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第45話 【初の水中訓練】
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「今日から水中訓練です!」
セレナが両手を広げる。
朝の海は穏やかだった。
アクアベル沖の訓練海域。
小型船が波に揺れる。
塩の匂いが鼻をついた。
「まずは深度10mから慣れましょう」
セレナは首飾りを四つ取り出した。
青い結晶が光を反射する。
「水中呼吸の首飾りです」
俺は首飾りを受け取る。
冷たい金属の感触。
腕輪も装着した。
抗水圧の腕輪。
これで深海にも耐えられる。
「じゃあ、飛び込みましょう!」
セレナが先に海へ跳ぶ。
水しぶきが上がった。
「行くぞ」
ダリウスが続く。
ミラも小さく息を吸って飛び込んだ。
俺も海に身を投じる。
冷たい水が体を包む。
視界が青一色になった。
太陽光が水面から揺れて降り注ぐ。
光の帯が幾重にも重なっていた。
耳に圧力を感じる。
音が遠くなる。
自分の呼吸音だけが響いた。
首飾りが機能している。
息ができる。
でも、体が重い。
セレナが手招きする。
彼女は水中で自然に動いていた。
まるで魚のように。
俺は腕を動かした。
水が押し返してくる。
陸とは違う抵抗。
動作のすべてが遅れてついてくる。
魚の群れが横を通り過ぎた。
銀色の帯となって流れていく。
ダリウスが剣を振ろうとしていた。
水の中で動きが鈍い。
彼の顔が歪む。
水面に浮上する。
俺たちも後に続いた。
「くそっ!」
ダリウスが叫ぶ。
「動きづれぇ!剣が重すぎる!」
「水の抵抗ですね」
セレナが笑う。
「力任せは逆効果なんです」
「じゃあどうすりゃいいんだ」
「流れに乗る感じ、かな?」
セレナは手を波のように動かした。
「水を切るんじゃなくて、押す」
ダリウスは眉をひそめる。
「押す?」
「試してみてください」
ミラが口を開く。
「あの、火魔法は?」
「水中では火魔法は使えません」
セレナは首を横に振った。
「水が炎を消しちゃうから」
「じゃあ私、役に立てないかも」
ミラの声が小さくなる。
「大丈夫ですよ」
セレナが微笑んだ。
「水魔法と氷魔法が最適なんです」
「私、水魔法は」
「試してみましょう!できますよ、きっと」
再び海に潜る。
青い世界が広がった。
ダリウスが剣を構える。
今度は動きが違う。
水を押すように、ゆっくりと。
剣が滑らかに動いた。
彼の表情が変わる。
ミラは両手を前に出す。
魔力を集中させていた。
小さな炎が生まれる。
しかしすぐに消えた。
彼女の肩が落ちる。
俺はデバフを試してみることにした。
近くの海藻に向けて。
手を伸ばし、集中する。
【弱体化】発動。
魔力が水の中を走った。
海藻がしおれる。
効いた。
水中でもデバフは有効だ。
セレナが泳いで近づいてくる。
目を丸くしていた。
親指を立てている。
水面に戻る。
「すごいです!」
セレナが声を弾ませる。
「デバフ、水中でも使えたんですね!」
「ああ。効果も変わらない」
「それって戦闘で使えるってことか?」
ダリウスが興味深そうに聞く。
「おそらく」
俺は手を見つめた。
デバフは水中でも有効。
むしろ、水が何かを媒介しているような。
「ミラさんは?」
セレナが尋ねる。
「火が、消えちゃって」
ミラは視線を落とす。
「じゃあ水魔法、試してみましょう」
「でも、私」
「大丈夫。水中なら水魔法が一番相性いいんです」
セレナの声は優しかった。
「信じてみて?」
三度、海に潜る。
ミラが魔力を集中させる。
今度は火ではなく、水。
彼女の手のひらに光が生まれた。
青白い輝き。
水の球体が形成される。
それは周囲の水と調和していた。
ミラの目が見開かれる。
水球が大きくなっていく。
彼女が驚いた表情で俺を見た。
水面に浮上する。
「できた!」
ミラが叫ぶ。
「水魔法、できました!」
「すごいじゃん!」
セレナが拍手する。
「私は三日かかったのに!」
「本当に、できたんですね」
ミラは自分の手を見つめていた。
その瞳に光が宿る。
「よかったな、ミラ」
ダリウスが笑う。
「これで全員、水中でも戦える」
訓練は続いた。
深度を少しずつ上げていく。
15m、20m、25m。
