追放されたデバフ使いが実は対ボス最終兵器でした〜「雑魚にすら効かない」という理由で捨てられたけど、竜も魔王も無力化できます〜

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第32話 【グラナドス戦①】

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 第32話 【グラナドス戦①】

 洞窟を進む。

 最深部へ。

 そして、俺たちは辿タドり着いた。

 巨大な空間が広がっている。

 天井は見えない。

 氷の柱が、幾つも立ち並ぶ。

 それぞれが、建物ほどの太さだ。

 松明の光が、氷壁に反射する。

 青白い光が、空間全体を照らす。

 美しい。

 だが、どこか不吉だ。

 空気が冷たい。

 肌を刺すような冷気。

 吐く息が白く凍る。

「ここが、最深部か」

 ダリウスがツブヤいた。

 その声が、洞窟に響く。

 エコーが何度も繰り返す。

 俺は周囲を見渡した。

 何もいない。

 気配もない。

 だが、何かがいる。

 そう確信できる。

「おかしいわ」

 クリスが眉をひそめた。

「これほどの空間なのに、何の痕跡もない」

 ミラがツエを握りしめる。

「魔力が、濃いです」

 彼女の声が震えている。

「とても濃い。まるで」

「まるで?」

「生きてるみたい」

 その瞬間だった。

 地面が震えた。

 一度。

 二度。

 リズミカルな振動。

 まるで心臓の鼓動のような。

「来るぞ!」

 俺は剣を抜いた。

 クリスとダリウスも構える。

 ミラは詠唱を始めた。

 だが、何も現れない。

 ただ、振動だけが続く。

 そして、気温がさらに下がった。

 指先がシビれる。

 ヨロイの隙間から冷気が入り込む。

「アクセル」

 クリスが小さく呼ぶ。

「見て」

 彼女が指差す先。

 洞窟の奥。

 闇の中に、何かがある。

 巨大な影。

 氷の玉座のような。

 その上に、何かが座っている。

 松明を掲げた。

 光が届く。

 そして、俺は息をんだ。

 ウロコだ。

 銀白色のウロコ

 一枚一枚が盾ほどの大きさ。

 月光をマトった金属のよう。

 それが、動いた。

 ゆっくりと。

 音もなく。

 頭部が現れた。

 長い顎。

 鋭い角が後ろへ伸びる。

 そして、瞳。

 金色の瞳。

 氷のように冷たい。

 だが、生きている。

 確かに生きている。

 竜だ。

 本物の古代竜。

 全長は五十メートルを超える。

 この空間でさえ、窮屈そうだ。

 翼が両壁に届く。

 尾が洞窟の奥まで続く。

 存在そのものが、圧倒的だ。

「グラナドス」

 クリスがツブヤいた。

 その名を聞いて、竜が動いた。

 頭部がゆっくりと持ち上がる。

 金色の瞳が、俺たちを捉えた。

 足が動かない。

 体が拒否している。

 逃げろと本能が叫ぶ。

 だが、俺は剣を握りしめた。

 ここまで来たんだ。

 引き返すわけにはいかない。

 竜が口を開いた。

「久しいな、人間よ」

 言葉。

 人の言葉。

 低く、重い声。

 洞窟全体に響き渡る。

「っ!」

 ミラが小さく悲鳴を上げた。

 ダリウスが後ずさる。

シャベった!?」

「竜が、人の言葉を!?」

 クリスは動じていない。

 ただ、目を細めた。

「知性を持つ個体か」

 そして、一歩前に出る。

「古代竜グラナドス。私たちは、あなたを討伐するために来た」

 グラナドスの瞳が、クリスを見つめる。

 しばらく沈黙が続いた。

 やがて、竜は低く笑った。

「討伐か。そうであろうな」

 その声には、疲労が混じっている。

ナンジらは、北の領主の依頼を受けたのであろう」

「ああ」

 俺が答えた。

「村を襲った。それを止めるために来た」

「襲った?」

 グラナドスは首を傾げた。

「我は、この千年、ここを動いておらぬ」

 千年。

 その言葉の重さが、胸に圧し掛かる。

「では、子竜たちは」

「我が眷属ケンゾクが、勝手に動いたのであろう」

 グラナドスは目を閉じた。

「我が力が弱まり、制御が効かなくなった」

「弱まった?」

 クリスが問う。

「封印が、弱まっているのか」

 グラナドスの瞳が開く。

 その目が、クリスを鋭く見た。

