25 / 32
第25章:委員会の総攻撃開始
しおりを挟む
Bランク昇格から三週間が過ぎた。
11月下旬の夕暮れ時。
秋の空が、オレンジ色に染まっている。
蓮は教室で、宿題を片付けていた。
クラスメイトたちも、残って勉強している。
平和な時間。
いつもの放課後。
だが、その平和は。
突然、終わった。
轟音。
学園全体が揺れた。
「地震?」
誰かが叫ぶ。
だが、違う。
窓の外に、黒い影が現れた。
無数の影。
空を覆うほどの数。
「あれは……」
蓮が呟く。
黒マント集団。
委員会だ。
警報が鳴り響く。
けたたましい音。
校内放送が流れる。
「全校生徒に告ぐ。委員会の襲撃だ。直ちに戦闘配置につけ。これは訓練ではない」
学園長の声。
緊迫している。
教室が、騒然とする。
「マジかよ」
「委員会が来た」
「どうする」
蓮は窓に駆け寄る。
外を見る。
学園の正門が、破壊されている。
煙が上がる。
黒マントの集団が、なだれ込んでくる。
数十人。
いや、百人以上。
その先頭に、複数の人影。
黒マントではない。
異様な雰囲気を纏っている。
幹部だ。
蓮の背筋に、冷たいものが走る。
その時、ドアが開いた。
雪菜が飛び込んでくる。
「柊君」
その顔が、緊張している。
「委員会です」
「わかってる」
蓮が答える。
明日香、美鈴、莉音も続いて入ってくる。
「蓮、大変だよ」
明日香が言う。
「数がすごい」
美鈴が震えている。
「未来で見た通りです」
「でも、実際に見ると……」
莉音が拳を握る。
「怖いけど、やるしかない」
蓮は頷く。
颯も、教室に入ってきた。
「柊」
颯が言う。
「行くぞ」
六人が揃った。
クラスメイトたちも、立ち上がる。
「俺たちも戦う」
一人が言う。
「そうだ、学園を守る」
別の生徒が続ける。
蓮は、クラスメイトたちを見た。
全員の目が、決意に満ちている。
「ありがとう」
蓮が言う。
「みんなで、守ろう」
教室を出る。
廊下は混乱していた。
生徒たちが走り回っている。
教師たちが、指示を出している。
「A組は正門防衛」
「B組は東門」
「C組は裏門」
蓮たちのクラスは、正門に配置された。
最も激戦になる場所。
六人とクラス全員が、正門に向かう。
外に出ると、既に戦闘が始まっていた。
上級生たちが、黒マント集団と戦っている。
炎が飛び交う。
雷が落ちる。
風が吹き荒れる。
能力者たちの戦い。
蓮は、正門の前に立った。
黒マント集団が押し寄せてくる。
「来るぞ」
颯が言う。
六人が構える。
雪菜が前に出る。
「氷結女王」
手を伸ばす。
地面が凍る。
広範囲に。
黒マントたちが、足を滑らせる。
明日香が炎を放つ。
「紅蓮覇王」
巨大な火球。
黒マントの一団を飲み込む。
美鈴が目を閉じる。
「時視眼」
数秒先を見る。
「右から来ます」
その言葉通り、右から敵が飛び出してくる。
莉音が重力を操作する。
「重力覇者」
敵が空中に浮く。
身動きできない。
蓮が走る。
恥メーターはまだ30。
だが、基礎体力は上がっている。
颯の特訓の成果。
敵に拳を叩き込む。
一撃で倒す。
颯が虚無領域を展開する。
周囲の敵が、力を失う。
能力が消される。
そこをクラスメイトたちが攻撃する。
連携が取れている。
最初の波を、防いだ。
だが、すぐに第二波が来る。
さらに多い数。
「まだ来る」
明日香が叫ぶ。
「キリがない」
莉音が続ける。
蓮は周囲を見渡した。
正門だけではない。
東門も、裏門も、同時に攻撃されている。
学園全体が、戦場になっている。
その時、轟音が響いた。
正門の上空に、人影が現れる。
三人。
黒マントではない。
幹部だ。
中央の男が、声を張り上げる。
「羞恥心転換の使い手」
その声が、蓮を刺す。
「出てこい」
蓮の心臓が、激しく鼓動する。
自分を狙っている。
五人が、蓮の前に立つ。
