追放されたデバフ使いが実は対ボス最終兵器でした〜「雑魚にすら効かない」という理由で捨てられたけど、竜も魔王も無力化できます〜

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第5話【覚醒の瞬間】

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 第5話【覚醒の瞬間】

 足が動いた。

 気づいたら走り出していた。

 茂みを蹴って広場へ飛び出す。

「やるしかない!」

 叫びと共に右手を突き出した。

 オーガロードに向けて。

 魔力が体の奥から湧き上がる。

 いつもと同じ感覚。

 いつもと同じスキル。

「《弱体化》!」

 声が森に響いた。

 次の瞬間。

 俺の足元に光の輪が広がる。

 複雑な幾何学模様。

 二重、三重に重なる円環。

 その間を文字が流れていく。

 魔法陣だ。

 輪が回転する。

 光が強くなる。

 そして空中へ浮かび上がった。

 魔法陣がオーガロードへ向かう。

 蛇のように。

 獲物を狙うように。

 光の鎖となって巨体に絡みつく。

 腕に。

 脚に。

 胴体に。

 オーガロードがえた。

 巨大な腕を振る。

 だが。

「!」

 動きが遅い。

 明らかに遅い。

 さっきまでの速さがウソのように。

 鈍く。

 重く。

 まるで水の中を動いているみたいだ。

「何が起きた……?」

 女性の声。

 クリスだ。

 剣を構えたまま、オーガロードを見ている。

 黒髪が風に揺れた。

 その目が驚きに見開かれている。

 彼女の視線が俺に向く。

「あなた、今のは……」

 俺の視界に光が現れた。

 空中に浮かぶウィンドウ。

 文字が並んでいる。

 赤い数字が点滅した。

 《弱体化Lv5》発動

 対象:オーガロード(Lv50)

 攻撃力 1200 → 360(-70%)

 防御力 800 → 240(-70%)

 速度  600 → 180(-70%)

 《特性発動:対象レベル高位・効果量増幅》

 俺は目を疑った。

 マイナス70%。

 ウソだろ。

 俺のスキルは雑魚に効かない。

 せいぜいマイナス10%程度だった。

 それが。

 なんでこんなに。

「こんなに……効くのか?」

 声が震える。

 自分の両手を見た。

 いつもと同じ手だ。

 いつもと同じ魔力だ。

 なのに。

 クリスの表情が変わった。

 驚きから、理解へ。

 そして決意へ。

「ダリウス!」

 彼女が叫ぶ。

 木の根元を見た。

 ダリウスが倒れている。

 肩で息をしている。

 苦しそうだ。

「動けるの?」

 クリスの声に緊張が走る。

 ダリウスが顔を上げた。

 歯を食いしばっている。

「くそ……」

 彼が片手を地面につく。

 体を起こそうとする。

 腕が震えた。

「体が……重ぇ」

 だが諦めない。

 もう片方の手も地面につく。

 膝を立てる。

 ゆっくりと立ち上がる。

「でも、動ける」

 ダリウスが戦センプを拾い上げた。

 肩に担ぐ。

 息が荒い。

 それでも目に力がある。

「あいつ、弱ってんだろ?」

 クリスがウナズく。

「ええ。信じられないほど」

 彼女が剣を構える。

「私が先に攻撃する。あなたは最後の一撃を」

「おう」

 ダリウスが低く応える。

 痛みを堪えている声だ。

 クリスが地面を蹴った。

 低い姿勢で走る。

 剣を引き絞る。

 オーガロードが反応する。

 だが遅い。

 コン棒を振る動作が鈍い。

 クリスは容易くカワした。

「《ソウジンセン》!」

 一セン

 青白い光の軌跡。

 剣がオーガロードの首筋を斬り裂く。

 深い。

 一撃が深い。

 黒い血が飛び散る。

 オーガロードがえた。

 だが力がない。

 弱々しい。

 クリスが跳び退く。

 着地と同時に叫ぶ。

「今よ、ダリウス!」

 ダリウスが走り出した。

 足取りが重い。

 肩が上がっていない。

 それでも走る。

 戦センプを振りかぶる。

 両手に力を込める。

 顔がユガむ。

 痛みに。

 それでも。

「これで……終わりだああああ!」

 コン身の一撃。

 戦センプがオーガロードの胴体に食い込んだ。

 ズガァン!

 鈍い音。

 肉を裂く音。

 骨が砕ける音。

 オーガロードの巨体が揺れる。

 傾く。

 膝が折れる。

 地面に倒れ込んだ。

 ドォン!

