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3章 顕現編
第20話「お前はどうする?」
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───────────────────
DJケンタ_B級:氷室要がソウのダンジョンにいるってことは、派遣元は特殊対応部だろ。管轄は探索者協会統括局長の鷲尾源一郎
草:鷲尾って誰
深層好き_A:知らないのか。黒潮事件の英雄だぞ
†漆黒の剣†:黒潮事件って15年前のやつ?
DJケンタ_B級:東京湾岸「深海回廊」のダンジョンコアが暴走。死者247名、負傷者1400名以上。戦後最悪のダンジョン災害
しろくま_22:鷲尾さんはその時何をしたの
DJケンタ_B級:避難誘導。暴走の最中に民間人を何百人も逃がした。「探索者たちの盾」って呼ばれてる
深層好き_A:奥さんと息子さんはその事件で亡くなってる
推しが重い:つらい
草:で、その人がノアの調査を命じたってこと?
†漆黒の剣†:コアの暴走で家族を失った人間が、コアの顕現体を審査してるわけだ
しろくま_22:ソウ、黒潮事件のこと知ってるのかな
───────────────────
想は配信画面のコメント欄を見ていた。黒潮事件。初めて聞く単語だ。鷲尾源一郎の名前は氷室から聞いていたが、どんな人物なのかは知らなかった。
想が7歳のときに起きた事件だった。テレビで見た記憶があるような、ないような。子供にはダンジョンの事故より目の前の母親の体調の方が大事だった。
「ソウです。正直に言うと、黒潮事件のこと全然知らなかった。ごめん、ちょっと調べるから待ってくれ」
コメント欄が微妙な空気になった。「え、知らないの」「まあ22歳だしな」「ゆとり」「ゆとりじゃねえ世代だ」。想はスマホで検索しようとした。
ダンジョンの入口に、黒い車が止まった。
後部座席のドアが開いた。灰色のスーツ。白髪交じりの頭髪。穏やかな目元。テレビや新聞で何度も見た顔ではないはずなのに、見た瞬間に「偉い人だ」とわかる空気をまとっている。
梶原が横に立っていた。鷲尾を案内してきたのだ。
「柊さん。探索者協会統括局長の鷲尾源一郎さんです」
「はじめまして、柊くん。報告は聞いているよ。大変だったね」
鷲尾が手を差し出した。想は一瞬迷って、握った。手のひらが乾いていて、握力は弱かった。50代の男にしては線が細い。
「鷲尾局長が、柊さんのダンジョンを視察したいとのことで」
梶原が補足した。想は頷いた。配信は切らなかった。氷室が5メートル先に立っている。メモ帳は閉じたまま、鷲尾を見ている。
鷲尾がダンジョンの入口を見上げた。壁面の光苔がぼんやりと光っている。鷲尾の目が細くなった。穏やかな目だった。だが光苔を見る時間が、少しだけ長かった。
「綺麗なものだね」
想はダンジョンの浅層を案内した。鷲尾は終始穏やかで、想に質問をしながら歩いた。ノアの投影体がどこまで外に出られるのか。コアとの通信はどういう形で行われるのか。想は正直に答えた。氷室に嘘はつくなと言われている。鷲尾にも同じだ。
浅層の広間で、鷲尾が足を止めた。壁面に背を預けて、想に向き直った。
「柊くん。黒潮事件のこと、知らないと言っていたね」
「はい。すみません」
「謝ることじゃないよ。15年前だ。君はまだ小さかった」
鷲尾は壁面の光苔を見つめながら話し始めた。声は静かで、練習したかのように滑らかだった。
「15年前の7月14日。午後2時頃、東京湾岸の深海回廊でコアが暴走した。原因は不明。突然だった」
鷲尾の目が光苔から離れなかった。
「私はその日、研究棟で報告書を書いていた。揺れが始まったのは2時過ぎだ。最初は地震かと思った。だがすぐにダンジョンのマナ警報が鳴った」
想は黙って聞いていた。千歳は少し離れた場所にいる。氷室も同じ広間にいるが、壁際に立って動かない。
「私は現場に駆けつけた。午後2時半には湾岸エリアに着いた。モンスターが流出していた。住民が逃げ遅れていた。私は避難誘導に回った」
鷲尾の声が一段低くなった。
「妻と息子は、自宅にいた。ダンジョンの近くだった。間に合わなかった」
想は何も言えなかった。母親の病室を思い出した。守りたい人がいて、届かない距離がある。その感覚だけは、わかった。
「だからこそ、ダンジョンの安全を守りたい。コアが暴走すれば人が死ぬ。ノアに悪意がないことは、報告で聞いている。だが安全と善意は別だ」
鷲尾が微笑んだ。穏やかで、悲しみを含んだ笑顔だった。完璧な笑顔だ。
想は気づかなかった。