「柊君を、渡しません」
雪菜が言う。
「蓮は、俺たちの仲間だ」
颯が続ける。
幹部の男が、笑う。
「仲間か」
「くだらん」
男が手を伸ばす。
黒い波動が放たれる。
雪菜が氷の壁を作る。
だが、波動は壁を砕く。
五人が吹き飛ぶ。
「みんな」
蓮が叫ぶ。
幹部の力が、圧倒的だ。
蓮は、額を触る。
恥メーターは35。
これでは、戦えない。
だが、今は上げている余裕がない。
幹部が降りてくる。
蓮の前に立つ。
「お前が、柊蓮か」
その目が、冷たい。
「お前の能力、危険だ」
男が手を伸ばす。
黒い波動が、蓮を包む。
身体が動かない。
呼吸が苦しい。
その時。
「やめろ」
颯が立ち上がる。
虚無領域を展開する。
黒い波動が、消える。
蓮が解放される。
颯が、幹部に挑む。
「お前の相手は、俺だ」
幹部が、颯を見る。
「学園最強か」
「面白い」
二人が激突する。
その隙に、雪菜たちが立ち上がる。
「柊君、逃げて」
雪菜が言う。
「でも……」
「今は、時間を稼ぐ」
明日香が続ける。
「あなたは、最後の切り札です」
美鈴が言う。
「恥メーター上げる時間が必要でしょ」
莉音が笑う。
蓮は、迷った。
だが、四人の目を見て。
頷いた。
「わかった」
蓮は、後退する。
だが、遠くには行かない。
訓練場の端、十メートルほど離れた場所で、待機する。
四人が、残りの幹部二人と戦い始める。
雪菜の氷。
明日香の炎。
美鈴の予知。
莉音の重力。
四人の連携。
クラスメイトたちも、黒マント集団と戦っている。
学園全体が、戦場だ。
蓮は、自分にできることを考える。
恥メーターを上げる。
だが、どうやって。
四人は戦闘中。
頼れない。
自分で、上げるしかない。
蓮は、深呼吸した。
そして、叫ぶ。
「みんな、聞いてくれ」
戦闘中の生徒たちが、一瞬振り返る。
「俺は、恥ずかしい能力を持ってる」
その声が、響く。
「恥をかかないと、強くなれない」
クラスメイトたちが、蓮を見る。
「だから、恥をかく」
蓮は、続ける。
「俺は、四人のヒロインと一緒に戦いたい」
その言葉に、四人が振り向く。
顔が赤い。
「全員、大切な仲間だ」
周囲が、ざわめく。
だが、蓮は止まらない。
「みんなを守りたい」
「だから、恥をかく」
額の数字が、跳ねる。
40。
50。
まだ足りない。
蓮は、さらに叫ぶ。
「雪菜は、完璧で美しい仲間だ」
雪菜の顔が、真っ赤になる。
「明日香は、明るくて頼りになる」
明日香が、耳まで赤くなる。
「美鈴は、優しくて大切な仲間だ」
美鈴が、蹲る。
「莉音は、元気でみんなを支えてくれる」
莉音が、両手で顔を覆う。
四人全員、恥ずかしさで身動きできない。
周囲が、爆笑する。
「すげぇ」
「公開告白」
「全員に」
その笑い声が、さらに恥ずかしい。
額の数字が、跳ね上がる。
60。
70。
80。
蓮の顔が、燃えるように熱い。
だが、力が満ちてくる。
四人も、恥ずかしさを振り切るように立ち上がる。
敵は待ってくれない。
幹部が、蓮を見る。
「なるほど」
「それが、羞恥心転換か」
男が、蓮に向かってくる。
だが、その時。
遠くから、さらに強大な気配。
全員が、その方向を見る。
学園の正門の向こう。
街の方角。
黒い影が、ゆっくりと近づいてくる。
一人の人影。
だが、その存在感が、圧倒的だ。
幹部たちが、一斉に跪く。
「あの方が」
「お出ましだ」
蓮の背筋に、冷たいものが走る。
あれが。
委員会のリーダー。
人影が、近づいてくる。
その顔が、見えてくる。
中年の男。
黒いスーツ。
冷たい目。
そして、その額に。
数字が浮かんでいる。
恥メーターだ。
だが、蓮のものとは違う。
黒く、禍々しい。
男が、蓮を見る。
「ようやく会えたな」
その声が、重い。
「羞恥心転換の後継者よ」
男の口元に、笑みが浮かぶ。
「俺は、お前の先輩だ」