耳の圧力が強くなる。
呼吸を整える回数が増えた。
ダリウスの剣技が洗練されていく。
水の抵抗を利用した動き。
ミラの水魔法も安定してきた。
俺はデバフの範囲を試す。
複数の海藻に同時に効果を及ぼせた。
セレナは常に先導していた。
彼女の泳ぎは本当に美しい。
水と一体化しているようだ。
時折、イルカが近づいてくる。
セレナが何か話しかけていた。
イルカが頷くように見える。
海洋生物と会話できる。
彼女の言葉は本当だったのだ。
一時間後。
船に戻る。
全員が息を切らしていた。
ダリウスは仰向けに倒れる。
「疲れた」
彼の声が掠れる。
「水中って体力使うな」
ミラは静かに目を閉じていた。
呼吸を整えている。
マナ消費も早い。
俺も腕が重かった。
水を吸った綿のような重さ。
セレナだけは涼しい顔だ。
「初めてにしては上出来です!」
彼女は水筒を配る。
「明日はもっと深いところに行きましょう」
「もっと深く?」
ミラが不安そうに聞く。
「はい。深度50mを目指します」
セレナは頷いた。
「そこまで行けば、実戦でも大丈夫です」
「そういえば」
俺は気になっていたことを聞いた。
「水中では魔法が流れる、と?」
「あ、そうそう!」
セレナが手を叩く。
「説明忘れてました」
彼女は水面を指差す。
「水中では、魔法が普通と違うんです」
「違う?」
「流れるんですよ」
セレナは手を波のように動かした。
「一つの魔法が、水流に乗って広がる」
「つまり?」
ダリウスが身を起こす。
「向きが大事ってこと」
セレナは笑う。
「水の流れを読まないと、魔法が変な方向に行っちゃう」
俺は考え込む。
魔法が流れる。
それは利点にも、欠点にもなる。
「実際の海は訓練場と違います」
セレナの表情が少し曇った。
「流れが強いから、気をつけてくださいね」
空が夕焼け色に染まり始める。
船はゆっくりと港へ向かった。
波の音が心地よい。
俺はポケットのブローチに触れる。
クリスは今頃、何をしているだろうか。
王都は遠い。
でも、俺たちは進んでいる。
新しい仲間と、新しい力と。
「明日も頑張りましょうね」
セレナの声が聞こえた。
俺は頷く。
水中での戦いは、まだ始まったばかりだ。
深海には、まだ見ぬ試練が待っている。
でも、今日の訓練で掴んだもの。
それは確かな一歩だった。
セレナが両手を広げる。
朝の海は穏やかだった。
アクアベル沖の訓練海域。
小型船が波に揺れる。
塩の匂いが鼻をついた。
「まずは深度10mから慣れましょう」
セレナは首飾りを四つ取り出した。
青い結晶が光を反射する。
「水中呼吸の首飾りです」
俺は首飾りを受け取る。
冷たい金属の感触。
腕輪も装着した。
抗水圧の腕輪。
これで深海にも耐えられる。
「じゃあ、飛び込みましょう!」
セレナが先に海へ跳ぶ。
水しぶきが上がった。
「行くぞ」
ダリウスが続く。
ミラも小さく息を吸って飛び込んだ。
俺も海に身を投じる。
冷たい水が体を包む。
視界が青一色になった。
太陽光が水面から揺れて降り注ぐ。
光の帯が幾重にも重なっていた。
耳に圧力を感じる。
音が遠くなる。
自分の呼吸音だけが響いた。
首飾りが機能している。
息ができる。
でも、体が重い。
セレナが手招きする。
彼女は水中で自然に動いていた。
まるで魚のように。
俺は腕を動かした。
水が押し返してくる。
陸とは違う抵抗。
動作のすべてが遅れてついてくる。
魚の群れが横を通り過ぎた。
銀色の帯となって流れていく。
ダリウスが剣を振ろうとしていた。
水の中で動きが鈍い。
彼の顔が歪む。
水面に浮上する。
俺たちも後に続いた。
「くそっ!」
ダリウスが叫ぶ。
「動きづれぇ!剣が重すぎる!」
「水の抵抗ですね」
セレナが笑う。
「力任せは逆効果なんです」
「じゃあどうすりゃいいんだ」
「流れに乗る感じ、かな?」
セレナは手を波のように動かした。
「水を切るんじゃなくて、押す」
ダリウスは眉をひそめる。
「押す?」
「試してみてください」
ミラが口を開く。
「あの、火魔法は?」
「水中では火魔法は使えません」
セレナは首を横に振った。
「水が炎を消しちゃうから」
「じゃあ私、役に立てないかも」
ミラの声が小さくなる。
「大丈夫ですよ」
セレナが微笑んだ。
「水魔法と氷魔法が最適なんです」
