21 / 39
18
しおりを挟む
南條紫織が転校してきてから一ヵ月が経った頃……
「学芸会は桃タロスです。これからみんなで役を決めていきましょう」
教壇に立つ先生の言葉に、クラスのみんなが元気よく返事を返し、配役を自薦他薦で決めていく。
昔話【桃タロス】
俺は各自に配られた昔話のコピーを手にとって読み始めた。
昔々、あるところに、山に住んでいた老夫婦が居ました。
今日もお爺さんは山に日課の獣人探しに
お婆さんは川に日課の人魚探しにと出かけました。
お婆さんが川に潜って人魚を探していると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと頭上を通り過ぎていくではないか。
お婆さんは海女さんも真っ青な泳ぎで桃を掴み取った。
「おおきい桃だねぇ。お爺さんに見せてあげなきゃ」
お婆さんは大きな桃を両手で抱えてスキップしながら家に帰宅しました。
「お爺さんお爺さん。見ておくれ、大きな桃だよ」
「おお!お婆さん!これは食べ応えがありそうだ。どれ、斬ってみよう」
お爺さんは昔取った杵柄と、西洋剣を構えて桃に向かって斬りつけます。
すると、桃は真っ二つに割れ、中から鬼のような形相をした男の子が現れたのです。
「おお!なんと凛々しく男らしい男の子か!」
「お爺さんや、この男の子に名前を付けましょう」
「そうだな。よし、桃から産まれたから桃タロスと名付けよう」
こうして桃タロスと名付けられた子はすくすくと育ち──
「爺!婆婆!俺はこれから鬼ヶ島に噂の鬼退治に行ってくるぜ!」
「おお!桃タロスよ、立派になって……」
「桃タロスや、お婆さんが作ったきび団子を持って行きなさい」
こうして桃タロスは旅に出るのでした。
「チッ…なにがきび団子だよ。普通旅立ちなんだなら金だろうよ」
桃タロスはきび団子をムシャムシャと食べながら川沿いを歩いていると、一人の女の子が川で水浴びをしているのに気が付き、桃タロスは声をかけました。
「おい、そこの女。海はどっちだ?」
「海ならこのまま川を降って行けば着くわ」
「そうか」
「ねぇ?その食べてるお団子美味しそうね?一つちょうだいよ」
「あ?やだよ」
「いいじゃん団子くらい!ケチ!」
「あぁ?煩え女だな。んじゃ、団子やる代わりに俺に付いて来いよ」
「え~……あんた何処に向かってるのよ?」
「鬼ヶ島に鬼退治だ」
「なにそれ!面白そう!嫌って言っても着いていくわ!」
「お……おぅ」
「あ、私、浦コよ!こう見えても人魚なの!」
「人魚……ホントに居たのか。婆婆……ボケてたんじゃねーんだな……」
こうして人魚の浦コを仲間にした桃タロスは川を下り、一路鬼ヶ島を目指すのであった。
「続編ものかよおおおおお!」
「ゆッ?ゆーやさま?!」
俺が突然立ち上がって叫んだ事に、クラスのみんなが一斉にこっちを向いた。
雫ちゃんは真横に座っていたので大層驚いていた。すまぬ……
「えっと……佐藤くんは桃タロスに立候補……と」
「え?」
俺が呆然と立ち尽くす中、先生はサッサと黒板に俺の名前を書く。
「次は人魚の役ね~。だれかやりたい人は居るかな~?」
ああ、俺の桃タロスは決定ですね。と俺がスゴスゴと椅子に座る中、教室内には嫌な静けさが充満していた。
クラス内の幼女達が視線をソワソワと辺りに散らし、まるでお互いを牽制するような気配を醸し出している。
「あれれ~人魚をやりたい子は居ないのかな~?南條さんはやってみたりしたくない?」
のほほんとした先生の言葉に幼女達は首をグリン!と回すとグワッ!と一斉に南條紫織に視線を向けた。
発せられた殺気にクラス内の男子達はガクブルと身を震わせて縮こまっている。
まるで射殺さんばかりの視線が向かう中、南條紫織が口を開いた。
「わたし、さとうくんとうわさされるのいやだから、にんぎょやらない」
あ、そうですか……そりゃそうですよね。
あなたは出現しただけで好感度稼ぐイベントなんてこの一月一個もありませんでしたもんね。ま、ゲーム内の彼女は親しくならないと心を開いてくれない、当然一緒に何かをしてくれる事もない。つまりこれは当然の結果というわけだ。