その言葉に、蓮の心臓が跳ねる。
先輩。
同じ能力の。
男が、名乗る。
「俺の名は、黒瀬 巽」
「かつては、羞恥心転換」
「今は、恥辱暴君」
その額の数字が、光る。
100。
だが、黒く、歪んでいる。
「お前も、同じ運命を辿る」
黒瀬が言う。
「恥メーター100の先には」
「暴走しかない」
その言葉が、重く響く。
蓮は、拳を握る。
この男が。
学園長が警告していた、過去の能力者。
暴走した、羞恥心転換。
「違う」
蓮が言う。
「俺は、お前とは違う」
黒瀬が、笑う。
「そう言った者は」
「みな、暴走した」
黒瀬が、手を伸ばす。
黒い波動が、学園全体を覆う。
圧倒的な力。
生徒たちが、膝をつく。
教師たちも、動けない。
だが、蓮は立っている。
恥メーター80の力で。
黒瀬が、蓮に近づく。
「お前の力、見せてもらおう」
蓮は、構える。
だが、その時。
四人が、蓮の前に立った。
「柊君を、渡しません」
雪菜が言う。
「蓮は、私たちの仲間」
明日香が続ける。
「守ります」
美鈴が叫ぶ。
「絶対に」
莉音が拳を握る。
颯も、蓮の隣に立つ。
「お前の相手は」
颯が言う。
「俺たち全員だ」
六人が、揃う。
黒瀬が、その光景を見る。
「仲間か」
「くだらん」
だが、その目に。
わずかな動揺がある。
「だが、今日は退く」
黒瀬が手を上げる。
幹部たちと黒マント集団が、撤退を始める。
「なぜ……」
蓮が呟く。
黒瀬が、振り返る。
「お前が、まだ弱いからだ」
その言葉が、胸に刺さる。
「もっと強くなれ」
「そして、絶望しろ」
黒瀬が、消えていく。
委員会の軍勢が、去っていく。
学園に、静けさが戻る。
だが、傷跡は深い。
正門は破壊されている。
校舎の壁も、崩れている。
負傷した生徒たちが、倒れている。
蓮は、その光景を見た。
守りきれなかった。
学園を。
その無力感が、胸を締め付ける。
だが、雪菜が肩に手を置く。
「柊君、あなたのせいじゃない」
「そうだよ」
明日香が続ける。
「みんな、生きてる」
美鈴が微笑む。
「これから、です」
莉音が拳を握る。
「次は、勝とう」
颯も頷く。
「ああ」
蓮は、拳を握りしめた。
次は、必ず勝つ。
黒瀬を倒す。
そして、学園を守る。
その決意を、胸に刻む。
夕日が沈む。
夜が訪れる。
学園の長い夜が、始まった。
復旧作業。
負傷者の手当て。
みんなで、協力する。
蓮も、手伝う。
だが、心の中で。
黒瀬の言葉が、繰り返される。
「お前も、同じ運命を辿る」
その言葉が、重い。
本当に、俺は暴走しないのか。
その不安が、消えない。
だが、四人がいる。
颯がいる。
仲間がいる。
だから、大丈夫だ。
そう、自分に言い聞かせる。
夜空に、星が輝く。
蓮は、空を見上げた。
長い戦いが、始まった。
だが、諦めない。
この仲間たちと。
共に戦い続ける。
どんな試練が待っていても。
恥をかく勇気を持って。
前を向いて。
蓮の決意は、揺るがない。
委員会との戦いは。
まだ、始まったばかりだ。
11月下旬の夕暮れ時。
秋の空が、オレンジ色に染まっている。
蓮は教室で、宿題を片付けていた。
クラスメイトたちも、残って勉強している。
平和な時間。
いつもの放課後。
だが、その平和は。
突然、終わった。
轟音。
学園全体が揺れた。
「地震?」
誰かが叫ぶ。
だが、違う。
窓の外に、黒い影が現れた。
無数の影。
空を覆うほどの数。
「あれは……」
蓮が呟く。
黒マント集団。
委員会だ。
警報が鳴り響く。
けたたましい音。
校内放送が流れる。
「全校生徒に告ぐ。委員会の襲撃だ。直ちに戦闘配置につけ。これは訓練ではない」
学園長の声。
緊迫している。
教室が、騒然とする。
「マジかよ」
「委員会が来た」
「どうする」
蓮は窓に駆け寄る。
外を見る。
学園の正門が、破壊されている。
煙が上がる。