「私、水魔法は」
「試してみましょう!できますよ、きっと」
再び海に潜る。
青い世界が広がった。
ダリウスが剣を構える。
今度は動きが違う。
水を押すように、ゆっくりと。
剣が滑らかに動いた。
彼の表情が変わる。
ミラは両手を前に出す。
魔力を集中させていた。
小さな炎が生まれる。
しかしすぐに消えた。
彼女の肩が落ちる。
俺はデバフを試してみることにした。
近くの海藻に向けて。
手を伸ばし、集中する。
【弱体化】発動。
魔力が水の中を走った。
海藻がしおれる。
効いた。
水中でもデバフは有効だ。
セレナが泳いで近づいてくる。
目を丸くしていた。
親指を立てている。
水面に戻る。
「すごいです!」
セレナが声を弾ませる。
「デバフ、水中でも使えたんですね!」
「ああ。効果も変わらない」
「それって戦闘で使えるってことか?」
ダリウスが興味深そうに聞く。
「おそらく」
俺は手を見つめた。
デバフは水中でも有効。
むしろ、水が何かを媒介しているような。
「ミラさんは?」
セレナが尋ねる。
「火が、消えちゃって」
ミラは視線を落とす。
「じゃあ水魔法、試してみましょう」
「でも、私」
「大丈夫。水中なら水魔法が一番相性いいんです」
セレナの声は優しかった。
「信じてみて?」
三度、海に潜る。
ミラが魔力を集中させる。
今度は火ではなく、水。
彼女の手のひらに光が生まれた。
青白い輝き。
水の球体が形成される。
それは周囲の水と調和していた。
ミラの目が見開かれる。
水球が大きくなっていく。
彼女が驚いた表情で俺を見た。
水面に浮上する。
「できた!」
ミラが叫ぶ。
「水魔法、できました!」
「すごいじゃん!」
セレナが拍手する。
「私は三日かかったのに!」
「本当に、できたんですね」
ミラは自分の手を見つめていた。
その瞳に光が宿る。
「よかったな、ミラ」
ダリウスが笑う。
「これで全員、水中でも戦える」
訓練は続いた。
深度を少しずつ上げていく。
15m、20m、25m。
耳の圧力が強くなる。
呼吸を整える回数が増えた。
ダリウスの剣技が洗練されていく。
水の抵抗を利用した動き。
ミラの水魔法も安定してきた。
俺はデバフの範囲を試す。
複数の海藻に同時に効果を及ぼせた。
セレナは常に先導していた。
彼女の泳ぎは本当に美しい。
水と一体化しているようだ。
時折、イルカが近づいてくる。
セレナが何か話しかけていた。
イルカが頷くように見える。
海洋生物と会話できる。
彼女の言葉は本当だったのだ。
一時間後。
船に戻る。
全員が息を切らしていた。
ダリウスは仰向けに倒れる。
「疲れた」
彼の声が掠れる。
「水中って体力使うな」
ミラは静かに目を閉じていた。
呼吸を整えている。
マナ消費も早い。
俺も腕が重かった。
水を吸った綿のような重さ。
セレナだけは涼しい顔だ。
「初めてにしては上出来です!」
彼女は水筒を配る。
「明日はもっと深いところに行きましょう」
「もっと深く?」
ミラが不安そうに聞く。
「はい。深度50mを目指します」
セレナは頷いた。
「そこまで行けば、実戦でも大丈夫です」
「そういえば」
俺は気になっていたことを聞いた。
「水中では魔法が流れる、と?」
「あ、そうそう!」
セレナが手を叩く。
「説明忘れてました」
彼女は水面を指差す。
「水中では、魔法が普通と違うんです」
「違う?」
「流れるんですよ」
セレナは手を波のように動かした。
「一つの魔法が、水流に乗って広がる」
「つまり?」
ダリウスが身を起こす。
「向きが大事ってこと」
セレナは笑う。
「水の流れを読まないと、魔法が変な方向に行っちゃう」
俺は考え込む。
魔法が流れる。
それは利点にも、欠点にもなる。
「実際の海は訓練場と違います」
セレナの表情が少し曇った。
「流れが強いから、気をつけてくださいね」
空が夕焼け色に染まり始める。
船はゆっくりと港へ向かった。
波の音が心地よい。
俺はポケットのブローチに触れる。
クリスは今頃、何をしているだろうか。
王都は遠い。
でも、俺たちは進んでいる。
新しい仲間と、新しい力と。
「明日も頑張りましょうね」
セレナの声が聞こえた。
俺は頷く。
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