国民が熱狂する英雄譚は、全て虚構。最高視聴率番組の裏側でゴブリンADが王国の闇を記録し始めた。王国広報局番組『ブレイブ・ハート』ON AIR

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テイク12「海賊放送、開始」後編

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【トビーの制作日誌】
王暦1547年・夏の月・25日・夜

海賊放送は成功した。
3分15秒。
俺たちの真実が、王国中に流れた。

反応は分からない。
信じてもらえたのか、それとも「捏造だ」と切り捨てられたのか。

でも、一つだけ確かなことがある。

俺たちは、声を上げた。
黙って見ていた俺が、カメラを武器にして戦った。

ザックと二人で調整した魔導通信機材。
レオの予想外のアドリブ。
マリアの冷静な証言。
ノアとカイルの勇気ある告白。

全部が噛み合った。

干し芋を齧る。
塩気は……適正だ。

今日は、よく眠れそうだ。

-----

【映像ログ:ON AIR(王国放送・緊急ニュース・翌日)】

ナレーション:
「昨日の建国記念式典中に発生した、不正な放送について、王国広報局が声明を発表しました」

(王国広報局の代表が映る)

代表:
「昨日流れた映像は、完全なる捏造です」

代表:
「魔王軍が、高度な幻術魔法を使って作成した偽造映像であることが、王宮魔術師団の分析により判明しました」

代表:
「国民の皆様には、この悪質なプロパガンダに惑わされないよう、お願い申し上げます」

ナレーション:
「また、エリクシール社のカルロス氏もコメントを発表しています」

(カルロスの映像)

カルロス:
「非常に残念です。あの映像は完全な捏造であり、私はそのような発言を一切しておりません」

カルロス:
「勇者レオと聖女マリアは、完全に魔王軍に洗脳されています。一刻も早い救出が必要です」

ナレーション:
「王国は、逃亡中の勇者一行の捜索を強化するとのことです」

-----

【映像ログ:未公開(魔王軍基地・会議室・翌朝)】

(会議室。全員が王国放送を見ている)

レオ:
「……捏造だって」

マリア:
「予想通りだ」

トビー:
「ザックの言った通りです。全員を味方につけるのは無理だった」

レオ:
「でも……」

ザック:
「待て」

(ザックが魔導石板を見せる)

ザック:
「反応が来てる」

トビー:
「反応?」

ザック:
「昨日流した連絡先に、メッセージが届いてる」

(全員がザックの周りに集まる)

ザック:
「一つ目。『信じます。私も辺境の村出身です。子供の頃、検査を受けたことがあります』」

ノア:
「……」

ザック:
「二つ目。『エリクシール社の元社員です。内部情報を持っています。連絡を取りたい』」

マリア:
「内部情報……」

ザック:
「三つ目。『私は医師です。被験者の治療記録を見たことがあります。協力します』」

レオ:
「……信じてくれてる人が、いるんだ」

ザック:
「ああ。少数だが、確実にいる」

トビー:
「……」

(トビーが少し微笑む)

トビー:
「種は、蒔かれました」

ザック:
「ああ。あとは、芽が出るのを待つだけだ」

-----

【個別インタビュー】
勇者レオ/告白部屋(会議室の隅)

(少し疲れた顔で)

レオ:
「捏造だって言われるのは、予想してた」

トビー(画面外):
「そうですか」

レオ:
「でもさ、信じてくれる人がいるって分かって……ちょっと、安心した」

トビー:
「……」

レオ:
「俺たちのやったこと、無駄じゃなかったんだな」

トビー:
「無駄じゃありません」

レオ:
「……」

レオ:
「なあ、トビー」

トビー:
「はい」

レオ:
「俺、あのアドリブ……本当は計算じゃなかった」

トビー:
「知ってます」

レオ:
「……だよな」

トビー:
「でも、良かったです」

レオ:
「……そうか」

トビー:
「レオさんの本心が、視聴者に伝わったと思います」

レオ:
「本心か……」

トビー:
「『仲間を守る勇者だ』って」

レオ:
「……」

(レオが少し照れくさそうに)

レオ:
「まあ、事実だからな」

トビー:
「はい」

レオ:
「俺の顔と同じくらい、仲間も大事だ」

トビー:
「……それ、褒めてるんですか」

レオ:
「当たり前だろ。俺の顔と同等って、最高の褒め言葉じゃん」

トビー:
「……そういう解釈ですか」

レオ:
「他にどんな解釈があんだよ」

トビー:
「……ノーコメントで」

-----

【映像ログ:未公開(魔王軍基地・通信室・午後)】

(通信室。ザックとトビーが機材を整理している)

ザック:
「なあ、トビー」

トビー:
「何だ」

ザック:
「お前、これからどうする」

トビー:
「……」

ザック:
「王国には戻れない。魔王軍にずっといるのか?」

トビー:
「……分からない」

ザック:
「……」

トビー:
「でも、一つだけ決めてることがある」

ザック:
「何だ」

トビー:
「記録を続ける」

ザック:
「……」

トビー:
「俺はADだ。カメラを回して、真実を記録する。それが俺の仕事だ」

ザック:
「……」

トビー:
「エリクシール社を倒すまで。被験者たちが自由になるまで。俺は記録を続ける」

ザック:
「……」

(ザックが笑う)

