追放されたデバフ使いが実は対ボス最終兵器でした〜「雑魚にすら効かない」という理由で捨てられたけど、竜も魔王も無力化できます〜

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第10話【ストーンゴーレム戦①】

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 第10話【ストーンゴーレム戦①】

 馬車は山道を登り続けた。

 車輪が石を踏むたび、ガタガタと揺れる。

 アクセルは窓の外を見た。

 木々が途切れ、岩肌が露出している。

 遺跡が近い。

「あと少しね」

 ミラが地図を確認する。

「緊張してる?」

 クリスがいた。

「はい、少し」

 アクセルはウナズく。

 手が冷たい。

 呼吸が浅い。

 でも、逃げたいわけじゃない。

 やるしかない。

 それだけだ。

「見えたぞ」

 ダリウスが指差した。

 崖の中腹に、巨大な石造りの門。

 古代遺跡の入口。

 馬車が止まる。

 四人は降りた。

 門は半ば崩れていた。

 石の破片が地面に散らばる。

 ツタが絡みつき、コケが生えている。

 アクセルは門をくぐった。

 ひんやりとした空気。

 湿った石の匂い。

 足音が異様に響く。

「静かだな」

 ダリウスがツブヤく。

「油断しないで」

 クリスが剣を抜いた。

 廊下を進む。

 壁には古代文字。

 意味は分からない。

 だが、かつてここに人がいた証だ。

 何百年も前の。

 天井から水滴が落ちる。

 ぽた、ぽた、と規則的に。

 廊下が開けた。

 大広間。

 石柱が並び、天井は高い。

 だが、その中央に。

 それは、いた。

 ストーンゴーレム。

 アクセルの息が止まる。

 巨大だ。

 高さは5メートルを超える。

 天井にあと少しで届きそうな巨体。

 全身が灰色の岩で覆われている。

 人型だが、顔はない。

 ただ、胸の中央に赤い魔石が埋め込まれている。

 脈打つように、明滅している。

「でかい」

 ダリウスが唾を飲む。

「予想以上ね」

 ミラの声が硬い。

 アクセルは足が震えるのを感じた。

 あれと戦う。

 本当に、勝てるのか。

 その時。

 ゴーレムが動いた。

 頭部がこちらを向く。

 見られてる。

 顔はないのに、そう感じた。

 ゴーレムが一歩前に出る。

 ドン、と地面が揺れた。

 石畳に亀裂が走る。

 もう一歩。

 また揺れる。

 石柱がキシむ音。

「来るぞ!」

 クリスが叫んだ。

 ゴーレムが腕を振り上げた。

 巨大な拳。

 丸太のように太い腕。

 振り下ろされる。

「散開!」

 四人は左右に飛んだ。

 拳が床をタタく。

 轟音ゴウオン

 衝撃で体が浮く。

 石の破片が飛び散った。

 アクセルは転がって立ち上がる。

 床に、深い穴。

 直撃なら即死だ。

「速い!」

 ダリウスが叫ぶ。

 ゴーレムがもう一度腕を振った。

 横薙ヨコナぎ。

 ダリウスがオノで受ける。

 ガキン、と金属音。

 だが、ダリウスの体が吹き飛んだ。

 壁に激突する。

「ダリウス!」

 ミラが駆け寄る。

「大丈夫だ」

 ダリウスが立ち上がる。

 だが、腕が震えている。

「硬い、重い」

 息が荒い。

「攻撃が通らない」

 クリスの剣がゴーレムの腕を斬った。

 だが、浅い。

 岩の表面に傷がつく程度。

「このままじゃ無理だ」

 クリスが後退する。

 アクセルは状況を見た。

 ダリウスの攻撃は弾かれる。

 クリスの剣も浅い。

 ミラの魔法は。

「《火炎弾》!」

 ミラが詠唱する。

 炎の球がゴーレムに直撃した。

 爆発。

 煙が晴れる。

 ゴーレムは無傷だった。

 魔法も効かない。

 どうする。

 このままじゃ。

「アクセル!」

 クリスが叫んだ。

「お前のデバフよ!」

 そうだ。

 俺の【弱体化】。

 でも。

 本当に効くのか。

 こんな巨大な相手に。

 前のパーティでは、雑魚にすら効かなかった。

 でも。

 オーガロードには効いた。

 ストーンゴーレムは、レベル60。

 オーガロードより強い。

 なら。

 もっと効くはずだ。

 信じろ。