鷲尾は「午後2時頃にコアが暴走した」と言い、「研究棟で報告書を書いていた」と言い、「2時半には湾岸エリアに着いた」と言った。研究棟は協会本部にある。協会本部から東京湾岸まで、当時の交通状況で30分では着かない。通常なら1時間以上かかる距離だ。
30分のズレ。鷲尾が「研究棟にいた」のが事実なら、2時半に湾岸にいることは不可能だ。最初から湾岸の近くにいなければ、辻褄が合わない。
だがその矛盾に気づく人間は、この場にはいなかった。想は鷲尾の悲しみに圧倒されていた。千歳は想の横で泣きそうな顔をしていた。梶原は穏やかに頷いていた。
壁際の氷室だけが、メモ帳にペンを走らせていた。何を書いたのかは、誰にも見えなかった。
ダンジョンを出た。鷲尾が車に乗り込む前に、想に声をかけた。
「柊くん。氷室から聞いていると思うが、ノアの観察結果は公正に扱う。安心してくれ」
「ありがとうございます」
想は頭を下げた。鷲尾の車が走り去った。梶原も一礼して同乗していった。
───────────────────
草:鷲尾局長来てたのか
†漆黒の剣†:マジの大物じゃん
DJケンタ_B級:統括局長が個別ダンジョンを視察するのは異例中の異例
しろくま_22:ソウが認められてるってことだよね
深層好き_A:逆だ。それだけノアの件が重大案件ってことだ
推しが重い:鷲尾局長の話、泣いた
草:奥さんと子供亡くしてるのか
DJケンタ_B級:登録者36万突破。協会公認の配信者みたいなもんだなこれ
N_o_a:
推しが重い:ノアちゃん今日はコメントなし?
草:空コメントだ。初めてじゃないか
───────────────────
配信を終えた。夕方。氷室がダンジョンの入口で想を待っていた。
「柊。ひとつ聞く」
氷室が正面に立った。いつものメモ帳は持っていない。両手をジャケットのポケットに入れている。記録のための質問ではなく、個人としての問いだと、姿勢が語っていた。
「もしノアが暴走して人を殺したら、お前はどうする」
空気が止まった。
千歳が想の横から前に出ようとした。
「想さんを困らせないで!」
「これは柊に聞いている」
氷室の目が千歳に向いた。敵意はない。だが退く気もない。千歳は一歩踏み出したまま止まった。目が据わっている。氷室が視線を戻した。千歳を無視したのではなく、千歳の覚悟を認めた上で、それでも想に聞いている。
想は口を開いた。閉じた。もう一度開いた。
「ノアは暴走しない」
「それは答えになっていない。もし、と聞いている」
想の拳が震えた。もし。たった二文字が重い。ノアが暴走しない保証はない。前回の崩壊も、ノアの制御外だった。次にもっと大きな暴走が起きて、人が死んだら。
そのとき俺は、どうする。
「わからない」
声がかすれていた。答えではなく、降参だった。
氷室が頷いた。表情は変わらない。だが目の奥に、何かが灯った。軽蔑ではない。
「わからない、は正直な答えだ。覚えておく」
氷室は踵を返した。駐車場に向かって歩いていく。想は氷室の背中を見送った。
正直な答えだと言われた。嘘をつかなかった。だが正直であることと、正しいことは違う。わからないまま、ノアのそばにいる。それが許されるのか。答えを持たないまま誰かを守れるのか。
千歳が隣に立った。何も言わなかった。肩が想の腕に触れている。それだけだった。
想はダンジョンの中に入った。壁面に手を触れた。
「ノア」
返事がなかった。光苔が光っていない。壁面が暗い。ダンジョンの中に入ってから初めて見る、光のない壁だった。
「ノア。いるんだろ」
沈黙。5秒。10秒。
壁面から、声が落ちてきた。低い。小さい。
「想さん。あの人の話に、嘘が混じっています」
想は額に手をやった。
「お前は誰にでもそう言うだろ」
御影のときも言った。梶原のときも言った。ノアは嘘の匂いを嗅ぎ分ける。だが想は三度目の警告を、三度目と同じ返事で受け流した。
ノアは言い返さなかった。
壁の光苔が消えたままだ。ダンジョンの通路が、完全な暗闇に沈んでいる。想のARデバイスの暗視機能だけが、かろうじて足元を照らしていた。
「ノア?」
返事はなかった。光苔は戻らなかった。
想は暗いダンジョンの中に立ちつくした。ノアが黙っている。怒りではないと思った。ノアが怒るときは壁が揺れる。今は揺れていない。光を消して、声を消して、存在を薄めている。
ノアは泣けない。泣くとダンジョンが振動する。だから代わりに、光を消す。自分の存在の一部を暗くして、声を閉じて、想の手が届かない場所に引きこもる。
想は壁に手を当てたまま、動けなかった。
DJケンタ_B級:氷室要がソウのダンジョンにいるってことは、派遣元は特殊対応部だろ。管轄は探索者協会統括局長の鷲尾源一郎
草:鷲尾って誰
深層好き_A:知らないのか。黒潮事件の英雄だぞ
†漆黒の剣†:黒潮事件って15年前のやつ?
