ツイノベまとめ

希咲さき

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オリジナル

74.爽やか体育教師×優等生平凡(美形×平凡)

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 家柄・成績・人当たり。全部完璧だけど、顔だけフツーな平凡くん(爽)。
 優等生やってて、友達とか教師から頼りにされてるんだけど、内心はめちゃめちゃ疲れてて文句タラタラ。外面がいいタイプの優等生くんだった。

 そんな爽のストレス発散は、隠れてタバコ吸うこと。やっちゃダメなのわかってるけど、息抜きしないと仮面が剥がれちゃうからしょうがない。
 そうやってこっそり屋上の隅でタバコふかしてたら、

「お前、葛城……?」

 って突然声をかけられる。驚いて辺りを見渡せば、屋上の入口の方から人が歩いてくる。

「織田、先生……」

 それは爽やかイケメンで、生徒たちから頼られて人気者な体育教師(織田)だった。

「お前、こんなとこで何してんだ?」
「いえ、別に何も……ッ」

 幸いというか、入口の方から見て爽がいる場所は影になっており、パッと見何をしていたか分からない。
 ワンチャン行ける……?と思って誤魔化してみたのだが。

「……何もしてない、わけないよなぁ?」
「っ!!」

 どんどん近付いてきた教師は、爽の肩口に顔を寄せて、それからスンと匂いを嗅いだ。

「優等生の葛城くんがタバコ……ねぇ」
「誰にも、言わないでください。もうしないので。っお願いします……」

 自分よりいくらか高い位置から視線が突き刺さっているが、爽は俯いたまま顔をあげられない。

 (謹慎? 退学?? 内申点に響くよな? てか、親にバレたらヤバい……っ、どうしよ!)

 今まで積み重ねてきたものが崩れてしまう恐怖に、声を震わせながら織田に懇願してみたが……。

「……うーん、そうだなぁ。まぁ葛城は優等生だし、1回くらい見逃してやってもいいかもな」
「…………へ?」

 ーー意外と、助かりそうだ。
 てっきり厳しく叱られて、家にもバレるかと思っていただけに拍子抜け。

 (そういやこの人兄貴肌っていうか、ちょっとした違反とかなら見逃してくれる寛容さあったな……)

 そういう所が人気を集める理由か……なんてぼんやり思っていたら、織田が続ける。

「でも、タダでって訳にはいかない」
「え」
「謹慎処分もんの悪事黙っててやるんだ、それ相応の見返りってもんがなくちゃなぁ?」
「は、はぁ!? 生徒を脅すのかよ!」
「お、意外と口が悪い。……ってか、脅すなんて人聞き悪いなぁ。これは取引だよ」

 ニカッと笑う織田。その笑顔に裏なんてないような気がして、爽は深いため息をつきながらも、折れることに決めた。

「あーはい、そうですね。すみませんでした。……で?僕はなにしたらいいんですか?」
「おーさすが優等生。話が早い。つっても、そんな警戒するようなもんでも無い。ただ俺の手伝いしてもらうだけだ」
「……雑用係ってことですか?」
「そーそー。授業の準備とか、道具の後片付けとか。ま、そんな感じだな」
「そのくらいなら、まぁ……」

 処分を受けるより遥かにマシな提案に、爽は受け入れることにする。

「よし、なら取引成立な! あ、でもタバコは吸うの禁止だから、お前が持ってるやつ没収な」
「え"っ」
「当たり前だろー? 家とかで吸ってないか、ちょこちょこ匂いも確認するから。あとはーそうだな。コレ」
「ぅ、んぐ!?」
「はは、美味いだろ? 俺いつも飴持ってるから、タバコ吸いたくなったら言えな? 食わせてやるから」

 そんじゃ! と笑いながら屋上から出ていく織田。

「……変なやつ」

 飴をモゴモゴしながら、爽はその背を見送った。

 ーーそれから爽は織田の雑用をするように。周りの生徒からは『葛城くん偉い!』『すすんで手伝いするなんて優しいね』などなど、称賛の言葉を貰うが事実は異なるわけで。

「あー、周りうるっさ。そんな褒められたことしてねーし」
「そうだよなぁ。なんせ隠れて喫煙してた非行少年だもんなぁ」
「うるさいですよ。だからちゃんと雑用係してるでしょ」

 じろっと織田を睨みつけながら爽は言う。
 それに笑い声をあげる織田。
 ……いつからか、爽はこの教師の前でだけは素を出せるようになっていた。

 最悪な場面を見られたからか、それともタバコが吸えなくなってストレス発散する場所が無くなったからか。
 こうして、織田に与えられた部屋の中では、優等生という仮面を外して、楽に呼吸ができるのだ。

