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第43話 【海の専門家】
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シーブリーズのギルド支部は、人で溢れていた。
冒険者たちの怒号と笑い声が混じる。
魚の匂いと潮風が入り混じった空気。
俺たちが扉を開けた瞬間、何人かの視線がこちらに向いた。
すぐに興味を失って、また自分の仕事に戻る。
受付に向かって歩く。
ダリウスが周囲を見回していた。
「賑やかだな」
「港町だからな」
俺は答えた。
ミラは少し緊張した様子で俺の後ろを歩いている。
無意識にポケットのブローチを触った。
青い花の形。
クリスの温もりが、まだそこに残っている気がした。
受付カウンターに着く。
若い女性職員が対応してくれた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「レヴィアスについて知りたい」
俺は単刀直入に言った。
職員の顔色が変わる。
「レヴィアス……ですか」
彼女は周囲を見回した。
声を潜める。
「討伐、ですか?」
「ああ」
職員は深く息を吐いた。
「無理です。無理無理」
彼女は首を横に振る。
「A級でも無理なんです」
「A級でも?」
ダリウスが身を乗り出した。
「はい。3日前も……」
職員は言葉を切った。
指先が震えている。
「3日前も?」
俺は促した。
「A級パーティが、挑戦したんです」
彼女の声が小さくなる。
「全滅しました」
空気が重くなった。
ミラの息を呑む音が聞こえた。
「……全滅」
俺は繰り返した。
職員は頷く。
「船が、嵐に飲まれて」
「生存者は?」
「誰も、戻ってきませんでした」
ダリウスの拳が握られる。
開かれる。
また握られる。
「じゃあ、どうやって近づくんだ?」
彼の声に焦りが混じっていた。
「それが……」
職員は資料を取り出した。
古い地図だった。
羊皮紙に描かれた海図。
「封印は、この辺りにあると記録されています」
彼女は地図の一点を指した。
「アクアベル沖、約100km」
「100km……」
ミラが呟く。
「しかも、海面下200mです」
職員は続けた。
「200m」
ミラの顔が青ざめる。
ダリウスも眉をひそめた。
「呼吸の魔法とか、ないのか?」
「あります。でも……」
職員は首を横に振る。
「通常の魔法では、深度200mは無理なんです」
「じゃあ、どうする」
俺は尋ねた。
職員は少し考えた後、答えた。
「唯一の方法は……」
彼女は声を潜める。
「アクアベルの『海導師ギルド』
に相談することです」
「海導師?」
俺は聞き返した。
「はい。海洋専門の魔法使い集団です」
職員は説明を続ける。
「水魔法、航海術、海洋生物学に精通していて」
「そいつらに頼めば、なんとかなるのか?」
ダリウスが聞いた。
職員は曖昧に首を傾げる。
「最近は、人手不足で……」
「人手不足?」
「ええ。レヴィアス討伐に協力できる人がいるかどうか」
職員の言葉に、また空気が重くなる。
その時、カウンターの横から声がした。
「あんたら、本気でレヴィアスに挑むのか?」
振り返ると、中年の男が立っていた。
日焼けした肌。
船乗りの服装。
地元の冒険者だろう。
「ああ」
俺は答えた。
男は苦笑した。
「やめとけ。死ぬぞ」
「どういうことだ?」
「あの海域に近づいた船は、全部沈んでる」
男は腕を組んだ。
「嵐が常に発生してるんだ」
「常に?」
「ああ。しかも、ただの嵐じゃない」
男は目を細めた。
「水中に、巨大な影が見えるんだ」
「影?」
「レヴィアスの本体さ」
男の声が低くなる。
「全長50mはある。いや、もっとかもしれない」
ミラが俺の服を掴んだ。
その手が震えている。
「だが、行くしかない」
俺は言った。
男は俺を見た。
しばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「……そうか」
彼は小さく笑う。
