不尽だ。
こんな痛みはもうたくさんだとロゼラインは思った。
もうたくさんだと思うと同時にそれを忘れて別人になるのは、たとえ幸せを確約されていても納得できないとも思ってしまっていた。
ロゼライン自身は気づいてないけど傷はやはり魂核にまで及んでいたようだ。
人から発生する黒い霧、大多数の犬や猫は避けていた。
だが、それにちゅうちょせずに飛び込む子が必ず一匹は出て来る。
「よせ、病気になるぞ!」
ほかの者が注意を促す。
しかし、勇敢な子、奇跡を起こすもの同士として繋がれた子は逡巡しない。
黒い霧は微細な水滴の集まりだった。
発生する水滴が濁って黒い霧となっていた。
水滴は毛皮にも張り付きクロはそれをぶるるっと体を震わせてはじいた。
するとどうだろう!
弾き飛ばされた水滴は透明になった。
そして、その小さな水滴が反射して、飛び込んだロゼラインの胸元で小さな虹を作った。
小さな虹ができた瞬間、草原の端の方でも遠くへ続く大きな虹がかかったのだった。
ここもその一部。
広々とした柔らかな草原、穏やかな日差し、豊富な食べ物。
すべてが満ち足りたその場所で動物たちはかつて愛してくれた人間が訪れてくれるのを待つ。
愛してくれた人と再会した動物たちは、その人とともに虹の橋を渡って天国へ行く。
すべてが満たされた場所で愛し愛された人間を待っている動物たちと違い、愛されず虐待されたものたちがたむろしている一角があり、そのあたりの猫や犬を二足猫は「ナナシ」と呼んでいた。
そんな「ナナシ」は時々やってくる、同じく誰にも愛されなかった人間と心を通い合わせ一緒にこの場所を去っていくときがある。
互いに何物にも愛されず生前に出会う機会を逸したもの同士がであって奇跡を起こすのもこの場所だった。
黒猫クロの立場はナナシに近かったけど、彼女は人間を連れてここにやってきた。
これはイレギュラー中のイレギュラーで、彼女たちは筋金入りの「珍客」だったのだ。
ここまでやってきた経緯は変わっていてもロゼラインがその場所でやっていたことは他の人間と変わらなかった。
ナナシたちの近くに座っていた人間は愛されなかった過去を思い出す。
周りの大人のずるい本音を見破る能力は子供の方が優れていることがある。
ずるい大人たちは決して反撃しない相手をターゲットにいたぶってくる。
親と子の密室で誰も聞いていない場所での暴言。
「あなたのため」といった言葉で正当化する子供の意思を無視した操作。
思い通りに行かない場合の罵声や人格批判。
様々な苦しい過去を思い浮かべる時、その人間の周りには黒い霧が発生した。
その黒い霧に触れると病気になると、草原にいる犬や猫は噂しあった。
ロゼラインの身体からも黒い霧が発生し、彼女自身がそれを止めることはどうしてもできなかった。
努力しても認めてくれず手ひどい裏切りを見せた彼らに対して湧き上がる殺意や復讐心。
持ちたくて持った感情ではないのに、人の世はそんな感情を持つことすら悪い事のように語られる。
持ったことすら非難されるなどまったくもって理不尽だ。
こんな痛みはもうたくさんだとロゼラインは思った。
もうたくさんだと思うと同時にそれを忘れて別人になるのは、たとえ幸せを確約されていても納得できないとも思ってしまっていた。
ロゼライン自身は気づいてないけど傷はやはり魂核にまで及んでいたようだ。
人から発生する黒い霧、大多数の犬や猫は避けていた。
だが、それにちゅうちょせずに飛び込む子が必ず一匹は出て来る。
「よせ、病気になるぞ!」
ほかの者が注意を促す。
しかし、勇敢な子、奇跡を起こすもの同士として繋がれた子は逡巡しない。
黒い霧は微細な水滴の集まりだった。
発生する水滴が濁って黒い霧となっていた。
水滴は毛皮にも張り付きクロはそれをぶるるっと体を震わせてはじいた。
するとどうだろう!
弾き飛ばされた水滴は透明になった。
そして、その小さな水滴が反射して、飛び込んだロゼラインの胸元で小さな虹を作った。
小さな虹ができた瞬間、草原の端の方でも遠くへ続く大きな虹がかかったのだった。
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