「いつも助かってるぞー。ほい、今日のお駄賃な」

 そしてこれも。
 毎回雑用の後にくれるようになった飴。
 最初はタバコを吸えないイライラを誤魔化すために、強請って貰っていたが、いつの間にかコレを貰うために雑用を頑張るようになっていた。

 初めのうちは色んな味の飴をくれていたが、爽がいちごミルク味の飴にいい反応をしてからは、いつもその味の飴を渡してくるようになって、そんな気遣いにキュンとしちゃう爽。

 ……そう。彼はこの秘密の関係を続けているうちに、織田のことが気になりだし、いつの間にか恋していたのだった。

 でもそんな気持ちを伝えるつもりなんてなくて、ただ卒業するまでこの二人だけの特別な時間が続けばいいなと、そう思っていた。
 楽しそうに笑う織田の顔が見れて、自分にだけくれるいちごミルクの飴があればそれでいいと、そう。

 そんなある日のこと。
 いつものように織田の手伝いのために教官室で作業していると、誰かが部屋を訪ねてくる。
 爽は棚の整理をしており、ちょうどほかの人から見えない位置にいたので、織田が室内に人を入れても出ていかず、そのまま黙っていることにした。

「ねえ先生」
「おーどうした?」

 訪ねてきたのはどうやら女生徒らしい。
 少し気になった爽は、彼らに気付かれないように棚の影から盗み見ることに。

「最近あの優等生くんばっかり構ってるの、なんで?」

 突然自分のことを言われて驚く爽。織田と向き合っているのは、同じクラスの女子だった。綺麗で、色んな男子が『付き合いたい』と言っていた気がする。そんな子が、どうして。

 気になりながら、爽は二人の会話の行方を見守ることに。

「なんで、って。普通に手伝い頼んでるだけだけど?」
「えー?違くない?なんかあの子ばっかり贔屓してるって絶対。あっちもなんか楽しそうにしてるし、ちょっと変じゃない?」

 女子はなにやら織田と爽のことを勘ぐっているようで、なかなか引き下がらない。

「変じゃねーって。いいから、特に用事ないなら帰んなさいよ」
「やだ!だってアタシ先生のこと好きなの!あんな子じゃなくて、アタシのことかまって欲しい!雑用でもなんでもするから、ね?お願い先生!付き合って!!」

 (……っ!!)

 見た目と性格から、織田がモテるのは分かっていたが、告白現場を見るのは初めてで。彼女の声から、それが冗談などでは無いことが伝わってきて、思わず息を呑む爽。

「……悪いけど、俺は生徒と付き合う気はねーの。ゴメンな」
「……やだ。諦めない。なら、卒業したら付き合ってくれる?」
「それもダメ」
「っ、なんで!」
「なんででも。……っあー。今これしか手持ちねぇか。しょうがねえ。ほら、これやるからもう戻んな」
「っ先生……!」
「じゃーなー」

 織田は半ば無理やり部屋から女子を追い出して扉を閉める。

「悪ぃな…………って、葛城?どうした?」

 若干疲れたような顔をして織田は爽の方に近寄ってくるのだが、その足がはたと止まる。それから不思議そうに爽の顔をのぞき込む。
 けれど、爽はそれに何も言えず顔を逸らした。

 (飴、あげてた。僕の好きな飴……。僕が特別なわけじゃなかったんだ……)

 そりゃそうか、と納得する爽。
 そもそも自分は校則違反した生徒で、タバコを吸わせないために飴をくれるようになっただけ。いわばただの監視なのだこの関係は。
 それを勝手に居心地よく感じて、織田に恋をして、想うだけなら自由……なんて。

 在学中でも卒業しても、教師と生徒が結ばれるなんてあるわけないのに、その事実を突きつけられてショックを受けている。どこかで奇跡が起こるとでも思っていたのだろうか自分は。

 (馬鹿だなぁ……)

「先生、僕もう雑用やめます」
「は?……どうした、急に」
「もう付き合わされるのうんざりなんですよね。タバコのことも、バラすんならバラしてもらっていいんで。……それじゃ」
「っ、おい!」

 引き留めようとする織田を無視して、教官室を出る爽。それからぱったりと雑用をしなくなる。織田は何度か爽と会話しようとするが、完全スルーしていたらそれもなくなった。
 周囲は最初不思議そうにしていたが、特に突っ込まれず。そうして日々は過ぎていく。
 いつか喫煙のことをバラされるかも、と心配していたがそれもなく、爽は今まで以上に鬱憤がたまって、イラつく日々を送ることに。

 (タバコすいてーなー)

