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第四帖 忍戦
4-4 戦(2)
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◆◇
江戸から姫木への道程は、常人より早い菊羽の足で、全力で急いでも、まる半日ほどは要する。
普通に旅をすれば、三日半くらいか。
夜中の街道は、整備されているとはいえ、暗い。
月と、義経松明を光源に、菊羽は先を急いでいた。
遠くから、野犬か狼の遠吠えが染み渡ってくる。
ほとんど荷物はない。
町娘のような格子柄の紬に、師から預かっている二冊の書を背にくくり付け、腰から水筒を下げ、愛用の小太刀を背負い、脚絆を巻いている。
ほかは、使っている最中の松明と、懐中には例の丸薬と、忍びの道具くらいだった。
特殊な呼吸法と走法で、街道を駆ける。
遠吠えが何度か重なるうちに、じょじょに近くなってきた。
「――えっ?」
菊羽は足を止める。
「なんだ……?」
周囲を見回すが、旅路をゆく人はもちろん、獣の影も、ない。
最速を誇る無刻飛脚も、走っていない。
「気のせい――か?」
呟いた菊羽の前に、一頭の犬が現れた。
目を爛々と燃やし、菊羽に敵意を向けているように見える。
大きい。
「なっ――なに?」
菊羽は懐を探る。
犬に与えられる薬品の類は、持っていなかった。
横に動いてみると、道をふさぐように犬はじわりと位置を変える。
一歩踏み込むが、犬は下がらない。
まだ、小太刀の間合いにはなっていない。
「なんだよ――急いでるんだ」
じりじりとした対峙を続けていたその時、
「そなたか」
菊羽の背後から声がかかり、反射的に菊羽は振り返った。
目線の外れた菊羽に、前方の犬が飛びかかってくる。
「わっ!?」
辛うじてかわした菊羽の後ろにいたのは、少女――に見えた。
十かその前後くらいに見える、性徴の薄そうな容姿で、菊羽と同じような縞の着物の足をからげ――襲いかかってきたもの以上に大きな犬の背に、跨っていた。
眉は剃り落とさず、髪は遊廓の禿のように短く、結ってもいない。
それなのに、少女に見えない妙な深さのありそうな瞳で、菊羽を見ていた。
その犬はここまで走ってきたのだろう、荒い息を小刻みに吐いていた。
「だ、誰だっ!」
小太刀を抜く。
「漁火」
女が、短く名乗って犬から降りる。
四尺ほどか、菊羽よりも小さい。
「そなたが、菊じゃな」
少女の声のようには、聞こえない。
大型犬を従えて、無造作に菊羽に近付く。
「炉助に頼まれて来たが、妙なにおいをしておるの、そなた」
と、鼻をひくつかせる。
「炉助……?」
「宗丈のことじゃ。
――そなた、女のも男のも、両方のにおいがする。どっちじゃ」
菊羽は目を大きくする。
漁火と名乗った女は、しかし菊羽の返答を待たずに犬の腹の下に手を入れた。
「まあよい。確かめるのは、殺めてからでよかろ」
ずるり、と犬の腹から出してきたのは、長大な刀であった。
自分の身長の一・五倍はありそうで幅の広い野太刀を、軽々と肩に乗せる。
鞘をこの大犬に据え付け、そこから抜き放ったのである。
「酉谷宗丈の――手の者かっ」
菊羽は腰を落とす。
が、
「こんな、女の子が?」
つい菊羽の口から、そんな言葉が出ていた。
漁火は野太刀の峰で肩をとんとんと叩き、呆れた顔を見せる。
「呑気じゃの、菊とやら。
――まあよい」
漁火は優しげな笑みを浮かべた。
「これでも四十じゃ。そなたよりは年経ておるぞ、たぶん」
一見少女のようでその実、自分よりかなり年上と聞かされ、菊羽は驚きを隠せないように漁火をまじまじと見てしまう。
「父上より、上――!?」
「そうか、娘みたいな差か」
隙を晒した菊羽に、すすと近寄る。