黒マントの集団が、なだれ込んでくる。
数十人。
いや、百人以上。
その先頭に、複数の人影。
黒マントではない。
異様な雰囲気を纏っている。
幹部だ。
蓮の背筋に、冷たいものが走る。
その時、ドアが開いた。
雪菜が飛び込んでくる。
「柊君」
その顔が、緊張している。
「委員会です」
「わかってる」
蓮が答える。
明日香、美鈴、莉音も続いて入ってくる。
「蓮、大変だよ」
明日香が言う。
「数がすごい」
美鈴が震えている。
「未来で見た通りです」
「でも、実際に見ると……」
莉音が拳を握る。
「怖いけど、やるしかない」
蓮は頷く。
颯も、教室に入ってきた。
「柊」
颯が言う。
「行くぞ」
六人が揃った。
クラスメイトたちも、立ち上がる。
「俺たちも戦う」
一人が言う。
「そうだ、学園を守る」
別の生徒が続ける。
蓮は、クラスメイトたちを見た。
全員の目が、決意に満ちている。
「ありがとう」
蓮が言う。
「みんなで、守ろう」
教室を出る。
廊下は混乱していた。
生徒たちが走り回っている。
教師たちが、指示を出している。
「A組は正門防衛」
「B組は東門」
「C組は裏門」
蓮たちのクラスは、正門に配置された。
最も激戦になる場所。
六人とクラス全員が、正門に向かう。
外に出ると、既に戦闘が始まっていた。
上級生たちが、黒マント集団と戦っている。
炎が飛び交う。
雷が落ちる。
風が吹き荒れる。
能力者たちの戦い。
蓮は、正門の前に立った。
黒マント集団が押し寄せてくる。
「来るぞ」
颯が言う。
六人が構える。
雪菜が前に出る。
「氷結女王」
手を伸ばす。
地面が凍る。
広範囲に。
黒マントたちが、足を滑らせる。
明日香が炎を放つ。
「紅蓮覇王」
巨大な火球。
黒マントの一団を飲み込む。
美鈴が目を閉じる。
「時視眼」
数秒先を見る。
「右から来ます」
その言葉通り、右から敵が飛び出してくる。
莉音が重力を操作する。
「重力覇者」
敵が空中に浮く。
身動きできない。
蓮が走る。
恥メーターはまだ30。
だが、基礎体力は上がっている。
颯の特訓の成果。
敵に拳を叩き込む。
一撃で倒す。
颯が虚無領域を展開する。
周囲の敵が、力を失う。
能力が消される。
そこをクラスメイトたちが攻撃する。
連携が取れている。
最初の波を、防いだ。
だが、すぐに第二波が来る。
さらに多い数。
「まだ来る」
明日香が叫ぶ。
「キリがない」
莉音が続ける。
蓮は周囲を見渡した。
正門だけではない。
東門も、裏門も、同時に攻撃されている。
学園全体が、戦場になっている。
その時、轟音が響いた。
正門の上空に、人影が現れる。
三人。
黒マントではない。
幹部だ。
中央の男が、声を張り上げる。
「羞恥心転換の使い手」
その声が、蓮を刺す。
「出てこい」
蓮の心臓が、激しく鼓動する。
自分を狙っている。
五人が、蓮の前に立つ。
「柊君を、渡しません」
雪菜が言う。
「蓮は、俺たちの仲間だ」
颯が続ける。
幹部の男が、笑う。
「仲間か」
「くだらん」
男が手を伸ばす。
黒い波動が放たれる。
雪菜が氷の壁を作る。
だが、波動は壁を砕く。
五人が吹き飛ぶ。
「みんな」
蓮が叫ぶ。
幹部の力が、圧倒的だ。
蓮は、額を触る。
恥メーターは35。
これでは、戦えない。
だが、今は上げている余裕がない。
幹部が降りてくる。
蓮の前に立つ。
「お前が、柊蓮か」
その目が、冷たい。
「お前の能力、危険だ」
男が手を伸ばす。
黒い波動が、蓮を包む。
身体が動かない。
呼吸が苦しい。
その時。
「やめろ」
颯が立ち上がる。
虚無領域を展開する。
黒い波動が、消える。
蓮が解放される。
颯が、幹部に挑む。
「お前の相手は、俺だ」
幹部が、颯を見る。
「学園最強か」
「面白い」
二人が激突する。
その隙に、雪菜たちが立ち上がる。
「柊君、逃げて」
雪菜が言う。