 ふと頭に浮かぶ。けれど、同時に爽のことも思い出してしまい、結局それも出来ず。

「これで最後の1個か……」

 貰ってはこっそりためていたいちごミルク味の飴をポケットから取りだし、小さく呟いた。

「なら新しいのやろうか?」

 かけられた声に、驚いて振り返る。
 そこには屋上の入口に立ってこちらを見ている織田がいた。

「せ、んせい……」
「またこんなとこに来て。何してんだお前は~」

 にこやかな笑みを浮かべながら近寄ってくる織田に、キュウと胸が絞られる。
 ふたりのヒミツの関係が始まったこの場所に2人きり。この状況にいてもたってもいられなくて、爽は慌てて出ていこうとする。

「すいません……っ。すぐ戻りますんで」
「待てよ」

 小走りで織田の横を通り抜けようとしたが、グッと腕を掴まれ、その足を止められてしまう。

「……はなして、ください」
「いやだ。……葛城、俺とちゃんと話をしよう」
「話すことなんて、なにもないです」
「俺はある。……なぁ。なんで急に離れていくんだ?  あの時の会話のせいか?」
「……ちがいます。あの時も言いましたよね?  こき使われるのが嫌になったんです」

 目は、合わせられない。一刻も早く逃げ出したいのに、未だに腕を掴まれているからそれも出来ない。

 (早く会話を終わらせなきゃ。変な事言う前に。この気持ちに、気づかれる前に……ッ)

「っ、先生だって、僕みたいな冴えないやつより、あの子みたいな可愛い子に手伝ってもらった方が嬉しいでしょ?  ほら、ウィンウィンじゃないですか……!  だから」
「俺はお前がいい」
「ッえ……」

 ギュ、と握られた腕に力が込められた。聞こえた言葉に思わず顔をあげれば、真剣な顔でこちらをのぞき込む織田と視線が絡む。

「先生……?」
「俺は、お前がいいんだよ葛城。優等生かと思えば影でタバコ吸って、実は口が悪くって。でも本当に真面目で色んな人に優しくて。俺がやった飴を嬉しそうに持ってる、そんな可愛いお前に近くにいて欲しい」
「な、に……いって」
「ちゃんと言わなきゃ伝わんねーか?  こんな気持ち、生徒に持っちゃいけねーのは分かってる。でも、本当のお前を俺だけが知っていたい、誰にも見せたくない。そう思っちまうくらいに、俺はお前が好きだ」

 少しも逸らされることのない視線に射抜かれて、爽は息も忘れる。
 告げられた想いに驚いて、見開いた瞳からは、ぽろぽろと涙が溢れ出してしまった。

「うそ……そんなの、ありえない」
「嘘じゃない。好きでもない奴に専用の飴なんて準備するかよ」
「でも、あの子にあげてた……それに、生徒と付き合う気はないって」
「あん時はまじでほかの手持ちなかったんだよ。それに、ああでも言わなきゃ退いてくれなさそうだったし……つーかなんだ?  いちごミルクの飴あの子にあげたの、嫌だったのか?」
「…………ぅん」

 いつの間にか掴まれていた腕は離され、かわりに優しく囲うように腰に回される。長くてゴツゴツした指は、止まらない爽の涙をそっと拭ってくれた。

「気付かなくてごめんな?  これからはお前以外誰にもやんねーから」
「ほんと?  絶対……?」
「絶対。……だからお前も聞かせて欲しい」
「?  なにを?」
「俺の事、どう思ってんの?  飴一個でヤキモチ妬いちゃうくらいだからだいたいわかるけど、それでもちゃんとお前の口から聞きたい」

 な?  お願い。そういって額を合わせてくる織田。あまりの顔の近さに恥ずかしくて、まだ現実が信じられなくて。……それでも、この溢れそうになる嬉しさを伝えたくて。

「……僕も、先生が好き、です」

 花がほころぶ様な笑顔でそう言えば、次の瞬間、唇に温かなものが触れた。

「ーーごめん。あんまりにも可愛いからつい……。ガマン、出来なかった」
「~~ッ!?」

 2人揃って真っ赤になって、それからふ、と笑みがこぼれる。
 ーーこうしてふたりのヒミツの関係は再び、前以上の秘密を持って結ばれた。

 ……それからの2人だが、爽の卒業まではキス以上はなしという約束のもと、健全なお付き合いを続けている。
 雑用係はといえば、流石に勘ぐられるのは良くないと無しになった。けれど爽は進んで体育委員会に所属し、ちょっとでも織田と会えるように努力している。

 優等生キャラを変わらず続ける爽は、ストレスが溜まれば、織田からもらったいちごミルクの飴を大事になめ、時には「口寂しいな」と強請ってキスを貰って発散しているらしい。

 そうして無事卒業を迎えた日には、2人は晴れて身体も結ばれ。大学進学に際しては、織田の家に転がり込んで同棲始めちゃう、そんな教師と生徒のひみつのお話でした。

 爽やか美形体育教師×隠れ喫煙してる優等生平凡





CP名:織田修吾おだしゅうご×葛城爽かつらぎそう
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