ザック:
「お前、かっこいいこと言うじゃん」

トビー:
「ゴブリンですので」

ザック:
「だから意味分かんねえって」

トビー:
「……」

ザック:
「でも、いいな。俺も同じだ」

トビー:
「……」

ザック:
「ゴブリンADコンビ、続けるか」

トビー:
「……ああ」

(二人が拳を合わせる)

-----

【トビーの制作日誌】
王暦1547年・夏の月・26日

海賊放送から2日。
状況を整理する。

成果:
・真実の放送に成功(3分15秒)
・一部の国民から支持を獲得
・内部情報提供者が現れ始めている

課題:
・王国は「捏造」と主張
・エリクシール社は反撃の準備を進めているはず
・俺たちは依然として指名手配中

次のステップ:
・連絡してきた情報提供者との接触
・さらなる証拠の収集
・第二波の放送計画

干し芋を齧る。
塩気は適正。

俺たちは、まだ戦いの途中だ。
でも、確実に前に進んでいる。

-----

【映像ログ:未公開(魔王軍基地・屋上・夕暮れ)】

(魔王軍基地・屋上。レオとマリアが並んで座っている)

レオ:
「……なあ、マリア」

マリア:
「何だ」

レオ:
「これからどうなると思う?」

マリア:
「知るか」

レオ:
「知らねえのかよ」

マリア:
「未来予知の能力はねえ」

レオ:
「……」

マリア:
「でも、一つだけ分かる」

レオ:
「何だ」

マリア:
「俺たちは、もう後戻りできねえ」

レオ:
「……ああ」

マリア:
「だから、前に進むしかない」

レオ:
「……」

マリア:
「お前は、どうしたい」

レオ:
「俺?」

マリア:
「ああ」

レオ:
「……」

(レオが夕日を見ながら)

レオ:
「仲間を守りたい」

マリア:
「……」

レオ:
「ノアも、カイルも、トビーも、ザックも」

マリア:
「……」

レオ:
「お前も」

マリア:
「……」

(5秒の沈黙)

マリア:
「……俺は自分で守れる」

レオ:
「知ってる。でも、守りたい」

マリア:
「……」

レオ:
「ダメか?」

マリア:
「……」

(マリアが煙草に火をつける)

マリア:
「……勝手にしろ」

レオ:
「いいのか?」

マリア:
「別に、守られるとは言ってねえ」

レオ:
「え?」

マリア:
「お前が勝手に守ろうとするのを、止めねえってだけだ」

レオ:
「……それ、同じじゃね?」

マリア:
「違う」

レオ:
「どう違うんだよ」

マリア:
「……知るか」

-----

【個別インタビュー】
聖女マリア/告白部屋(屋上の隅)

(夕日を背に、煙草をふかしながら)

マリア:
「……あいつ、変わったな」

トビー(画面外):
「レオさんですか」

マリア:
「ああ」

トビー:
「どう変わりましたか」

マリア:
「前は、顔のことしか考えてなかった」

トビー:
「今は」

マリア:
「……まだ顔のこと考えてるけど。少しは、他のことも考えるようになった」

トビー:
「仲間のことを」

マリア:
「……ああ」

トビー:
「……」

マリア:
「悪くねえ変化だ」

トビー:
「……」

マリア:
「……オフレコな」

トビー:
「録画してますけど」

マリア:
「消せ」

トビー:
「後で考えます」

マリア:
「考えるな。今消せ」

トビー:
「……レオさんと同じこと言ってますね」

マリア:
「……うるせえ」

-----

【トビーの制作日誌】
王暦1547年・夏の月・26日・夜

今日の記録を終える。

海賊放送は成功した。
一部の国民から支持を得た。
情報提供者も現れ始めている。

だが、戦いはまだ始まったばかりだ。

エリクシール社は必ず反撃してくる。
王国は俺たちを追い続ける。

でも、俺たちには仲間がいる。

レオ。マリア。ノア。カイル。ザック。
そして、真実を信じてくれる人たち。

俺は記録を続ける。
カメラを武器にして、真実を世界に伝え続ける。

これが、俺の戦い方だ。

干し芋を齧る。
塩気は適正。

明日も、頑張ろう。

-----

【次回予告】

ナレーション:
「海賊放送の成功に沸く一行。だが、敵の反撃は予想を超えていた」

カルロス(予告映像):
「映像は幻術魔法による捏造です。証拠をお見せしましょう」

ナレーション:
「そして現れる、衝撃の存在」

新勇者(予告映像):
「はじめまして。僕が新しい勇者です」

レオ:
「……え? なんで俺と同じ顔してんの?」

ナレーション:
「次回『作られた英雄たち(テイク125)』」

トビー(日誌):
「レオのオリジナル……なのか? それとも、量産型なのか。いずれにせよ、嫌な予感がする」
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