「でも……」
「今は、時間を稼ぐ」
明日香が続ける。
「あなたは、最後の切り札です」
美鈴が言う。
「恥メーター上げる時間が必要でしょ」
莉音が笑う。
蓮は、迷った。
だが、四人の目を見て。
頷いた。
「わかった」
蓮は、後退する。
だが、遠くには行かない。
訓練場の端、十メートルほど離れた場所で、待機する。
四人が、残りの幹部二人と戦い始める。
雪菜の氷。
明日香の炎。
美鈴の予知。
莉音の重力。
四人の連携。
クラスメイトたちも、黒マント集団と戦っている。
学園全体が、戦場だ。
蓮は、自分にできることを考える。
恥メーターを上げる。
だが、どうやって。
四人は戦闘中。
頼れない。
自分で、上げるしかない。
蓮は、深呼吸した。
そして、叫ぶ。
「みんな、聞いてくれ」
戦闘中の生徒たちが、一瞬振り返る。
「俺は、恥ずかしい能力を持ってる」
その声が、響く。
「恥をかかないと、強くなれない」
クラスメイトたちが、蓮を見る。
「だから、恥をかく」
蓮は、続ける。
「俺は、四人のヒロインと一緒に戦いたい」
その言葉に、四人が振り向く。
顔が赤い。
「全員、大切な仲間だ」
周囲が、ざわめく。
だが、蓮は止まらない。
「みんなを守りたい」
「だから、恥をかく」
額の数字が、跳ねる。
40。
50。
まだ足りない。
蓮は、さらに叫ぶ。
「雪菜は、完璧で美しい仲間だ」
雪菜の顔が、真っ赤になる。
「明日香は、明るくて頼りになる」
明日香が、耳まで赤くなる。
「美鈴は、優しくて大切な仲間だ」
美鈴が、蹲る。
「莉音は、元気でみんなを支えてくれる」
莉音が、両手で顔を覆う。
四人全員、恥ずかしさで身動きできない。
周囲が、爆笑する。
「すげぇ」
「公開告白」
「全員に」
その笑い声が、さらに恥ずかしい。
額の数字が、跳ね上がる。
60。
70。
80。
蓮の顔が、燃えるように熱い。
だが、力が満ちてくる。
四人も、恥ずかしさを振り切るように立ち上がる。
敵は待ってくれない。
幹部が、蓮を見る。
「なるほど」
「それが、羞恥心転換か」
男が、蓮に向かってくる。
だが、その時。
遠くから、さらに強大な気配。
全員が、その方向を見る。
学園の正門の向こう。
街の方角。
黒い影が、ゆっくりと近づいてくる。
一人の人影。
だが、その存在感が、圧倒的だ。
幹部たちが、一斉に跪く。
「あの方が」
「お出ましだ」
蓮の背筋に、冷たいものが走る。
あれが。
委員会のリーダー。
人影が、近づいてくる。
その顔が、見えてくる。
中年の男。
黒いスーツ。
冷たい目。
そして、その額に。
数字が浮かんでいる。
恥メーターだ。
だが、蓮のものとは違う。
黒く、禍々しい。
男が、蓮を見る。
「ようやく会えたな」
その声が、重い。
「羞恥心転換の後継者よ」
男の口元に、笑みが浮かぶ。
「俺は、お前の先輩だ」
その言葉に、蓮の心臓が跳ねる。
先輩。
同じ能力の。
男が、名乗る。
「俺の名は、黒瀬 巽」
「かつては、羞恥心転換」
「今は、恥辱暴君」
その額の数字が、光る。
100。
だが、黒く、歪んでいる。
「お前も、同じ運命を辿る」
黒瀬が言う。
「恥メーター100の先には」
「暴走しかない」
その言葉が、重く響く。
蓮は、拳を握る。
この男が。
学園長が警告していた、過去の能力者。
暴走した、羞恥心転換。
「違う」
蓮が言う。
「俺は、お前とは違う」
黒瀬が、笑う。
「そう言った者は」
「みな、暴走した」
黒瀬が、手を伸ばす。
黒い波動が、学園全体を覆う。
圧倒的な力。
生徒たちが、膝をつく。
教師たちも、動けない。
だが、蓮は立っている。
恥メーター80の力で。
黒瀬が、蓮に近づく。
「お前の力、見せてもらおう」
蓮は、構える。
だが、その時。
四人が、蓮の前に立った。
「柊君を、渡しません」
雪菜が言う。
