ギャルゲーの脇役、情報通な彼に転生してしまった!~こうなったらヒロインの一人位は絶対に確保する!~

GARUD

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 入学式翌日
 俺は佳子ちゃんと仲良く電車通学をキメる事に成功した。
 こっそりとお互いの母親がついて来ていたが、佳子ちゃんは俺が手を握っているからか、らんらんるー♪と上機嫌で尾行には一切気が付いていないみたいだったから俺も気が付いていないフリをしておいた。佳子ちゃんマジ天使。
 こら誰だ!今俺の事をロリコンと言った奴前へ出ろ!

 そして学校に着いた俺は、もういいだろうと繋いだ手を離そうと力を緩め……あれ?!ちょっと佳子ちゃん!手を握らない!離すのです!えっ?ちょっ?!引っ張らないで~!

 俺は手を繋いだまま、佳子ちゃんに引っ張られるようにクラスの前に到着。
 そのまま片手でガラガラと音を立てて扉を開ける佳子ちゃん。
 だがしかし、俺と佳子ちゃんは出席番号という壁に阻まれ、席が離れ離れになっている。
 俺はそれ幸いにと自分の机にランドセルを掛けて椅子に座ると、佳子ちゃんはすかさず自分の席にランドセルを置くと、風の速さで俺の横の席に座った。佳子ちゃん、そこは君の席ではありませんよ?
 と佳子ちゃんが俺の横の子の席をぶんどって居座ろうとしたその時──

「そこはわたしのせきなの。どいてくだちゃいます?」

 凛とした鈴の音のような声が佳子ちゃんの背後から聞こえた。
 そこには一人の女の子が立っていた。

 《十条雫》

 そう、俺の隣の席は偶然にも出席番号が佐藤である俺の次になったのは十条雫。ゲーム愛友学園に出てくる攻略ヒロインの一人である。

「やー!わたしゆぅくんのとなぃがいいんだもん!」
「そこはわたしのせき……」
「よしこしらない!」
「ぅぅぅ……」

 佳子ちゃんの剣幕と力技に涙目になる十条雫。あれ?こいつゲームだと高飛車なお嬢様な感じで負けん気も強かったイメージだったんだが……そんなキャラが何故にこの程度で涙目になるんだ?

 俺は自分の中にあったゲーム愛友学園の十条雫のイメージと目の前の十条雫が余りにも掛け離れている事に疑問を覚えつつも、取り敢えず今にも泣き出しそうな十条雫と周りから反感を買いそうな佳子ちゃんを諌めなければならない。

「佳子ちゃん。もう直ぐ先生も来るよ?ここに座ってたら怒られるから一度自分の席に戻った方がいいよ。後で俺がそっちに行くからさ」
「う~……しょーがにゃいにゃぁ~。それでいいよ」

 佳子ちゃんはそう言うと占拠した椅子から立ち上がる。こうやって俺の話は素直に聞く所は可愛らしいなぁ……おい誰だズボンを降ろした奴!相手は小学生だからな?え?小学生は最高ですって?お巡りさんこの人です~
 ってそうじゃない!ここは佳子ちゃんにビシ!と言っておかないと!
 俺は佳子ちゃんを見つめて口を開く。

「佳子ちゃん。他の人の椅子を勝手に使ったんだからゴメンねしなきゃダメだよ」
「ごめんなさい」

 佳子ちゃんは俺に注意され、十条雫に向かって素直に頭を下げるとテテテと自分の机に向かって行った。
 涙目だった十条雫はグスッと鼻を啜ると空いた自分の椅子に座った。
 俺は横に座った十条雫に優しく声を掛ける。

「ゴメンね?佳子ちゃんを怒らないであげてね?」

 突然横の男の子に声を掛けられて驚いたのか、ビク!と震える十条雫。
 震える十条雫に、これはもう別人なんじゃないのか?と思い、俺はゲームで十条雫を泣かせたイベントに出てくる選択肢を思い出していた。

 1.泣いた顔も可愛いよ
 2.納豆のパッケージみてーな顔すんなよ!
 3.黙って頭をポンポンする

 この内の3番を選ぶと「なッ!私の頭を叩くだなんて!万死に値しますわ!」と怒りを買い、BADエンド直行になるという、罠のような選択肢だ。
 ちなみに正解の選択肢は、まさかの2番。
 選ぶと「なんであなたに怒られるんですか?!納得行きませんわ!」と言われ、主人公は「納豆だけに?」と切り返す。
 すると何故かそこから笑い合い、十条雫に下の名前を呼んで貰えるようになるというトンデモ選択肢なのだ。
 俺はこの2番を避けたせいで十条雫エンドを見るのに3周させられたんだぜ……制作会社に呪いあれ……
 1番はどうなるんだって?「私が可愛いのは当然です!」と3番同様更に怒られて『モテないモブ男達の鎮魂歌』行きだ。
 ここで現実に戻った俺は、目の前の涙目でビクついている十条雫を見て……よし、ここは一つ3番の頭ポンポンを試してみるか!これで怒ったら本物認定ってことで。

 俺は隣に手を伸ばし、十条雫の頭を優しくポンポンと叩いた。 

「ぅ……」
「大丈夫。怖くない~怖くない~」

 最初こそビクッ!となって縮こまっていた十条雫だが、俺が優しく頭を撫でながら声をかける内に、徐々に緊張が解けてきたのか、頬を緩ませ始める。
 やっと俺の方を向いた十条雫に、俺はニコリと微笑みながら自己紹介をする。

「俺は佐藤祐也。よろしくね」

 すると、十条雫はボン!と音が聞こえる位に顔を急激に真っ赤に染め、あわあわと慌てて自分の名前を名乗った。

「わわ!わたしゅは!じゅーじょーしずくでし!」
(あっ……噛んだ)
「あのあの……ゆーやさまとよんでもいいですか?」

 なにこの可愛い生物!あのワタクシが一番ですわ!オーッホッホッホ!と高笑いを上げるお嬢様キャラは何処に置いて来たんだ?!
 なんて俺が驚愕していると、目の前の十条雫は瞳を潤ませて再び泣きそうになっている。

「あの……おいやでしたか……」

 グスッと鼻を啜る音に俺は慌てて返事をする。

「嫌じゃないよ!よろしくね!十条さん!」
「しずくってよんでくだしゃい!」
「わかったよ。しずくちゃん」

 俺に名前で呼ばれてデヘッとだらしない笑みを浮かべる雫ちゃん。可愛いんだが……誰だよお前!マジで同姓同名の偽物じゃないのか?!
 こら佳子ちゃん!こっち見て「ぐぬぬぬ」とか言わない!阿修羅像みたいな顔になってるから!
 その後、初登校を終えて帰りの電車の中、佳子ちゃんと椅子に並んで座り、降りる駅に着くまでの間、頭をずっと撫でさせられたのは言うまでもないよな?
 
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