「ではこの漁火を母と思い、親孝行として斬られてくれるか」
と優しげな調子で、続けて、
「ねえお姉ちゃん、あたしに斬られて、お願いっ」
声色を高く変えてまさに童女のような上目遣いで菊羽を見上げ――筋が疾った。
辛うじて身を屈めつつ小太刀で上に受け流したのは、うなりを上げる野太刀であった。
その身に有しているのが信じられない膂力で、刀を振り回したのだった。
月明かりに、漁火の刀身が鈍く光る。
いつの間にか、漁火の口に細い竹のような筒があった。
菊羽は体勢を立て直して、漁火を見据える。
ふう、と漁火が肩をすくめ、細筒を吹いた。
――音は、聞こえない。
漁火のが口を離す。首から下げていたらしく、質素な飾りのように首もとで揺れる。
「やはり、この子らにやらせてやろう」
そう呟いたのとほぼ同時に、四方から犬が現れた。
「な――っ!?」
周囲を順に見て、菊羽の視線は漁火の前に戻る。
「分けおうて、喰らえ」
ごく自然な口調の漁火の声を合図に、犬が一斉に菊羽を襲う。
「ぅわっ!? くっ、このっ!」
十数頭はいる、それも柄の大きな犬が、菊羽に次々に飛びかかる。
重なる犬に、菊羽はすっかり埋もれる。
漁火が鼻を動かして表情を変えた。
「散れっ!」
命令に爆発が重なる。
逃げ切れなかった犬が悲鳴とともに吹き飛ぶ。
破れた紬を残して、菊羽の姿は消えていた。
「自爆か――いや」
漁火はなおも鼻をひくひくとさせ続ける。
野太刀をぴたりと上段に構えた。
「そこじゃ!」
地を叩く。
土を抉り割る剛剣を避けて菊羽が飛び出した。
紬の下に着ていた、袖のない襦袢も腰巻も、土にまみれていた。
「小娘と侮ったわ――癪な真似を」
立っている犬は、半分もいない。
「ど、どうして判ったんだっ」
そのまま、菊羽は刀を構えなおす。
「におい、じゃ」
漁火は野太刀をまた肩に乗せた。
「儂の鼻は、人より鋭くできておってな」
世間話のように、軽く言う。
「犬の血でも入っておるのかの。この子らも慕うてくれておるし」
さて、と己を囲んで菊羽を睨む犬の群れを分けさせて、漁火が近付く。
「これ以上、この子らを傷つけさせとうない。面倒じゃが、儂が、斬ってやる」
野太刀を片手で軽く振る。
「なっ!?」
薙いだ切っ先が返る。
無骨な太刀が嘘のように上下左右に走り回り、空を切る音を立てつづける。
菊羽が踏み込んだところで剣が止まり、漁火の喉を狙った菊羽の刀が受け止められた。
弾き飛ばされた菊羽は空中で一回転する。
その着地きわを野太刀が襲う。
すんでのところで刀を小太刀で受ける。
小太刀が破裂するように折れた。
転がる菊羽は低い体勢で漁火を見上げる。
「そろそろ、この子らへの食事の時間、かの――」
どすん、と野太刀が地に触れる。
菊羽が地を蹴る。
漁火が刀を突く。
瞬速の突きが生む風圧で菊羽の襦袢が裂け散る。
菊葉が漁火の顔に押し付けたものが薄くけぶる。
「むく――ぅ」
漁火がそれを吸って唸る。
菊羽の脇腹で血がしぶく。
菊羽が、膝を落とした。
漁火が、瞳を震わせた。
「こっ……こんな、ぬ、は――」
漁火が倒れた。
菊羽が手を引く。
持っていたのは、義経松明であった。
前述のとおり、これは水銀と鳥の羽根の化学反応で光るものであり、それで生じる煙は水銀蒸気――つまり、毒である。
削った角からそれが容易に漏れて迂闊に吸わぬつくりになっているが、菊羽はそれを解放して、漁火に吸わせたのだ。
常人よりも過敏な鼻をもつ漁火が固まって溢れるそれを吸い込んでしまい、急性中毒に陥ったのだった。
菊羽が、周囲を睨む。
囲んでいた犬たちが、散り散りに逃げ出した。
ただ一頭、漁火を乗せてきた犬のみ、あるじの顔を心配そうに舐めはじめる。
それを見て菊羽は困ったように、松明の封を戻した。
