追放されたデバフ使いが実は対ボス最終兵器でした〜「雑魚にすら効かない」という理由で捨てられたけど、竜も魔王も無力化できます〜

チャビューヘ

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第6話【月下の帰路】

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 第6話【月下の帰路】

 森の夜道は冷たかった。

 アクセルは大きく息を吐いた。

 白い吐息が月明かりに溶ける。

 足が重い。

 体の芯まで疲れていた。

 ダリウスは左腕をカバうように歩いている。

 クリス、彼女の足取りは乱れていない。

 剣を腰に差したまま、前を見据えている。

 アクセルは自分の手を見た。

 震えている。

 恐怖じゃない。

 初めて誰かを救えたという、奇妙な高揚感だ。

「報酬はギルドで受け取れる」

 クリスが言った。

「三等分でいいな」

「え? 俺も?」

 アクセルは顔を上げた。

「当たり前だろ」

 ダリウスが笑った。

 痛みで顔をしかめるが、笑みは消えない。

「お前のデバフがなきゃ、俺たちは死んでた」

 胸が熱くなる。

 五年間、一度も言われなかった言葉だ。

「ありがとう、ございます」

 声が震えた。

 クリスが立ち止まる。

「礼を言うな」

 彼女がアクセルを見た。

「対等な仲間だ」

 ダリウスが背中をタタいてきた。

 痛かったが、ウレしかった。

 三人は再び歩き始めた。

 月光が木々の間から差し込む。

 遠くで鳥が鳴いた。

「なあ、アクセル」

 ダリウスが話しかけてくる。

「お前、元パーティから何て言われてた?」

「役立たず、って」

 アクセルは苦笑した。

 もう痛くない。

 不思議だった。

「デバフ特化は理解されにくい」

 クリスが言った。

 感情のない声だが、否定ではない。

「雑魚狩りじゃ、真価が出ない」

「そうなんです」

 アクセルはウナズいた。

「五年間、ずっとゴブリンとかスライムばっかりで」

「もったいねぇな」

 ダリウスが肩をすくめた。

「そんなスキル持っててボス戦させないとか」

「俺たちは逆だ」

 クリスが続ける。

「ボス戦ばかりで、補助役が必要だった」

「前の仲間は引退しちまってな」

 ダリウスの声が少し寂しげになる。

「いい奴だったんだが、怪我でよ」

「それで俺を?」

「ああ」

 クリスがウナズいた。

「条件は一つ。補助に徹することができる奴」

火力厨カリョクチュウは使えない」

 ダリウスが付け加える。

「自分が目立ちたがるからな」

 アクセルは二人を見た。

 S級冒険者。

 最上位の実力者たちが、補助職を必要としている。

 それがウレしかった。

「あんたたちは、S級にどうやって?」

「実力」

 クリスが即答した。

「それだけだ」

「まあ、運もあったけどな」

 ダリウスが笑う。

「こいつが竜を倒したんだよ」

「え、竜?」

「ワイバーンだ」

 クリスが訂正した。

「竜じゃない」

「似たようなもんだろ」

「全然違う」

 二人の掛け合いに、アクセルは笑った。

 初めてだ。

 こんなに自然に笑えるのは。

 森が開けてきた。

 木々の間隔が広くなる。

 王都が近い。

「明日、もう一人紹介する」

 クリスが言った。

「ミラって言う魔法使いだ」

「どんな人ですか?」

「明るい」

 ダリウスが答えた。

「よくシャベる。よく笑う」

「それとよく食う」

 クリスが小さく笑った。

 初めて見る笑顔だ。

「お前とは合うと思う」

「俺と?」

「ああ」

 クリスがウナズいた。

「ミラは補助魔法も使える」

「お前と組めば、俺たちの生存率は跳ね上がる」

「四人になれば、もっと大きな依頼を受けられるな」

 ダリウスが楽しそうに言った。

「S級依頼だぜ? 報酬が桁違いだ」

 アクセルは胸が高鳴るのを感じた。

 S級依頼。

 想像したこともなかった世界だ。

「俺、ちゃんとできるかな」

「できる」

 クリスの声に迷いがない。

「今日証明した」

「そうだぜ」

 ダリウスが肩を揺らした。

「お前は強い。自信持て」

 強い。

 俺が。

 信じられなかったが、二人の目は真剣だった。

 森を抜けた。

 視界が開ける。

 王都の明かりが見えた。

 城壁の松明が揺れている。

「着いたな」

「今日は宿に泊まろう」

 クリスが言った。

「ダリウスの傷も診てもらわないと」

「たいしたことねぇよ」

「治療師に見せろ。命令だ」

 クリスの声に有無を言わせぬ響きがあった。

 ダリウスは観念したように肩をすくめる。

「お前がそう言うなら」

 二人の掛け合いを見て、アクセルは微笑んだ。

 これが、パーティなんだ。

 仲間なんだ。

「アクセル」

 クリスが振り返った。

「そのまま、『銀翼亭』について来い」

「ミラを紹介する」

「わかりました」

 アクセルはウナズいた。

 王都の門が近づいてくる。

 門番が松明を掲げている。

 門をくぐれば、新しい人生が始まる。

 五年間、ずっと探していた場所。

 やっと見つけた。

「行こうぜ!」

 ダリウスの声に、三人は歩を速めた。

 月明かりが三人の影を長く伸ばす。

 その影は、もう一人分の余白を残していた。
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