「蓮は、私たちの仲間」
明日香が続ける。
「守ります」
美鈴が叫ぶ。
「絶対に」
莉音が拳を握る。
颯も、蓮の隣に立つ。
「お前の相手は」
颯が言う。
「俺たち全員だ」
六人が、揃う。
黒瀬が、その光景を見る。
「仲間か」
「くだらん」
だが、その目に。
わずかな動揺がある。
「だが、今日は退く」
黒瀬が手を上げる。
幹部たちと黒マント集団が、撤退を始める。
「なぜ……」
蓮が呟く。
黒瀬が、振り返る。
「お前が、まだ弱いからだ」
その言葉が、胸に刺さる。
「もっと強くなれ」
「そして、絶望しろ」
黒瀬が、消えていく。
委員会の軍勢が、去っていく。
学園に、静けさが戻る。
だが、傷跡は深い。
正門は破壊されている。
校舎の壁も、崩れている。
負傷した生徒たちが、倒れている。
蓮は、その光景を見た。
守りきれなかった。
学園を。
その無力感が、胸を締め付ける。
だが、雪菜が肩に手を置く。
「柊君、あなたのせいじゃない」
「そうだよ」
明日香が続ける。
「みんな、生きてる」
美鈴が微笑む。
「これから、です」
莉音が拳を握る。
「次は、勝とう」
颯も頷く。
「ああ」
蓮は、拳を握りしめた。
次は、必ず勝つ。
黒瀬を倒す。
そして、学園を守る。
その決意を、胸に刻む。
夕日が沈む。
夜が訪れる。
学園の長い夜が、始まった。
復旧作業。
負傷者の手当て。
みんなで、協力する。
蓮も、手伝う。
だが、心の中で。
黒瀬の言葉が、繰り返される。
「お前も、同じ運命を辿る」
その言葉が、重い。
本当に、俺は暴走しないのか。
その不安が、消えない。
だが、四人がいる。
颯がいる。
仲間がいる。
だから、大丈夫だ。
そう、自分に言い聞かせる。
夜空に、星が輝く。
蓮は、空を見上げた。
長い戦いが、始まった。
だが、諦めない。
この仲間たちと。
共に戦い続ける。
どんな試練が待っていても。
恥をかく勇気を持って。
前を向いて。
蓮の決意は、揺るがない。
委員会との戦いは。
まだ、始まったばかりだ。
0
あなたにおすすめの小説
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます
内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」
――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。
カクヨムにて先行連載中です!
(https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)
異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。
残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。
一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。
そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。
そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。
異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。
やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。
さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。
そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる