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オリジナル
52.ドラゴン×嫌われ妖精(美形×平凡)
しおりを挟むとある世界の妖精の国のお話。
整った容姿と、美しい羽根を持つ妖精ばかりの国の中でたった一人、平凡な見た目の妖精がいた。
その容姿から周囲の妖精や家族からも嫌われていた平凡妖精(ルネ)。森の中の小屋にひっそりと一人で住み、誰とも交わらずに過ごしてきた。
「どうして僕はこんな見た目なんだろう……。それに、この羽根……」
小屋の側の湖を覗き込み、深くため息をつくルネ。
湖面に映る凡庸な顔の後ろに見える、薄い羽根を見て眉をしかめた。
美しい妖精たちの羽根は、薄い虹色に輝いていて、羽根からこぼれ落ちる鱗粉からは、とてもかぐわしい香りがする。
それなのにルネの羽根は、色が抜け落ちたように真っ白で、鱗粉も誰もが鼻をつまむほど酷い匂いがしていた。
何もかもが、親や周囲と違うルネ。一生一人で生きていかねばならないのかと、自分の未来を思って涙をながす。
そんなある日、妖精王から国中に伝達がある。
話によれば、星読みの妖精が言うに、この妖精の国に近く災いが訪れるらしい。だが、救世主が現れその災いを退けるので、心配は要らないとの事だった。
「救世主……」
もたらされた凶報に不安になるが、それよりも救世主の事が気になった。
よそから来た人ならば、自分の事を嫌わないでくれるかもしれない。もしかしたら、友達にもなれるかも……。
そう、淡い期待を抱いた。
それから数日すると、本当に救世主らしき人間が妖精の国を訪れる。
それから更に数日後。今度は空が闇に覆われ、湖は波打ち、嵐が吹き荒れる。
雷鳴轟く雲間から現れたのは、黒い鱗に覆われたドラゴン(ジェノクス)だった。
ルネは森に一人でいるのが怖くなり、この騒動の最中ならば大丈夫だろうと、街に逃げ込む。事実街は混乱しており、逃げ惑う妖精で溢れていた。
ルネも逃げるべきだったのだろうが、よそから来たという救世主のことが気になった。星読みの話では、救世主が災いを退けるとの事だし、彼の側に居た方が逆に安全なのでは……。
そう思ったルネは、救世主を探す。
妖精たちの波に逆らいながら走っていると、村のはずれの広場に見た事のない人間を見つける。
(あの人が……)
と思うと同時に、救世主の目の前にいる黒い塊にも気づいた。
「うそ……」
それは空から降り立ったジェノクス。
よく見れば、救世主と思しきその人は、ジェノクスと対峙して震えて固まっているようだった。
(救世主が救ってくれるんじゃなかったの?どうしよう、どうすればーー)
恐ろしい状況に、逃げなければと思うのに足が動かない。
そうしていれば、こちらに気付いたらしいジェノクスと目が合ってしまった。
(ッ終わった……)
死を覚悟して目をつぶった瞬間。
『なんとかぐわしい匂いか』
低く美しい声が響いた。
「え……」
誰の声かと思って、おもわず目を開けるルネ。
すると黒く巨大だったジェノクスの体が輝き、それから収縮して小さな塊になった。
光が消えたあとそこに現れたのは、黒い長髪と見たこともないような絶世の美男子。
その人が、救世主らしい男には目もくれず、こちらに歩いてくる。
美しさと恐怖で動けないルネの目の前まで来ると、ジェノクスはそっとその手を取った。
「お前はとても良い香りがするな」
「ぇ、あ……」
「その羽根も他の妖精とは違って美しい」
「うそ……」
絡められているのと反対の手で、頬を包まれ上を向かせられる。高い位置から覗き込まれて交わる瞳。金色のそれは、トロリと蜂蜜のようにとけた。
「ーー気に入った。お前を連れて帰ろう」
黒い髪の檻に囚われるように、上から口付けられ、初めてのことに翻弄されて気を失ったルネ。
次に目が覚めた時には全く知らない場所ーーそれも、美しい男の膝の上だった。
こうしてジェノクスに連れ去られたルネは、今まで誰にも優しくされることも褒められることもなかった日々とは一変して、毎日慈しみ愛されることになるのだった。
ドラゴン×嫌われ妖精
CP名:ジェノクス×ルネ
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