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リクエスト
⑨オネェ×自信なさげ(美形×平凡)
しおりを挟む「うぅ~。ぐすっ、なんで……」
飲み干して空になったグラスをカウンターに置き、項垂れるのは平凡な男(旬汰)。
彼がいるのはとあるゲイバーだった。
「アナタ、初めて見る顔ね?何か、嫌なことでもあったのかしら」
何杯目かの酒を煽った時、隣から声をかけられる。
「んぇ……?」
「随分酔ってるみたいだけど、大丈夫?」
「らいじょーぶ、れす」
「大丈夫じゃなさそうだけど……。もうそこら辺でやめたら?」
「んやっ!!飲まなきゃやってらんないんれすっ!!」
キッと睨むように声の方を向けば。
「はえ……すごいキレー」
「ふふふ、それはどうもありがとう」
「おねえさん……じゃ、ないよね?」
「そうね……。ある意味そうかも?」
「んん?」
「所謂オネェってやつよ。性別はもちろん男」
「はぁ~。オネェさん。ふーん……?」
美形なオネェさん(紫苑)を眺めながら、ぽやぽやする旬汰。
「そんなことより。飲まなきゃやってられないなんて、何があったのかしら?よかったら、聞かせてくれない?」
その言葉に旬汰はハッとして、それから捲し立てるように話し出す。
「そうなんでしゅよ!きいてください!じつは……」
ーー旬汰はつい最近、恋人にフラれたばかりだった。
自分がゲイであると早い段階で気づいていた旬汰。大学進学してからゲイバーに通うようになり、そこで恋人を作ることが出来た。
なんの取り柄もない自分が、相手をつなぎとめるために出来ることは限られている。そう思っていた旬汰は、相手にとことん尽くした。料理や講義の代返、お金の貸し借り。望まれればなんでもした。それなのに。
1人目の男は、セックスが初めてでどうしていいか分からない自分が嫌だったらしく、『マグロとかないわ』と言って振った。
2人目は、従順すぎる自分に嫌気がさしたらしく『自己主張とかないん?引くわー』と言って振った。
3人目は金の無心。これ以上無理だと言えば『金のないお前に価値は無い』と。
そして4人目。つい最近別れた男はといえば。
「『元からお前は2番目。勘違いすんな』って。最初から俺が浮気だったって言ったんですよォ!!」
もう、泣くしかなかった。
今まで、相手に好かれたくて、良かれと思ってやったこと全部否定されてきた。そして身勝手な理由で捨てられてきたのだ。
「もう、もうどうしていいかわかんないぃ……。なにしても捨てられる。俺にいいとこなんてひとつも無いんだ。全部俺がダメダメなんだ……」
「そんなことないわよ」
みっともなく泣いてたら、紫苑は、ピシャリと言い放った。
「……うぇ?」
「アナタは何も悪くないじゃない。恋人のために努力してたのに、相手がなにも理解しようとしないクズだっただけよ」
「お、にいさん……」
「こんなに可愛いコを振るなんて、勿体ないことしたわね、そいつら」
スル……と旬汰の頬を撫でながら、妖艶に微笑む紫苑。
旬汰は思わずポーっとなってその顔に見とれてしまう。
「ねぇ?今、フリーなのよね?だったら次の恋人に、アタシが立候補してもいいかしら?」
「へっ!?こ、こいびと……?」
「そう、恋人。アタシは今までのヤツらと違って、絶対にアナタを悲しませたりしないって違うわ。うんと甘やかして、愛してあげる。だからどう?アタシと恋人にならない?」
「は、ひぇ……でっ、でも俺。おにいさんのこと、なんにも知らなぃ……」
「じゃあ、今から知ってくれる?」
そういって紫苑は、旬汰の腕を取ってスツールから立たせる。
フラつく旬汰の腰を支えて、そのまま店を出た。
「あ、お金っ」
「そんなの、気にしないでいいわ」
「で、でも……」
「なら、体で払ってもらおうかしらね?」
「……っ!」
そうして連れていかれたのはホテルで。
ーー旬汰は初めてあったその日に、綺麗なオネェさんに食べられてしまったのだった。
翌朝。
「…………どうしよ」
ズキズキ痛む頭と腰に、旬汰は項垂れるしか無かった。悲しいかな、酔っても記憶はしっかり残るタイプだった旬汰。昨日のことはハッキリと覚えていた。
元恋人の愚痴を聞かせた上に、店代を払ってもらい、挙句ホテル。
「ヤバいって……」
「なにが?」
「っひ!!」
「随分な反応ね?あんなに愛し合った仲なのに」
「そっ、それは、その……っ!」
意識がはっきりとした状態で見るその人は、声も体も顔も。全部綺麗でセクシーだった。正直直視出来ない。
旬汰は目を逸らしながら、ベッドから降りようと後退る。
が、腰に回された腕に捕まる。
「どこに行くつもり?」
「…………家に、帰ろうかと」
「あら。それなら送るわよ?」
「や、えと。その……」
「それとも、アタシから逃げたいの?」
「っ」
ぴく、と肩を揺らす。
旬汰は今日のことを一夜の過ちとして、全て忘れるつもりだった。
こんな綺麗な人が自分を好きになるはずない。昨日のはセックスの相手を探すための誘い文句。鵜呑みにしちゃいけない。自分はいい所なんて何もない、つまらない人間だから。
そう思って、昨日のことはなかったことにして欲しいと言うつもりだった。
けれど。
「言っておくけどアタシ、なかったことにするつもりないわよ?昨日言ったことも全部本当のこと。アナタと恋人になりたい。愛して甘やかして、アタシなしじゃいられなくしたい」
「あーー」
「それにアナタ、アタシのこと好きって言ったわよね?」
ニッコリ。紫苑が微笑む。それにポカンとする旬汰。
「へ?……言ってない!そんなこと言って……」
「言った。証拠もあるわよ。ほら」
そういって紫苑、スマホから動画を流し始める。
そこには、ぐちゃぐちゃのトロトロになった旬汰が、甘えるような声で
「好き」
「恋人にして」
「捨てないで」
「愛して欲しい」
といったようなことを繰り返していた。
「~~~!?」
「ね?言ってるでしょ?だからもうアタシたちは恋人同士なのよ」
「こ、こんなの……!」
「無効になんて、させないわよ」
ぐっ、と腰を引き寄せられバランスを崩す旬汰。
そのまま体勢を入れ替えられ、ベッドに縫い付けられる。
真上からギラギラとした目で見つめられて、それからーー。
「絶対逃がさないから、覚悟して」
ーー自分に自信がなくて恋に臆病になっていた平凡は、綺麗なオネェさんに愛されて幸せになりました!
オネェ×自信なさげ平凡のお話。
CP名:佐倉紫苑×三尾旬汰
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