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リクエスト
⑪動物に懐かれない×動物に懐かれる(美形×平凡)
しおりを挟む「ンヒィ!!」
街を歩いていると、どこからが変な声が聞こえた。
キョロ……と視線をめぐらせると、1人の男がハトに囲まれていた。
「たっ、たす、助けて……!!」
泣きそうな声でそういう男。周りを見るが、誰も立ち止まってはくれない。それどころか通りすがった子供が楽しそうに笑っている。
「うぇ……たすけて……」
「あの」
見かねて俺(真紀生)が近づくと、ハトは一斉に飛び立っていく。
「あ……」
「キミ、大丈夫?」
「あ、はい!助かりました!ありがとうございますっ」
ぺこりと頭を下げる男(恒星)。平凡な顔立ちで、大学生くらいだろうか。
「キミ、なんであんなことになってたの?」
「えと、実は……」
彼いわく、昔から何故か動物に好かれるらしかった。人といればそうでも無いらしいが、一人でいると特に動物が集まってくるそうで。
「学校帰りは猫が後をついてくるし、公園にいたら餌もないのにハトが寄ってくるし……。俺、動物苦手なのに」
そういってガックリと肩を落とす恒星。
「贅沢な悩みだなぁ」
「……へ?」
「俺なんか、動物が好きでしょうがないのに、全然好かれなくて困ってるって言うのに」
「それは……」
俺の言葉に恒星はぱちぱちと瞬きをする。それから。
「人にも動物にも好かれそうなのに、不思議ですね」
と言った。
きっと見た目のことを言っているんだろう。自分で言うのもなんだが、俺はモテる部類だ。
「人にはまあそうだが、動物には嫌われてるよ」
「はぁ。代わって欲しいくらいですね」
そうやって話していると、恒星は思い出したように慌てている。
「いっけね!バイトに遅れる!」
「バイト?」
「あ、はい!もう行かなきゃなんで、すみません!助けてくれて、ありがとうございました!!」
そう言って恒星は駆け出して行った。
「変な子だったなぁ」
動物が苦手なのに動物に好かれる不思議な子。なんだか面白くて笑ってしまった。それから俺も、目的の場所に向かって歩き出した。
♢♦︎♢
「あ」
「あ……!?」
ーーそしていま。目的地である猫カフェについたら、なんとそこにさっきの恒星がいた。
「あなた、さっきの!」
「キミも。……というか、バイト先って、ココ?」
「えっ?えぇ、まぁ……ハイ」
バツが悪そうに視線を逸らす恒星。動物が苦手なくせに、バイト先が猫カフェって。
「キミって、馬鹿なの?」
「なっ……!!」
会ってそんなに時間が経っていないのに、ついそんなことを言ってしまう。
「だ、だって!キッチンメインでいいって話だったし、猫好きがいっぱいいれば、俺には近づいてこないって思って……!」
顔を赤くして言い訳をしてくる恒星がまた面白くて、俺は声を出して笑ってしまった。
ーーそれから俺は、休みの度にその猫カフェに通うようになった。
もちろん、猫はちっとも俺には寄ってきてくれない。でも彼が近くにいると傍まで来てくれるから、とても楽しい。何度も通って、彼と仲良くしていると、猫も触らせてくれるようになった。
「キミのおかげだな。こうして猫に触れるのは」
「……俺は出来れば離れたいんですけどね?」
「いいじゃないか、俺がいるから囲まれるまではないだろう?」
「まぁ、そうですけど……。でも、ゴニョニョ……」
「? なんか言ったか?」
「いいえ何も!」
赤い顔でそっぽを向く恒星。
その様子が可愛いなぁ、と思う。
……俺は何度もこの猫カフェに通ううち、恒星の事が好きになっていた。
自分と正反対で、面白くて、反応が可愛い恒星。いつの間にか猫より、彼に会いたくて店に通うように。
きっと彼は俺が傍にいれば動物が寄ってこなくて助かる、くらいにしか思ってないかもしれないが。
なんにせよ、好きな人と可愛い猫と触れ合えるこの時間が、何より大切になっていた。
そんなある日。
「子猫、ですか?」
「そうなんだ……」
同僚が飼っている猫が子供を産んだといって、そのうちの一匹を押し付けられてしまったのだ。
「その子にも、逃げられちゃってるんですか?」
「いや、まだ小さいからね。逃げないし、擦り寄ってきてくれて可愛いんだ」
押し付けられたとはいえ、俺は動物好き。すぐさま必要なものを買い揃え、甲斐甲斐しく世話をしている。
怖がられないことが嬉しくて、毎日が楽しい。
「そう、ですか……」
ニコニコな俺と違って、なんだか元気がない恒星。
「? どうかしたか?」
「あ、いえなんでも!……あの、その子猫、今度俺も見に行っていいですか……?」
「え?」
俺の様子を伺いながらそういう恒星。
その内容に少し驚く。
「別に俺は構わないが……。キミ、動物苦手だろう?大丈夫なのか?」
「っ、大丈夫です!苦手だけど、まだ赤ちゃんならそんなに怖くないだろうし、それに猫カフェで働いてますし、少しはお世話のお手伝いとか出来ると思うので……」
顔を赤くして話す恒星。
(もしかして……)
その様子に俺はドキリとする。
勘違いじゃなければ、これは。
緩みそうになる顔を引き締め、家に来る日程を話し合った。そして。
「おじゃま、します……」
「どうぞ」
次の土曜日、恒星が俺の家に来る。
どこか緊張した様子の彼に、思わず口角が上がってしまう。
家にあげて子猫を見せれば、
「わっ!可愛い!!」
キラキラした顔ではしゃいでいる。
抱き上げて恒星に渡してやれば、恐る恐るといった様子で触れている。
「小さい、ふわふわ……」
「可愛いだろ?」
「そうですね、これなら俺も怖くない」
どうやら恒星は、すっかり子猫に慣れたらしく、それからずっと遊んでいる。
「あー、可愛い!この子ならずっとお世話できる!」
「そりゃあ嬉しいね」
ずっと遊んで、気づいたら日が傾いていた。
「もうこんな時間。ずっとお邪魔してすみません」
「いや、大丈夫。なんなら夕食も食べていかないか?」
「え、いいんですか……?」
ぽっと頬を染める恒星。
「もちろん構わないよ」
にっこり笑顔で返して、夕食を振る舞う。それから2人で食事をし、それからまた子猫と遊ぶ。
「そろそろ俺、帰りますね……」
「…………泊まってかないの?」
「っえ!?」
遊び疲れて子猫が眠ってしまうと、恒星が帰ろうとした。が、俺はもちろん引き留める。
「ホントは、そのつもりだったんじゃないの?」
「そ、そんなわけ……っ」
「ほんとに?俺はそのつもりだったけど?」
「っ!!」
「この家に上げた時から、返すつもり無かった。いつの間にか猫カフェに通う理由が、キミに会うためになってたくらい、キミが好きだよ」
距離を詰めて、頬に手を添えてその顔を上向かせる。そしたら真っ赤になって潤んだ瞳の恒星の顔が。
「……俺も、あなたが来るのが待ち遠しいくらい、好きです。猫にばっかり構うのが、寂しくて。……今日だって、子猫の話楽しそうにしてるのが悔しくて。猫より、俺の事大切にしてほしい……」
「もちろん」
……こうして結ばれた2人。
子猫と一緒に、2人の愛情は育っていきましたとさ。
動物好きなのに懐かれない美形×動物苦手なのに何故か懐かれる受けのお話。
CP名:深瀬真紀生×土井恒星
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