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オリジナル
61.幼なじみα×不安症Ω(美形×平凡)
しおりを挟む自己肯定感低めで、不安症の平凡Ω(和葉)。彼には、小さい頃からお互い大好きで、バース性が判明した時から『大きくなったら番になろう』と約束して付き合ってる、幼なじみの美形α(景吾)がいる。
周りから「なんでお前が岩崎くんと付き合ってるの?」「不釣り合い」と言われて傷つきながらも、恋人を譲る気なんて無くて、でもいつか捨てられるんじゃないかと不安になっては、景吾に「僕のこと好きだよね?」「愛してる?」とか、めんどくさい事を言っていた。彼は嫌な顔ひとつせず、いつも「好きだよ」「愛してる」と言ってくれるので、その度満たされた気分になって、順調に愛を育みながら時を重ねる。そうして、高校を卒業してからすぐに番になって、それから大学を卒業後籍を入れた。
その後、景吾は一流企業に就職し、和葉は専業主夫になる。
和葉は一生懸命に景吾を支えようと頑張るけど、元々そんなに器用じゃない。失敗することも多いけど、景吾はそれでも愛おしそうに「ありがとう」って言ってくれる。
幸せだと思っていたんだけど、近頃少しずつすれ違うようになってきた二人。それは仕事が忙しくなってきたようで、景吾がイライラし始めたから。
前は和葉の失敗も笑って慰めてくれてたのに、近頃は「後で俺が片付けるからそのままにしてて」「仕事、これ以上増やさないでね」と素っ気なく言うように。
不安症な和葉が、確認のように「僕のこと好きだよね?」と聞けば、「好きじゃなきゃ結婚してないでしょ」「疲れてるから、そっとしといてくれる?」と溜息をつきながら答えてくる。
(もう、僕のこと飽きたのかな……)
一緒にいる期間が長すぎたせいか、この自分の面倒な性格に疲れたのかも、和葉はそう思った。昔から不釣り合いだの、景吾が可哀想だのと言われ続けていて、自己肯定感も低い和葉はもうすぐ捨てられるかもしれないと考えてしまう。
そんなある日、朝から体調が悪かった。
(もしかして、発情期……)
景吾のことばかり考えていて、すっかりその事を忘れていた和葉。
思い出した途端、一気に体が熱くなった。
『ヒート、きた。はやくかえってきて』
震える指で景吾にメッセージを送る。すぐに既読はついたものの、返ってきた返事は、
『今日は外せない用事がある。出来るだけ早く帰るから、それまで我慢してて』
という素っ気ないもの。
和葉は、熱い息と同時に涙をボロっと零しながら、体を動かす。
(けいごを、たよっちゃ、ダメ。迷惑、かけないようにしなきゃ……)
よたよたしながら部屋に行き、強い抑制剤を飲み込む。
それから景吾の匂いがする部屋のベッドで、彼の服をいっぱい集めて眠りたい……と思ったが踏みとどまる。
(ぼくのにおいとか、つくのやだよね。ようふく、汚れるのも、おこるよね)
呆れたような、イラついたような景吾が頭の中に浮かび、ボタボタ涙を流しながら、和葉は脱衣室へ向かう。
そして洗濯機から、昨日の景吾の服を取り出すと、硬い床の上でそれを抱きしめて丸くなる。
(これだけ。これだけかして。あとでちゃんとあらうから。これがおわったら、もうなにも、めいわくかけないから)
体は燃えるように熱いのに、なぜか凍えるような寒さを感じる。いつの間にかガタガタと震えているし、耳鳴りが酷い。
(なんだろ?びょうき、かなぁ。けいごにうつんなきゃいいなぁ)
どれくらい時間が経ったのだろう?だんだん頭がぼんやりしてきて、息が苦しくなる。もうすぐ意識が途切れそうな時、どこか遠くで扉の開く音を聞いた。
ーーそれから。
「…………ん」
「ッ和葉!?」
「え……」
ゆっくり目を開けると、景吾の焦ったような顔が飛び込んでくる。
何が起こったのか分からなくて、目をぱちぱちと瞬かせるしか出来ない和葉だが、そんな彼を見て、目の前の景吾の顔が歪んだ。
「ッごめん、和葉!!」
「へ?なぁに?どうしたの?」
「こんな目にあわせるなんて、俺っ、最低だ!!」
「なんのこと?景吾はなんにもわるいことしてないよ?わるいのはぼくでしょ?」
「そんなわけないだろ!?こんなボロボロになるまで放ったらかして、傷つけて!俺、お前の番なのに……ッ!!」
「景吾……あやまらなくていいよ。大丈夫だよ。もう、迷惑かけないからね?」
「和葉……?」
穏やかに言う和葉に、景吾は困惑した表情を浮かべる。
「もう、大丈夫だよ。ひとりでへいき。心配しないで、お仕事戻っていいから」
「なに、言って、」
「だってぼくのこともういらないでしょ?大丈夫、おくすり飲んでるから、体もなんともないよ?景吾いなくても、平気だから、ね?」
「か、ずはっ……!」
それは防衛本能かなんなのか。
まるで自分を拒絶するような言葉に、景吾は驚きと恐怖で言葉を無くす。
慌てて医者に訊ねれば、厳しい顔で告げられる。
「番が苦しい時、辛い時。本来なら貴方が包み込んで愛してあげなければいけないのに、貴方はそれを怠った。愛情不足になった彼は『番に捨てられた』という恐怖で死にそうになり、そうして自分の身を守るため、心が壊れてしまったんだと思いますよ。どちらが悪いとは言いません。ですが、こうなってしまった原因の一端は、貴方にあります」