漁火が落とした野太刀を拾おうとして、あまりの重さに諦める。
戦意を見せずに漁火に寄り添う犬に結局何も言わずに、菊羽は振り返って駆けだした。
江戸から姫木への道程は、常人より早い菊羽の足で、全力で急いでも、まる半日ほどは要する。
普通に旅をすれば、三日半くらいか。
夜中の街道は、整備されているとはいえ、暗い。
月と、義経松明を光源に、菊羽は先を急いでいた。
遠くから、野犬か狼の遠吠えが染み渡ってくる。
ほとんど荷物はない。
町娘のような格子柄の紬に、師から預かっている二冊の書を背にくくり付け、腰から水筒を下げ、愛用の小太刀を背負い、脚絆を巻いている。
ほかは、使っている最中の松明と、懐中には例の丸薬と、忍びの道具くらいだった。
特殊な呼吸法と走法で、街道を駆ける。
遠吠えが何度か重なるうちに、じょじょに近くなってきた。
「――えっ?」
菊羽は足を止める。
「なんだ……?」
周囲を見回すが、旅路をゆく人はもちろん、獣の影も、ない。
最速を誇る無刻飛脚も、走っていない。
「気のせい――か?」
呟いた菊羽の前に、一頭の犬が現れた。
目を爛々と燃やし、菊羽に敵意を向けているように見える。
大きい。
「なっ――なに?」
菊羽は懐を探る。
犬に与えられる薬品の類は、持っていなかった。
横に動いてみると、道をふさぐように犬はじわりと位置を変える。
一歩踏み込むが、犬は下がらない。
まだ、小太刀の間合いにはなっていない。
「なんだよ――急いでるんだ」
じりじりとした対峙を続けていたその時、
「そなたか」
菊羽の背後から声がかかり、反射的に菊羽は振り返った。
目線の外れた菊羽に、前方の犬が飛びかかってくる。
「わっ!?」
辛うじてかわした菊羽の後ろにいたのは、少女――に見えた。
十かその前後くらいに見える、性徴の薄そうな容姿で、菊羽と同じような縞の着物の足をからげ――襲いかかってきたもの以上に大きな犬の背に、跨っていた。
眉は剃り落とさず、髪は遊廓の禿のように短く、結ってもいない。
それなのに、少女に見えない妙な深さのありそうな瞳で、菊羽を見ていた。
その犬はここまで走ってきたのだろう、荒い息を小刻みに吐いていた。
「だ、誰だっ!」
小太刀を抜く。
「漁火」
女が、短く名乗って犬から降りる。
四尺ほどか、菊羽よりも小さい。
「そなたが、菊じゃな」
少女の声のようには、聞こえない。
大型犬を従えて、無造作に菊羽に近付く。
「炉助に頼まれて来たが、妙なにおいをしておるの、そなた」
と、鼻をひくつかせる。
「炉助……?」
「宗丈のことじゃ。
――そなた、女のも男のも、両方のにおいがする。どっちじゃ」
菊羽は目を大きくする。
漁火と名乗った女は、しかし菊羽の返答を待たずに犬の腹の下に手を入れた。
「まあよい。確かめるのは、殺めてからでよかろ」
ずるり、と犬の腹から出してきたのは、長大な刀であった。
自分の身長の一・五倍はありそうで幅の広い野太刀を、軽々と肩に乗せる。
鞘をこの大犬に据え付け、そこから抜き放ったのである。
「酉谷宗丈の――手の者かっ」
菊羽は腰を落とす。
が、
「こんな、女の子が?」
つい菊羽の口から、そんな言葉が出ていた。
漁火は野太刀の峰で肩をとんとんと叩き、呆れた顔を見せる。
「呑気じゃの、菊とやら。
――まあよい」
漁火は優しげな笑みを浮かべた。
「これでも四十じゃ。そなたよりは年経ておるぞ、たぶん」
一見少女のようでその実、自分よりかなり年上と聞かされ、菊羽は驚きを隠せないように漁火をまじまじと見てしまう。
「父上より、上――!?」
「そうか、娘みたいな差か」
隙を晒した菊羽に、すすと近寄る。
「ではこの漁火を母と思い、親孝行として斬られてくれるか」
と優しげな調子で、続けて、
「ねえお姉ちゃん、あたしに斬られて、お願いっ」