「なら、一つ教えてやる」
「何だ?」
「アクアベルには、伝説の水魔法使いがいたらしい」
男の声に、少し希望が混じった。
「伝説?」
「ああ。『流水の連鎖術』
を使えたとか」
「流水の連鎖術……」
俺は繰り返した。
初めて聞く名前だった。
「でも、今はもう引退したって話だ」
男は肩をすくめる。
「まあ、会えるかどうかは運次第だな」
「そうか。ありがとう」
俺は礼を言った。
男は手を振って、カウンターから離れていった。
俺は職員に向き直る。
「アクアベルまで、どのくらいかかる?」
「船で半日ほどです」
「分かった」
俺は頷いた。
ダリウスとミラを見る。
「行くぞ」
ダリウスは拳を握った。
「おう」
ミラは不安そうだったが、頷く。
「……うん」
俺たちはギルドを後にした。
港へ向かう。
船の手配が必要だった。
歩きながら、俺は考える。
海導師ギルド。
伝説の水魔法使い。
流水の連鎖術。
全てが未知だ。
でも、クリスが信じてくれた。
俺のデバフの力を。
今度は、俺がそれに応えなければならない。
ポケットのブローチを握る。
冷たい金属の感触。
でも、どこか温かい気がした。
「アクセル」
ダリウスが声をかけた。
「大丈夫か?」
「ああ」
俺は答えた。
「考え事してただけだ」
「そっか」
ダリウスは前を向く。
「俺たちなら、なんとかなるさ」
彼の声に、いつもの明るさが戻っていた。
ミラも歩調を合わせる。
「アクセルくん」
「ん?」
「私……頑張るから」
彼女は俺を見上げた。
その瞳に、決意が宿っている。
「ああ。一緒に頑張ろう」
俺は微笑んだ。
ミラも小さく笑う。
港が見えてきた。
午後の日差しが、海面を照らしている。
波の音が近づいてくる。
漁師たちの声。
カモメの鳴き声。
港町特有の活気。
船着き場に着く。
何隻もの船が係留されていた。
「船を探さないとな」
ダリウスが言う。
「ああ」
俺たちは船着き場を歩き始めた。
アクアベルへ。
東の海洋都市へ。
そこで、新しい仲間を見つける。
海導師を。
伝説の水魔法使いを。
そして、レヴィアスに挑む。
俺の新しい冒険が、今始まろうとしていた。
冒険者たちの怒号と笑い声が混じる。
魚の匂いと潮風が入り混じった空気。
俺たちが扉を開けた瞬間、何人かの視線がこちらに向いた。
すぐに興味を失って、また自分の仕事に戻る。
受付に向かって歩く。
ダリウスが周囲を見回していた。
「賑やかだな」
「港町だからな」
俺は答えた。
ミラは少し緊張した様子で俺の後ろを歩いている。
無意識にポケットのブローチを触った。
青い花の形。
クリスの温もりが、まだそこに残っている気がした。
受付カウンターに着く。
若い女性職員が対応してくれた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「レヴィアスについて知りたい」
俺は単刀直入に言った。
職員の顔色が変わる。
「レヴィアス……ですか」
彼女は周囲を見回した。
声を潜める。
「討伐、ですか?」
「ああ」
職員は深く息を吐いた。
「無理です。無理無理」
彼女は首を横に振る。
「A級でも無理なんです」
「A級でも?」
ダリウスが身を乗り出した。
「はい。3日前も……」
職員は言葉を切った。
指先が震えている。
「3日前も?」
俺は促した。
「A級パーティが、挑戦したんです」
彼女の声が小さくなる。
「全滅しました」
空気が重くなった。
ミラの息を呑む音が聞こえた。
「……全滅」
俺は繰り返した。
職員は頷く。
「船が、嵐に飲まれて」
「生存者は?」
「誰も、戻ってきませんでした」
ダリウスの拳が握られる。
開かれる。
また握られる。
「じゃあ、どうやって近づくんだ?」
彼の声に焦りが混じっていた。
「それが……」
職員は資料を取り出した。
古い地図だった。
羊皮紙に描かれた海図。
「封印は、この辺りにあると記録されています」
彼女は地図の一点を指した。
「アクアベル沖、約100km」
「100km……」
ミラが呟く。
「しかも、海面下200mです」
職員は続けた。
