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オリジナル
53.社長×清掃員(美形×平凡)
しおりを挟む清掃業者で働いている平凡(さくら)。今担当してるのは、大企業のビル。
いつものようにだだっ広いフロアを真面目に掃除していると、落し物を見つける。
それは高そうな万年筆。
イニシャルが入っていたので、誰かわかる人がいないかと周囲を見渡すと、近くに身なりのいいイケメン(肇)が。
「あ、あのすみません」
「はい?」
「落し物を見つけたんですけど、これ、どなたのか知りませんか?」
万年筆を差し出すと肇は、パアッと表情を明るくして、万年筆ごとさくらの手を握りしめた。
「ッあった!!よかったーー!!」
「えっ、え!?」
「これ、俺のです!昨日からずっと探してて!ホント見つかってよかったー!!お兄さん、ありがとうございます!!」
ニコニコ嬉しそうに言う肇。探す間もなく持ち主が見つかってホッとしたさくらは、彼に万年筆を渡すと仕事に戻ることに。
「落し物、見つかって良かったです。では、僕はこれで」
「あ、ちょっと待って!!なにかお礼がしたいから、連絡先教えてくれないかな??」
「へ……?」
立ち去ろうとした腕を掴まれて、そう告げられる。
「いや、そんな大したことしてませんし……」
「俺にとっては大したことだから!!お願い、教えてくれない?」
キラキラのイケメンフェイスで迫られるさくら。これ以上捕まって仕事が遅れるのも困る。
「わ、分かりました……。教えますので、手を離してください」
さくらが承諾するとすぐに手が離れる。それから紙に電話番号を書いて渡すと、肇は嬉しそうに「また連絡するね!」と言って去っていってしまった。
「何だったんだろう、あの人……」
嵐のような肇にちょっと疲れつつ、さくらは再び仕事に戻る。
その日の夜のこと。
知らない番号から着信が。
迷惑電話かと思いスルーするのだが、何度も何度も繰り返しかかってくる。仕方なく出ると、
「やっと出てくれた!俺だよ!!」
「俺?……あぁ、昼間の」
声を聞いて昼間の落し物のイケメン……肇だと分かった。それからおしゃべり上手な肇に乗せられる形で、長電話することに。
自己紹介から好きな物、恋人の有無まで告白させられ、それからやっと電話は終わった。
「ほんと、なんなんだあの人……」
滅多にしない電話に疲れたさくらはそのまま眠りにつく。
そうして翌日。仕事に行くと、また肇が現れる。
「おはようさくらくん!」
「あ、おはようございます小山内さん」
「昨日の夜は楽しかったよ!また今日も掛けていいかな?」
「ぅえ、その……電話はちょっと苦手で……」
「え、そうなの?ならメッセージは?」
「それならまだ……」
「わかった!じゃあメッセージ送るね!!」
そうして始まる毎日のメッセージのやり取り。
肇が言っていた『お礼』の話も、ちゃっかりそこで日取り決めてご飯に行くことに。ちょっとお高めなレストランでご馳走されて、どんどん距離が縮まっていく。
仕事に行けばいっつも挨拶してくれるし、休憩時間には会いに来て、他愛もない話をしていく肇。
最初はちょっと苦手意識持ってたさくらも、いつしか彼といるのが楽しくなって、居心地よく感じてた。
そんなある日のこと。
いつものように肇と話していたら、美人な社員さんが割り込んでくる。
「社長!探してたんですよ?早く戻ってきてください」
「え?」
「もうそんな時間かい?仕方ない……。じゃあねさくらくん。また夜に」
美女に促され仕事に戻っていく肇。その背を見送っていれば、彼の後ろを歩いていた美女が、くるりと振り返ってこっちにやってくる。
「あんた、社長とどういう関係か知らないけど、清掃員みたいな底辺が彼に近付こうなんて烏滸がましいのよ。身の程を知りなさい」
そう蔑むように言い捨てて、美女は肇を追いかけて走って行ってしまった。
(小山内さんが、社長……)
掃除をしながらボンヤリとその事ばかりを考える。
確かに身なりは良かったし、食事に行く時なんかもちょっと高価なお店だったし、いつも奢ってくれていた。
こんな大手で働いてるから、高給取りなのかな?くらいにしか思ってなかったけど、まさか社長……。
自分との身分の差を感じて、なんだか裏切られたような、惨めな気持ちになったさくら。
その夜のメッセージは、何通も届くものの、全てスルーしてしまった。
翌日は都合よく休みだったので、肇と会わずに済んだのだが、こんなモヤモヤした気持ちで仕事なんて出来ないと思い、職場に向かって勤務地の変更を申し出た。
上司には何かあったのかと訊ねられたが誤魔化し、ほかの契約先に移動させてもらえることに。
すぐに移動……という訳には行かず、翌日は肇のいる会社に行かなきゃいけなかった。今日ばかりは徹底的に彼を避けてやろうと思っていたが、その必要はなく。彼は出張か何かでさくらの前に現れなかった。
……こうして肇に会うことなく勤務地を変わったさくら。
未だにメッセージは届くが、変わらずスルーし続けている。
そうして彼から離れて分かったのは、自分が彼に恋をしていたということ。
彼が社長だと知って裏切られたように感じたのも、隠し事をされていたのが悲しかったから。ずっとモヤモヤしてたのも、彼との身分差に気付いて、一緒になれないってことがわかって傷ついたから。
「ほーんと、バカだなぁ」
でも、もう二度と会うこともない。
いっその事、連絡先も消すべきか。そう思った時である。
「ッ!?」
突然着信音が鳴り響く。画面を見れば、今考えていた肇で。
「どうしよ……」
悩んでいても、電話は一向に鳴り止まない。仕方ないので覚悟を決めて通話ボタンを押した。
「もしもーー」
「やっと出てくれた!!」
「ぅ、わ!」
「っと、ごめん大きな声出して。でも、メッセージも返してくれないし、会社に行っても姿が見えないし!聞いたら違う会社に移動したって!?なんで!?」
捲し立てる肇に圧倒される。
突然のことにテンパりつつ、なんとか考えておいた言い訳を伝える。
「えっと。違う会社で働いてた社員さんが怪我して動けなくなったんで、代わりにそっちに行くことになっただけです」
「ウソ」
「ウソなんかじゃ……」
「絶対ウソ。それだけなら、なんでメッセージ無視する必要あるの?大体、さくらくんが働いてる会社に電話したけど、そんなこと一言も言ってなかったよ」
まさか会社に電話までしていたとは……。
この先どうやって誤魔化すかと悩んでいれば。
「……もういい。そっち着いたから」
「は……?」
言われた意味が分からなくて聞き返すと同時に、自宅の呼び鈴が鳴った。
「え……」
「さくらくん、俺だよ。開けて。開けなきゃずっとここに居座るけど、いい?」
脅しとも取れる言葉に、さくらは覚悟を決めて扉を開ける。
ーーそれから家に上がり込んできた肇に迫られ口説かれ丸め込まれ。付き合うことになるさくら。
仕事はなんと、金に物を言わせた肇が、自宅清掃としてさくらを個人契約で雇うという暴挙に出て、同棲みたいなことまでする羽目になりましたとさ。
イケメン社長×平凡清掃員
CP名:小山内肇×坪井さくら
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