声色を高く変えてまさに童女のような上目遣いで菊羽を見上げ――筋が疾った。
辛うじて身を屈めつつ小太刀で上に受け流したのは、うなりを上げる野太刀であった。
その身に有しているのが信じられない膂力で、刀を振り回したのだった。
月明かりに、漁火の刀身が鈍く光る。
いつの間にか、漁火の口に細い竹のような筒があった。
菊羽は体勢を立て直して、漁火を見据える。
ふう、と漁火が肩をすくめ、細筒を吹いた。
――音は、聞こえない。
漁火のが口を離す。首から下げていたらしく、質素な飾りのように首もとで揺れる。
「やはり、この子らにやらせてやろう」
そう呟いたのとほぼ同時に、四方から犬が現れた。
「な――っ!?」
周囲を順に見て、菊羽の視線は漁火の前に戻る。
「分けおうて、喰らえ」
ごく自然な口調の漁火の声を合図に、犬が一斉に菊羽を襲う。
「ぅわっ!? くっ、このっ!」
十数頭はいる、それも柄の大きな犬が、菊羽に次々に飛びかかる。
重なる犬に、菊羽はすっかり埋もれる。
漁火が鼻を動かして表情を変えた。
「散れっ!」
命令に爆発が重なる。
逃げ切れなかった犬が悲鳴とともに吹き飛ぶ。
破れた紬を残して、菊羽の姿は消えていた。
「自爆か――いや」
漁火はなおも鼻をひくひくとさせ続ける。
野太刀をぴたりと上段に構えた。
「そこじゃ!」
地を叩く。
土を抉り割る剛剣を避けて菊羽が飛び出した。
紬の下に着ていた、袖のない襦袢も腰巻も、土にまみれていた。
「小娘と侮ったわ――癪な真似を」
立っている犬は、半分もいない。
「ど、どうして判ったんだっ」
そのまま、菊羽は刀を構えなおす。
「におい、じゃ」
漁火は野太刀をまた肩に乗せた。
「儂の鼻は、人より鋭くできておってな」
世間話のように、軽く言う。
「犬の血でも入っておるのかの。この子らも慕うてくれておるし」
さて、と己を囲んで菊羽を睨む犬の群れを分けさせて、漁火が近付く。
「これ以上、この子らを傷つけさせとうない。面倒じゃが、儂が、斬ってやる」
野太刀を片手で軽く振る。
「なっ!?」
薙いだ切っ先が返る。
無骨な太刀が嘘のように上下左右に走り回り、空を切る音を立てつづける。
菊羽が踏み込んだところで剣が止まり、漁火の喉を狙った菊羽の刀が受け止められた。
弾き飛ばされた菊羽は空中で一回転する。
その着地きわを野太刀が襲う。
すんでのところで刀を小太刀で受ける。
小太刀が破裂するように折れた。
転がる菊羽は低い体勢で漁火を見上げる。
「そろそろ、この子らへの食事の時間、かの――」
どすん、と野太刀が地に触れる。
菊羽が地を蹴る。
漁火が刀を突く。
瞬速の突きが生む風圧で菊羽の襦袢が裂け散る。
菊葉が漁火の顔に押し付けたものが薄くけぶる。
「むく――ぅ」
漁火がそれを吸って唸る。
菊羽の脇腹で血がしぶく。
菊羽が、膝を落とした。
漁火が、瞳を震わせた。
「こっ……こんな、ぬ、は――」
漁火が倒れた。
菊羽が手を引く。
持っていたのは、義経松明であった。
前述のとおり、これは水銀と鳥の羽根の化学反応で光るものであり、それで生じる煙は水銀蒸気――つまり、毒である。
削った角からそれが容易に漏れて迂闊に吸わぬつくりになっているが、菊羽はそれを解放して、漁火に吸わせたのだ。
常人よりも過敏な鼻をもつ漁火が固まって溢れるそれを吸い込んでしまい、急性中毒に陥ったのだった。
菊羽が、周囲を睨む。
囲んでいた犬たちが、散り散りに逃げ出した。
ただ一頭、漁火を乗せてきた犬のみ、あるじの顔を心配そうに舐めはじめる。
それを見て菊羽は困ったように、松明の封を戻した。
漁火が落とした野太刀を拾おうとして、あまりの重さに諦める。
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