 自分のスキルを。

「分かりました!」

 アクセルは前に出た。

「時間を稼いでください!」

「任せろ!」

 ダリウスがえる。

 三人がゴーレムの注意を引く。

 アクセルは新しいツエを握った。

 黒い木。

 青い魔石。

 魔力が流れ込んでくる。

 深呼吸。

 集中しろ。

 魔力を込める。

 ツエが光り始めた。

 青白い光。

 胸の奥から、魔力がアフれる。

 今まで感じたことのない量。

 新しいツエの効果だ。

 もっと。

 もっと込める。

 ゴーレムがこちらを向いた。

 拳が迫る。

「アクセル!」

 ミラの声。

「今よ!」

 アクセルはツエを突き出した。

「【弱体化】!」

 青白い光がツエの先から放たれた。

 魔法陣が空中に展開する。

 複雑な幾何学模様。

 それがゴーレムに向かって飛んだ。

 ゴーレムの体に魔法陣が絡みつく。

 光が脈打つ。

 一度、二度、三度。

 そして。

 爆発的に広がった。

 ゴーレムの全身を青白い光が包む。

 マブしい。

 目を細める。

 光が収まる。

 ゴーレムの体に、魔法陣の痕が残っていた。

 青白く光る文字が、全身を覆っている。

 効いた。

 確かに効いた。

 ゴーレムの動きが鈍くなる。

 明らかに。

 振り上げた腕が、ゆっくりと下がっていく。

「何が起きた?」

 ダリウスが呆然アゼンとする。

「動きが」

 クリスが目を見張る。

「遅くなってる」

 アクセルの視界に、文字が浮かんだ。

 【弱体化Lv5】発動成功

 対象:ストーンゴーレム(Lv60)

 効果:全能力値-75%

 持続時間:10分

 75%。

 オーガロードの時より、効果が高い。

 やはり、相手が強いほど。

 効果が増す。

 これが、俺のスキルの真価。

「今なら攻撃が通る!」

 アクセルが叫んだ。

「全員、総攻撃!」

 クリスが剣を構える。

「了解!」

 ダリウスがオノを握り直す。

 ミラが詠唱を始める。

 三人が同時に動いた。

 クリスの剣がヒラメく。

 【蒼刃閃ソウジンセン】。

 青い光の斬撃。

 ゴーレムの腕に直撃する。

 今度は深い。

 岩が砕ける。

 破片が飛び散った。

「効いた!」

 クリスが驚愕キョウガクする。

 ダリウスのオノが振り下ろされる。

 【豪断】。

 ゴーレムの脚にタタき込まれた。

 鈍い音。

 亀裂が走る。

 ゴーレムがよろめいた。

 初めて、バランスを崩す。

「やれるぞ!」

 ダリウスが笑った。

 ミラの魔法が完成する。

「《炎爆》!」

 巨大な炎の球。

 ゴーレムの胸に直撃した。

 爆発。

 轟音ゴウオン

 煙が広がる。

 ゴーレムが後退する。

 一歩、二歩。

 胸の魔石に、ヒビが入っていた。

「弱点が見えた!」

 クリスが叫ぶ。

「胸の魔石よ!」

 アクセルは息を整えた。

 手が震える。

 魔力を大量に使った。

 でも、まだいける。

 持続時間は10分。

 その間に、決着をつける。

 ゴーレムがえた。

 顔はないのに、声が響く。

 低い、地響きのような咆哮ホウコウ

 怒っている。

 いや、違う。

 何か、様子がおかしい。

 ゴーレムの胸の魔石が、明滅を速めた。

 赤い光が強くなる。

 脈打つリズムが早い。

 まるで、心臓のように。

「何だ、あれ」

 ダリウスが眉をひそめる。

 その時。

 ゴーレムの体から、赤い光が噴き出した。

 魔石を中心に、光の筋が全身を走る。

 青白い魔法陣の光が、押し返されていく。

 消えかけている。

「まずい」

 クリスが後退する。

「デバフが効かなくなってる!」

 アクセルは目を見張った。

 そんな。

 まだ1分も経っていない。

 10分持つはずなのに。

 ゴーレムの全身から、赤い光がアフれた。

 青白い魔法陣が完全に消える。

 そして。

 ゴーレムの動きが、元に戻った。

 いや、それ以上。

 さっきより、速い。

「逃げろ!」

 クリスが叫んだ。

 ゴーレムの拳が迫る。

 速すぎる。

 避けられない。

 アクセルは目を閉じた。
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