狂おしいほど愛おしい

ゆるふわ詩音

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スズち

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 「覚悟はええか」

俺は今度こそショウに刺さるくらいの眼光を飛ばした。

でも、ショウはまた笑っとった。

今度は面白い漫才を見たかのように腹を抱えて。

「それで久しぶりに自宅に帰ろうとしてたんだ、な~んだ」

時間と手間をかけてやっと掴んだ真相を本人に馬鹿にされるなんて腸が煮えくりかえるようやわ。

「たぶん、まだまだだと思うよ……2人だと思ってる時点でね」

ショウはくふふと笑う。

「まあ、もうどうでもいいや。バレたからここに連れてきたわけじゃないし、帰すつもりは元々ないし」

スッと細めたショウの眼光は俺より数倍鋭くて、背筋がゾクッとなった。


 「そんなことでこんなことせえへんよ……もっと簡単なことやで?」

瞳の輝きが無くなった。

あ、れ?

いきなり喉が渇いてきたから、口を大きく開ける。

「あっ、やっと朝鮮ちゃん効いてきたか。お~そ~い!」

ショウは近くにあった経口補水液と書かれたベットボトルのキャップを開け、目の前でゴクゴクと飲み始めた。

「あ……あ、あ」

情けない声しか出ない。

「欲しい?」

ニャリと笑われるのが腹立たしいが、縦に何回も首を振った。

「はい、あ~ん」

恥ずかしさも捨てて大きく口を開けた。

しかし、無残に顔に掛けられたから、ほぼ飲めなかった。

またしてやられた。

「本当に素直すぎるわ。そんなんでよく人を疑う仕事をずっとしてきたね……ウケるんですけど」

ショウはまた腹を抱えて笑い始めた。


 「ふざけんな、ボケ!」

俺は柄にもなく声を荒げた。

やっぱり喉が渇いて空咳が出てもうたけど。

「ほう、威勢だけはまだあるんだ。プライド高いのね

まあ、ズタズタにするけどとまたメスを取り出して舌なめずりをするショウ。

ショウの役割は血抜き、解剖はリュウの担当なはずや。

「慣れんことはすんな……一緒に死にたくないやろ?」

近づいてくるのを牽制するように言葉を発す
る。

まだ身体は動かんから。

「生食、生理食塩水みたいなもんやから。傷口の洗浄と殺菌はしてくれるから安心して?」

あかん、会話にさえならんくなってもうた。

俺の顔を両手で強く掴んで、無理やり天井へ向けられる。

まあ、すぐ視界に入ってきたのはギラギラとしたショウの瞳。


 「この時をずうっと待ってた……スズちのものが俺のコレクションになるのを」

くふふと笑う声がこんなに怖いとは思わんかった。

「スズちの大きい日が大好きなの、特に左目」

ショウは左手で俺の鼻を力強く押え始めるから、俺は痛くて小さく唸った。

「麻酔、いらんよね? いっぱい端いでええから」

俺の瞳に気持ち悪いほど穏やかな微笑みが映り、金属の冷たさを感じた。
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