DJケンタ_B級:東京湾岸「深海回廊」のダンジョンコアが暴走。死者247名、負傷者1400名以上。戦後最悪のダンジョン災害
しろくま_22:鷲尾さんはその時何をしたの
DJケンタ_B級:避難誘導。暴走の最中に民間人を何百人も逃がした。「探索者たちの盾」って呼ばれてる
深層好き_A:奥さんと息子さんはその事件で亡くなってる
推しが重い:つらい
草:で、その人がノアの調査を命じたってこと?
†漆黒の剣†:コアの暴走で家族を失った人間が、コアの顕現体を審査してるわけだ
しろくま_22:ソウ、黒潮事件のこと知ってるのかな
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想は配信画面のコメント欄を見ていた。黒潮事件。初めて聞く単語だ。鷲尾源一郎の名前は氷室から聞いていたが、どんな人物なのかは知らなかった。
想が7歳のときに起きた事件だった。テレビで見た記憶があるような、ないような。子供にはダンジョンの事故より目の前の母親の体調の方が大事だった。
「ソウです。正直に言うと、黒潮事件のこと全然知らなかった。ごめん、ちょっと調べるから待ってくれ」
コメント欄が微妙な空気になった。「え、知らないの」「まあ22歳だしな」「ゆとり」「ゆとりじゃねえ世代だ」。想はスマホで検索しようとした。
ダンジョンの入口に、黒い車が止まった。
後部座席のドアが開いた。灰色のスーツ。白髪交じりの頭髪。穏やかな目元。テレビや新聞で何度も見た顔ではないはずなのに、見た瞬間に「偉い人だ」とわかる空気をまとっている。
梶原が横に立っていた。鷲尾を案内してきたのだ。
「柊さん。探索者協会統括局長の鷲尾源一郎さんです」
「はじめまして、柊くん。報告は聞いているよ。大変だったね」
鷲尾が手を差し出した。想は一瞬迷って、握った。手のひらが乾いていて、握力は弱かった。50代の男にしては線が細い。
「鷲尾局長が、柊さんのダンジョンを視察したいとのことで」
梶原が補足した。想は頷いた。配信は切らなかった。氷室が5メートル先に立っている。メモ帳は閉じたまま、鷲尾を見ている。
鷲尾がダンジョンの入口を見上げた。壁面の光苔がぼんやりと光っている。鷲尾の目が細くなった。穏やかな目だった。だが光苔を見る時間が、少しだけ長かった。
「綺麗なものだね」
想はダンジョンの浅層を案内した。鷲尾は終始穏やかで、想に質問をしながら歩いた。ノアの投影体がどこまで外に出られるのか。コアとの通信はどういう形で行われるのか。想は正直に答えた。氷室に嘘はつくなと言われている。鷲尾にも同じだ。
浅層の広間で、鷲尾が足を止めた。壁面に背を預けて、想に向き直った。
「柊くん。黒潮事件のこと、知らないと言っていたね」
「はい。すみません」
「謝ることじゃないよ。15年前だ。君はまだ小さかった」
鷲尾は壁面の光苔を見つめながら話し始めた。声は静かで、練習したかのように滑らかだった。
「15年前の7月14日。午後2時頃、東京湾岸の深海回廊でコアが暴走した。原因は不明。突然だった」
鷲尾の目が光苔から離れなかった。
「私はその日、研究棟で報告書を書いていた。揺れが始まったのは2時過ぎだ。最初は地震かと思った。だがすぐにダンジョンのマナ警報が鳴った」
想は黙って聞いていた。千歳は少し離れた場所にいる。氷室も同じ広間にいるが、壁際に立って動かない。
「私は現場に駆けつけた。午後2時半には湾岸エリアに着いた。モンスターが流出していた。住民が逃げ遅れていた。私は避難誘導に回った」
鷲尾の声が一段低くなった。
「妻と息子は、自宅にいた。ダンジョンの近くだった。間に合わなかった」
想は何も言えなかった。母親の病室を思い出した。守りたい人がいて、届かない距離がある。その感覚だけは、わかった。
「だからこそ、ダンジョンの安全を守りたい。コアが暴走すれば人が死ぬ。ノアに悪意がないことは、報告で聞いている。だが安全と善意は別だ」
鷲尾が微笑んだ。穏やかで、悲しみを含んだ笑顔だった。完璧な笑顔だ。
想は気づかなかった。
鷲尾は「午後2時頃にコアが暴走した」と言い、「研究棟で報告書を書いていた」と言い、「2時半には湾岸エリアに着いた」と言った。研究棟は協会本部にある。協会本部から東京湾岸まで、当時の交通状況で30分では着かない。通常なら1時間以上かかる距離だ。
30分のズレ。鷲尾が「研究棟にいた」のが事実なら、2時半に湾岸にいることは不可能だ。最初から湾岸の近くにいなければ、辻褄が合わない。
だがその矛盾に気づく人間は、この場にはいなかった。想は鷲尾の悲しみに圧倒されていた。千歳は想の横で泣きそうな顔をしていた。梶原は穏やかに頷いていた。
壁際の氷室だけが、メモ帳にペンを走らせていた。何を書いたのかは、誰にも見えなかった。
ダンジョンを出た。鷲尾が車に乗り込む前に、想に声をかけた。
「柊くん。氷室から聞いていると思うが、ノアの観察結果は公正に扱う。安心してくれ」
「ありがとうございます」
想は頭を下げた。鷲尾の車が走り去った。梶原も一礼して同乗していった。
───────────────────
草:鷲尾局長来てたのか
†漆黒の剣†:マジの大物じゃん
DJケンタ_B級:統括局長が個別ダンジョンを視察するのは異例中の異例
しろくま_22:ソウが認められてるってことだよね
深層好き_A:逆だ。それだけノアの件が重大案件ってことだ
推しが重い:鷲尾局長の話、泣いた
草:奥さんと子供亡くしてるのか
DJケンタ_B級:登録者36万突破。協会公認の配信者みたいなもんだなこれ
N_o_a:
推しが重い:ノアちゃん今日はコメントなし?
草:空コメントだ。初めてじゃないか
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配信を終えた。夕方。氷室がダンジョンの入口で想を待っていた。
「柊。ひとつ聞く」
氷室が正面に立った。いつものメモ帳は持っていない。両手をジャケットのポケットに入れている。記録のための質問ではなく、個人としての問いだと、姿勢が語っていた。
「もしノアが暴走して人を殺したら、お前はどうする」
空気が止まった。
千歳が想の横から前に出ようとした。
「想さんを困らせないで!」
「これは柊に聞いている」
氷室の目が千歳に向いた。敵意はない。だが退く気もない。千歳は一歩踏み出したまま止まった。目が据わっている。氷室が視線を戻した。千歳を無視したのではなく、千歳の覚悟を認めた上で、それでも想に聞いている。
想は口を開いた。閉じた。もう一度開いた。
「ノアは暴走しない」
「それは答えになっていない。もし、と聞いている」
想の拳が震えた。もし。たった二文字が重い。ノアが暴走しない保証はない。前回の崩壊も、ノアの制御外だった。次にもっと大きな暴走が起きて、人が死んだら。
そのとき俺は、どうする。
「わからない」
声がかすれていた。答えではなく、降参だった。
氷室が頷いた。表情は変わらない。だが目の奥に、何かが灯った。軽蔑ではない。
「わからない、は正直な答えだ。覚えておく」
氷室は踵を返した。駐車場に向かって歩いていく。想は氷室の背中を見送った。
正直な答えだと言われた。嘘をつかなかった。だが正直であることと、正しいことは違う。わからないまま、ノアのそばにいる。それが許されるのか。答えを持たないまま誰かを守れるのか。
千歳が隣に立った。何も言わなかった。肩が想の腕に触れている。それだけだった。
想はダンジョンの中に入った。壁面に手を触れた。
「ノア」
返事がなかった。光苔が光っていない。壁面が暗い。ダンジョンの中に入ってから初めて見る、光のない壁だった。
「ノア。いるんだろ」
沈黙。5秒。10秒。
壁面から、声が落ちてきた。低い。小さい。
「想さん。あの人の話に、嘘が混じっています」
想は額に手をやった。
「お前は誰にでもそう言うだろ」
御影のときも言った。梶原のときも言った。ノアは嘘の匂いを嗅ぎ分ける。だが想は三度目の警告を、三度目と同じ返事で受け流した。
ノアは言い返さなかった。
壁の光苔が消えたままだ。ダンジョンの通路が、完全な暗闇に沈んでいる。想のARデバイスの暗視機能だけが、かろうじて足元を照らしていた。
「ノア?」
返事はなかった。光苔は戻らなかった。
想は暗いダンジョンの中に立ちつくした。ノアが黙っている。怒りではないと思った。ノアが怒るときは壁が揺れる。今は揺れていない。光を消して、声を消して、存在を薄めている。
ノアは泣けない。泣くとダンジョンが振動する。だから代わりに、光を消す。自分の存在の一部を暗くして、声を閉じて、想の手が届かない場所に引きこもる。
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