「よく知っておるな、小娘」

「石碑を読んだ」

「ほう。あの古代文字を解読したか」

 グラナドスは興味深そうにウナズいた。

「ならば、我が何者か、知っておるのであろうな」

「封印守護者」

 クリスが答える。

「あなたは、封印を守るために存在している」

「その通り」

 グラナドスは玉座から立ち上がった。

 巨大な体が、ゆっくりと動く。

 洞窟全体が震える。

 氷柱が天井から落ちた。

 ダリウスの横に突き刺さる。

「おいおい!」

 グラナドスは構わず続けた。

「我は封印守護者。千年前、この地に配置された」

「封印を守るため、永遠に生き続ける」

 その声が、低く沈む。

「だが、今や封印は弱まり」

「我が理性も、失われつつある」

 沈黙が落ちた。

 重く、冷たい沈黙。

 ミラが震える声で聞いた。

「それじゃあ、どうなるの」

「我は、暴走するであろう」

 グラナドスは淡々と答えた。

「封印の力なくして、我の本性は制御できぬ」

「やがて理性を失い、すべてを破壊する」

「それを止めるために」

 俺が一歩前に出た。

「俺たちが来た」

 グラナドスの瞳が、俺を捉える。

 金色の瞳。

 その奥に、何かが見える。

 疲労。

 絶望。

 そして、かすかな希望。

「そうか」

 グラナドスは静かに言った。

「ならば、我を殺せ」

 その言葉に、全員が息をんだ。

「それが、運命だ」

 グラナドスの声は、穏やかだった。

「我を倒し、その核を使え」

「封印を再強化するのだ」

「待て」

 俺は剣を下ろした。

「他に方法はないのか」

「封印の中に何がある」

「それを知れば」

「それを知る資格があるのは」

 グラナドスが遮った。

「我を倒した者のみだ」

「なぜだ」

「弱き者に、真実は重荷でしかない」

 その目が、俺を見つめる。

ナンジらは、我を倒せるか?」

「倒せぬ者に、真実を語る意味はない」

 クリスが前に出た。

「あなたは、自ら死を望むのか」

「望む、望まぬではない」

 グラナドスは首を振った。

「これが、我が使命だ」

「守護者とは、守るために死ぬ者のこと」

 ミラの目に涙が浮かぶ。

「そんな」

「でも、あなたは悪くない」

「ただ、封印を守っていただけなのに」

「悪か、善か」

 グラナドスは低く笑った。

「そのような区別は、人の世のものだ」

「我には関係ない」

 そして、静かに続けた。

「ただ、一つだけ言おう」

「我を倒した後、後悔するかもしれぬぞ」

「どういう意味だ」

 ダリウスが問う。

 だが、グラナドスは答えなかった。

 ただ、立ち上がる。

 全身から、魔力がアフれ出した。

 青白い光。

 冷気が渦を巻く。

「さあ、来い」

 低い声。

 そして、咆哮ホウコウ

「ガアアアアアッ!」

 轟音ゴウオンが洞窟を揺らす。

 衝撃波が襲いかかる。

 俺は本能的に地面に伏せた。

 頭上を何かが通り過ぎる。

 絶対零度の息吹。

「散れ!」

 クリスの叫び。

 全員が四方に飛び散る。

 さっきまで立っていた場所が凍りついた。

 氷の柱が、地面から突き出す。

 グラナドスの尾が振り下ろされた。

 ダリウスが大剣で受ける。

「ぐっ!」

 吹き飛ばされる。

 壁にタタきつけられた。

「ダリウス!」

「大丈夫だ!」

 彼は立ち上がる。

 だが、その顔には驚愕キョウガクの色。

「こいつ、マジでヤバいぞ!」

 クリスが指示を飛ばす。

「アクセル、デバフを!」

「ミラ、支援魔法!」

「ダリウス、時間を稼いで!」

 俺はウナズいた。

 剣を構え、グラナドスを見る。

 金色の瞳が、俺を見返した。

 その目には、悲しみがある。

 だが、迷いはない。

 これが、運命なのか。

 この竜を殺すことが。

 俺にできるのか。

 本当に。

 だが、選択肢はない。

 封印を守らなければ。

 世界が、危機にヒンする。

 俺は呼吸を整えた。

 魔力を集める。

 デバフを発動する準備。

 グラナドスが再び咆哮ホウコウした。

 洞窟全体が震える。

 天井から氷が降り注ぐ。

 戦いが、始まった。

 この古代竜との。

 そして、その先にある真実への。
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