 大地が震える。

 土煙が舞い上がる。

 動かない。

 完全に。

 静寂が訪れた。

 風が木々を揺らす音だけが聞こえる。

 ダリウスが膝をついた。

 戦センプツエにして体を支える。

「はぁ……はぁ……」

 荒い息。

 汗が額を伝う。

 クリスが駆け寄る。

「大丈夫?」

「ああ……なんとかな」

 ダリウスが苦笑いする。

「あいつが弱ってたから、なんとか……」

 彼が俺を見た。

 その目に驚きがある。

「兄ちゃん、お前……」

 俺は言葉が出なかった。

 頭が追いつかない。

 何が起きたんだ。

 俺のスキルが。

 あのオーガロードを。

 クリスが俺の方を向いた。

 その目が俺を捉える。

「あなたのデバフのおかげよ」

 彼女が近づいてくる。

 俺の目の前に立った。

「あのままでは、私たちは負けていた」

 ダリウスが立ち上がる。

 まだ足元が覚束ない。

「助かったぜ」

 彼が親指を立てる。

「お前のデバフ、マジですげぇ」

 クリスが問う。

「あなた、名前は?」

 冷静な声。

 でも、どこか興味を含んでいる。

「ア、アクセルです」

 ようやく声を絞り出す。

「冒険者カード、見せてもらえる?」

 俺は震える手でカードを取り出した。

 クリスがそれを受け取る。

 目を細めた。

「……C級?」

 彼女が顔を上げる。

 信じられないという表情だ。

「この実力で、C級?」

 ダリウスもノゾき込む。

「マジか! 冗談だろ!」

 俺は首を横に振った。

「俺、弱いんです。デバフしか使えなくて」

 言葉が口をついて出る。

「元パーティから追放されたばかりで」

 クリスの目が鋭くなった。

「追放?」

 彼女が腕を組む。

「あなたのようなデバフ使いを?」

「はい……役に立たないって」

 ダリウスが首を傾げた。

「どういうことだ?」

 俺は説明した。

 5年間、ずっと雑魚狩りだけだったこと。

 デバフが効かなかったこと。

 マルセルに無能と言われたこと。

 クリスが静かにウナズいた。

「なるほど」

 彼女が俺にカードを返す。

「あなたのスキルは、対象が強いほど効果が増す」

 彼女の指が空中を示す。

「さっきのシステム表示、見たわ」

 そうか。

 あの文字。

「《特性発動:対象レベル高位・効果量増幅》」

 クリスが続ける。

「つまり、低レベルの雑魚には効果が薄い」

「でも、ボス級の強敵には絶大な効果を発揮する」

 彼女の言葉が胸に響く。

「あなたは……対ボス専用の切り札だったのよ」

 頭が真っ白になった。

 そんな。

 俺のスキルが。

 ダリウスが低く笑う。

 痛みを堪えた笑いだ。

「なんだそりゃ。もったいねぇ」

 彼が肩を揺らす。

「そんなスキル持っててボス戦させないとか」

「元パーティのやつら、見る目ねぇな」

 クリスが俺をまっすぐ見た。

「アクセル」

 彼女が手を差し出す。

「私はクリス。S級冒険者よ」

 S級。

 最上位の。

「こっちはダリウス。私のパーティメンバー」

 ダリウスがにやりと笑う。

 まだ痛そうだが、目は輝いている。

「よろしくな、アクセル」

 クリスが続ける。

「あなた、私たちのパーティに来ない?」

 え。

 今、何て。

「あなたのデバフは本物よ」

 クリスの目が真剣だ。

「このまま埋もれさせるには惜しい」

 ダリウスがウナズく。

「そうだぜ。お前みたいな逸材、放っておけねぇ」

 俺は二人を見た。

 クリス。

 ダリウス。

 S級冒険者が。

 俺を。

 認めてくれている。

 胸が熱くなる。

 喉が詰まる。

「本当に……いいんですか?」

 声が震えた。

「俺なんかが」

 クリスが小さく笑った。

 初めて見る笑顔だ。

「謙虚ね。気に入ったわ」

 ダリウスが低く笑う。

「決まりだな」

 俺はウナズいた。

 深く。

「……ありがとうございます」

 クリスが剣をサヤに納める。

「じゃあ、まずは王都に戻りましょう」

「ダリウス、歩ける?」

「ああ、問題ねぇ」

 ダリウスが戦センプを肩に担ぐ。

 まだ痛そうだが、足取りはしっかりしている。

「ギルドで治療してもらえばいい」

 三人で歩き出す。

 森の中を。

 月明かりが道を照らす。

 俺の足取りが軽い。

 初めてだ。

 こんな気持ち。

 認められた。

 必要とされた。
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