「200m」
ミラの顔が青ざめる。
ダリウスも眉をひそめた。
「呼吸の魔法とか、ないのか?」
「あります。でも……」
職員は首を横に振る。
「通常の魔法では、深度200mは無理なんです」
「じゃあ、どうする」
俺は尋ねた。
職員は少し考えた後、答えた。
「唯一の方法は……」
彼女は声を潜める。
「アクアベルの『海導師ギルド』
に相談することです」
「海導師?」
俺は聞き返した。
「はい。海洋専門の魔法使い集団です」
職員は説明を続ける。
「水魔法、航海術、海洋生物学に精通していて」
「そいつらに頼めば、なんとかなるのか?」
ダリウスが聞いた。
職員は曖昧に首を傾げる。
「最近は、人手不足で……」
「人手不足?」
「ええ。レヴィアス討伐に協力できる人がいるかどうか」
職員の言葉に、また空気が重くなる。
その時、カウンターの横から声がした。
「あんたら、本気でレヴィアスに挑むのか?」
振り返ると、中年の男が立っていた。
日焼けした肌。
船乗りの服装。
地元の冒険者だろう。
「ああ」
俺は答えた。
男は苦笑した。
「やめとけ。死ぬぞ」
「どういうことだ?」
「あの海域に近づいた船は、全部沈んでる」
男は腕を組んだ。
「嵐が常に発生してるんだ」
「常に?」
「ああ。しかも、ただの嵐じゃない」
男は目を細めた。
「水中に、巨大な影が見えるんだ」
「影?」
「レヴィアスの本体さ」
男の声が低くなる。
「全長50mはある。いや、もっとかもしれない」
ミラが俺の服を掴んだ。
その手が震えている。
「だが、行くしかない」
俺は言った。
男は俺を見た。
しばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「……そうか」
彼は小さく笑う。
「なら、一つ教えてやる」
「何だ?」
「アクアベルには、伝説の水魔法使いがいたらしい」
男の声に、少し希望が混じった。
「伝説?」
「ああ。『流水の連鎖術』
を使えたとか」
「流水の連鎖術……」
俺は繰り返した。
初めて聞く名前だった。
「でも、今はもう引退したって話だ」
男は肩をすくめる。
「まあ、会えるかどうかは運次第だな」
「そうか。ありがとう」
俺は礼を言った。
男は手を振って、カウンターから離れていった。
俺は職員に向き直る。
「アクアベルまで、どのくらいかかる?」
「船で半日ほどです」
「分かった」
俺は頷いた。
ダリウスとミラを見る。
「行くぞ」
ダリウスは拳を握った。
「おう」
ミラは不安そうだったが、頷く。
「……うん」
俺たちはギルドを後にした。
港へ向かう。
船の手配が必要だった。
歩きながら、俺は考える。
海導師ギルド。
伝説の水魔法使い。
流水の連鎖術。
全てが未知だ。
でも、クリスが信じてくれた。
俺のデバフの力を。
今度は、俺がそれに応えなければならない。
ポケットのブローチを握る。
冷たい金属の感触。
でも、どこか温かい気がした。
「アクセル」
ダリウスが声をかけた。
「大丈夫か?」
「ああ」
俺は答えた。
「考え事してただけだ」
「そっか」
ダリウスは前を向く。
「俺たちなら、なんとかなるさ」
彼の声に、いつもの明るさが戻っていた。
ミラも歩調を合わせる。
「アクセルくん」
「ん?」
「私……頑張るから」
彼女は俺を見上げた。
その瞳に、決意が宿っている。
「ああ。一緒に頑張ろう」
俺は微笑んだ。
ミラも小さく笑う。
港が見えてきた。
午後の日差しが、海面を照らしている。
波の音が近づいてくる。
漁師たちの声。
カモメの鳴き声。
港町特有の活気。
船着き場に着く。
何隻もの船が係留されていた。
「船を探さないとな」
ダリウスが言う。
「ああ」
俺たちは船着き場を歩き始めた。
アクアベルへ。
東の海洋都市へ。
そこで、新しい仲間を見つける。
海導師を。
伝説の水魔法使いを。
そして、レヴィアスに挑む。
俺の新しい冒険が、今始まろうとしていた。
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