追放されたデバフ使いが実は対ボス最終兵器でした〜「雑魚にすら効かない」という理由で捨てられたけど、竜も魔王も無力化できます〜

チャビューヘ

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第47話 【海洋モンスター初戦】

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 船が傾いた。

 海面から巨大な影が近づいている。

 五体だ。

 * * *

 第30日目の午後。

 俺、アクセルは船首に立っていた。

 曇り空。

 波がやや高い。

 アクアベル沖30キロ。

 訓練海域を越えた実戦海域だ。

「アクセルさん」

 セレナが舵を取りながら声をかけてきた。

「そろそろ、来ますよ」

「何が?」

「シャークマンタです」

 エイとサメの特徴を持つ海洋モンスター。

 全長5メートル。

 群れで行動する。

「……何体くらい?」

 ミラが杖を握った。

 指先が少し震えている。

「五体、かな」

 セレナの目が海面を追う。

「あくまで予測ですけど」

 ダリウスが船尾で腕を組んでいる。

「五体か。まあ、なんとかなる」

「……本当に?」

「なるって言ってんだろ」

 水面が揺れた。

 波のパターンが変わる。

 船が小さく跳ねる。

「来た」

 セレナが船を止めた。

 エンジン音が消える。

 波の音だけが響く。

 ザバァッ!

 右舷から飛び出した。

 平たい体。

 鋭い牙。

 黒い目が船を見つめている。

「うわ……でかい」

 ミラの声が裏返る。

 次々と姿を現す。

 一体、二体、三体、四体、五体。

 完全に囲まれた。

「ちょっと、これ」

 セレナの声が低くなった。

「思ったより近い」

「逃げるか?」

 ダリウスが訊く。

「……無理です。もう囲まれてるし」

 五体が一斉に距離を詰める。

 水飛沫が上がる。

 船が大きく揺れた。

「アクセルさん!」

 セレナが振り返った。

「お願い、します!」

 わかった。

 俺は手を前に突き出す。

 五体全てを視界に入れる。

「【範囲弱体化】!」

 魔法陣が展開した。

 青白い光が五体を包む。

 シャークマンタの動きが鈍る。

 明らかに速度が落ちた。

「……え」

 セレナが目を見開く。

「これ、すごくないですか」

「防御力も落ちてるはずだ」

「マジか」

 ダリウスが剣を抜いた。

「じゃあ、今のうちに」

 セレナが両手を掲げる。

「【アクアランス】!」

 水の槍が海面から立ち上がった。

 一本、二本、三本。

 鋭い穂先がシャークマンタを貫く。

 ギャアアアッ!

 悲鳴が響いた。

 一体が沈む。

 海が赤く染まる。

「よし」

 ダリウスが剣を投げた。

 回転しながら飛ぶ刃。

 二体目の胴体に突き刺さる。

 残り三体。

「もう一発」

 セレナが再び手を掲げた。

「【アクアランス】!」

 水の槍が連射される。

 一体が身を捩って避けた。

 だが、もう一体に命中。

 残り二体。

 船が大きく揺れる。

「下!」

 ミラが叫んだ。

 ドンッ!

 船底に何かがぶつかった。

 二体が下を潜り抜けている。

「くそ」

 ダリウスが舌打ちした。

「上下から挟まれる」

 セレナが慌てて海面を見た。

「これ、マズいです」

「……何が」

「船底に、穴を開けられる」

 水面下の影が動く。

 船を下から狙っている。

「任せろ」

 俺は海面に手をかざした。

「【範囲弱体化】!」

 光が海中に広がる。

 水を透過して、二体を包んだ。

 動きが止まる。

 水中で足掻くような動作。

 泥の中を泳いでいるような鈍さだ。

「今です」

 セレナが海に飛び込んだ。

「セレナ!?」

 だが、彼女は水中で自在に動いた。

 両手から青い光が放たれる。

「【アクアブレード】!」

 水の刃が二体を切り裂いた。

 赤い血が広がる。

 セレナが浮上する。

「残り、二体」

 ザバァッ!

 最後の二体が飛びかかってきた。

 船に向かって突進する。

「させるか」

 ダリウスが剣を構えた。

 ミラが詠唱を始める。

「【火炎弾】!」

 炎の玉が海面に着弾。

 水蒸気が爆発した。

 一体が怯む。

 ダリウスが跳躍。

 空中で剣を振り下ろす。

「喰らえ」

 刃が深々と食い込んだ。

 シャークマンタが沈む。

 残り一体。

 最後の一体が方向を変えた。

 逃げようとしている。

「逃がさない」

 セレナが追いかける。

「【アクアランス】!」

 水の槍が背中を貫通した。

 最後の悲鳴。

 そして、静寂。

 波の音だけが響く。

「……終わった?」

 ミラの声が震えている。

 セレナが船に戻ってきた。

 ずぶ濡れ。

 だが、笑顔。

「やりました、ね」

「……ああ」

 ダリウスが肩を叩いてきた。

「アクセルのデバフ、マジですげえ」

「速度も防御力も、一気に」

 セレナが興奮気味に言う。

「あれがあれば、海洋モンスターとも十分、戦える」

 ミラが海面を見下ろした。

「素材……回収しないと」

「そうですね」

 セレナが魔法を使う。

「【アクアリフト】」

 海中から五体の死骸が浮上した。

 シャークマンタの皮、牙、ヒレ。

 全部、売れる素材。

「これ、けっこうな額に」

 セレナが目を輝かせる。

「シャークマンタの皮は丈夫で」

「鎧の素材になるのか?」

「はい。牙も短剣の材料に」

 俺たちは協力して素材を回収した。

 船の上に並べる。

 けっこうな量だ。

「……今日は大漁だな」

 ダリウスが満足そうに頷く。

 セレナが舵を取った。

「アクアベルに、戻りましょう」

 船が港に向かって動き出す。

 波が穏やかに揺れる。

 さっきの激戦が嘘みたいだ。

 ミラが隣に来た。

「アクセルさん」

「ん?」

「……すごかったです」

 彼女の頬が少し赤い。

「デバフ、あんなに効くなんて」

「ああ。海でも有効だった」

 俺は海を見つめる。

 デバフは水中の敵にも届く。

 範囲攻撃なら、複数の敵も問題ない。

 これなら、レヴィアスとも戦える。

 その時だった。

 セレナが急に船を止めた。

「……どうした?」

「ちょっと、待ってください」

 彼女の顔が青ざめている。

「これ……おかしい」

「何が?」

 ダリウスが船尾に来た。

 セレナが海面を指差す。

「潮の流れが、変わりました」

「……それって」

「普通じゃないです。こんな急激な変化」

 海面が波立ち始めた。

 さっきまでの穏やかさが嘘のように。

「まさか」

 セレナの声が震える。

「レヴィアスが……動いた?」

 波が高くなる。

 風が強くなる。

 空が暗くなった。

 遠くで、巨大な水柱が上がった。

「……嘘だろ」

 ダリウスが呟く。

 俺たちは、その光景を見つめていた。

 封印が、弱まっている。

 レヴィアスが、目覚めつつある。

 時間が、残されていない。
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