「そんな、俺は和葉を捨てたりなんかッ」
「貴方はそのつもりでも、彼はおそらくそう捉えています。そうでなければこんなことにはなっていないと思いますが。……貴方が彼を見つけた時、どんな様子だったか、よく思い出してください」
「……」
景吾は、和葉の病室まで歩きながら思い返す。
家に帰ると、発情期だというのに和葉の匂いがあまりしなかった。不思議に思って寝室に行くけれど、そこに姿は無い。今までなら巣作りをしていたはずなのに。焦って家中を探して、脱衣室に行けば、そこには硬い床に横たわる、青白い顔をした和葉の姿が。
抱き起こせば体は冷たく、震えが止まらない。自分のフェロモンを出してみても、それに反応すらしない。
……最愛の番が、死んでしまうと思った。
「俺は、なんてことを……ッ」
病室の前、廊下に立ち尽くして泣いていた。
笑った顔が大好きで、不安症で甘えたで、少しめんどくさいけど、そこも全部可愛くて。一生大切にしたくて番になって、結婚もしたのに。
仕事が忙しくなったからって、蔑ろにして冷たく当たって。
その結果が、コレだ。
「あんなこと言わずに、さっさと帰ってたら」
『発情期がきた』というメッセージを受け取った時、一瞬悩んだのだ。ちゃんと和葉のことは愛しているから、ヒート休暇も取るつもりだった。けれど、大事な仕事があるのも確かで。これを終わらせたら帰るつもりだった。でも……。
「番より、大事なものなんてないのに……っ!!」
仕事なんて誰かに頼んで、唯一無二の番のため、帰宅するべきだったのだ。
今更後悔したって遅い。和葉は、死にそうなくらい傷ついたのだから。
景吾は涙を拭いて病室に入る。
その音に、ベッドに横になったまま和葉が振り向いた。
「あ、景吾。おかえり」
「ッ、ただいま」
「用事は済んだ?」
「あぁ」
「そっか。なら、もう帰っていいよ?僕は大丈夫だから」
「和葉……」
「どうしたの?どこか痛い?泣きそうな顔してるけど……」
「ゴメン、ごめんな和葉!俺、帰らないよ。ずっとここにいる。和葉のそばに居るから!!」
「…………なんで?」
「俺は、和葉の番だから」
「番、だからって、べつに、一緒にいなくて、いいんだよ?」
「そんなことない。一緒にいなきゃダメ……ううん。俺が、和葉と一緒にいたいんだ」
「そんなの、うそ……だよ」
「嘘じゃない」
「ッうそ!だって、帰ってきてくれなかった!いつも、僕が「好き?」って聞いたら、面倒くさそうにしてた!!お料理も掃除も洗濯も、僕が下手くそで失敗する度、疲れた顔してた!!……っ、僕がいたら、景吾、辛そうだもん。もう、僕のことなんて、嫌いにーー」
「なるわけないッ!!俺が、和葉のこと嫌いなんて、そんなことあるわけないだろ!!お前は俺の、たった一人の、世界で一番大切な番、なんだからっ!!」
「けいご……っ!!う、わぁぁあ!!こわ、怖かった!悲しかったよぉ!!」
……二人は抱きしめあって、それから涙がかれるまで泣いた。
その日は互いに離れたくなくて、医者に許可をとって、同じベッドで抱き合って眠った。
数日間は様子で入院することになったけれど、その間中、景吾はずっと和葉のそばにいて、片時も離れなかった。
退院してからも、離れるのを怖がった和葉の望むまま、一日中バクをしてキスをして愛の言葉を囁いて。彼が安心するまで何でもした。
その間仕事は休むことになったけれど、仕事なんかより番が大事だからと、気にもしなかった。
そうしてひと月ほど時間をかけて、ようやく元の生活に戻れるようになったのだった。
「いっぱい迷惑かけてごめんね」
和葉は、申し訳なさそうに言う。
「迷惑なんてかけられてない。俺が望んでやった事だ」
「でも、お仕事……」
「そんなのどうでもいい。お前が元気に笑ってくれるようになっただけで、それだけでいいんだ」
「景吾……」
「和葉、愛してる。もう二度と傷つけないから。約束する。だから和葉も約束してくれ」
「なにを?」
「辛かったり、苦しかったりする時、どんな些細なことでもいいから連絡して。どんな時でも飛んで帰ってくるから。1人で我慢しないで。お願い」
「でも、それじゃ景吾に迷惑かけちゃう」
「迷惑なんかじゃないって。どんなことより、物より、俺は和葉が大切だから。もしそれで仕事がなくなっても、俺は構わない。和葉が辛い時、そばにいれない方が俺は嫌だ。だからお願い、約束して」
「…………ん。わかった。約束、する」
額を合わせて、鼻と鼻を擦り合わせて。ぼやけてしまうくらい近くで瞳を見つめあって、それから静かにキスをする。
ーーこうして愛を再確認した二人。
付き合い始めの頃のように、好き、愛してると言い合って、些細なことで笑いあって。幸せな日々を過ごして、そうして数ヵ月後にはまた発情期を迎える。
今度はお互いきちんと予定日を確認、それにあわせて景吾も休みを取り、ヒートが始まった最初から最後まで、ずうっと和葉を、甘やかして愛してお世話した。
すっかりさっぱりあの時の不安を取り除くことが出来た二人。
それから数ヵ月後には、新しい命と巡り会うのだった。
破局危機を乗り越えた番のお話。
幼なじみ美形α×不安症平凡Ω。
CP名:岩崎景吾×能勢和葉
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