それにしてもゲームと変わらないセリフに俺はびっくりだよ。
俺が、うんうんと頷き、達観している中……クラス内の全幼女達から、決して聞いたり聞こえたりしてはいけない、ドス黒い声が聞こえた。
後に語られる第一次南條紫織戦争の勃発であった──
「学芸会は桃タロスです。これからみんなで役を決めていきましょう」
教壇に立つ先生の言葉に、クラスのみんなが元気よく返事を返し、配役を自薦他薦で決めていく。
昔話【桃タロス】
俺は各自に配られた昔話のコピーを手にとって読み始めた。
昔々、あるところに、山に住んでいた老夫婦が居ました。
今日もお爺さんは山に日課の獣人探しに
お婆さんは川に日課の人魚探しにと出かけました。
お婆さんが川に潜って人魚を探していると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと頭上を通り過ぎていくではないか。
お婆さんは海女さんも真っ青な泳ぎで桃を掴み取った。
「おおきい桃だねぇ。お爺さんに見せてあげなきゃ」
お婆さんは大きな桃を両手で抱えてスキップしながら家に帰宅しました。
「お爺さんお爺さん。見ておくれ、大きな桃だよ」
「おお!お婆さん!これは食べ応えがありそうだ。どれ、斬ってみよう」
お爺さんは昔取った杵柄と、西洋剣を構えて桃に向かって斬りつけます。
すると、桃は真っ二つに割れ、中から鬼のような形相をした男の子が現れたのです。
「おお!なんと凛々しく男らしい男の子か!」
「お爺さんや、この男の子に名前を付けましょう」
「そうだな。よし、桃から産まれたから桃タロスと名付けよう」
こうして桃タロスと名付けられた子はすくすくと育ち──
「爺!婆婆!俺はこれから鬼ヶ島に噂の鬼退治に行ってくるぜ!」
「おお!桃タロスよ、立派になって……」
「桃タロスや、お婆さんが作ったきび団子を持って行きなさい」
こうして桃タロスは旅に出るのでした。
「チッ…なにがきび団子だよ。普通旅立ちなんだなら金だろうよ」
桃タロスはきび団子をムシャムシャと食べながら川沿いを歩いていると、一人の女の子が川で水浴びをしているのに気が付き、桃タロスは声をかけました。
「おい、そこの女。海はどっちだ?」
「海ならこのまま川を降って行けば着くわ」
「そうか」
「ねぇ?その食べてるお団子美味しそうね?一つちょうだいよ」
「あ?やだよ」
「いいじゃん団子くらい!ケチ!」
「あぁ?煩え女だな。んじゃ、団子やる代わりに俺に付いて来いよ」
「え~……あんた何処に向かってるのよ?」
「鬼ヶ島に鬼退治だ」
「なにそれ!面白そう!嫌って言っても着いていくわ!」
「お……おぅ」
「あ、私、浦コよ!こう見えても人魚なの!」
「人魚……ホントに居たのか。婆婆……ボケてたんじゃねーんだな……」
こうして人魚の浦コを仲間にした桃タロスは川を下り、一路鬼ヶ島を目指すのであった。
「続編ものかよおおおおお!」
「ゆッ?ゆーやさま?!」
俺が突然立ち上がって叫んだ事に、クラスのみんなが一斉にこっちを向いた。
雫ちゃんは真横に座っていたので大層驚いていた。すまぬ……
「えっと……佐藤くんは桃タロスに立候補……と」
「え?」
俺が呆然と立ち尽くす中、先生はサッサと黒板に俺の名前を書く。
「次は人魚の役ね~。だれかやりたい人は居るかな~?」
ああ、俺の桃タロスは決定ですね。と俺がスゴスゴと椅子に座る中、教室内には嫌な静けさが充満していた。
クラス内の幼女達が視線をソワソワと辺りに散らし、まるでお互いを牽制するような気配を醸し出している。
「あれれ~人魚をやりたい子は居ないのかな~?南條さんはやってみたりしたくない?」
のほほんとした先生の言葉に幼女達は首をグリン!と回すとグワッ!と一斉に南條紫織に視線を向けた。
発せられた殺気にクラス内の男子達はガクブルと身を震わせて縮こまっている。
まるで射殺さんばかりの視線が向かう中、南條紫織が口を開いた。
「わたし、さとうくんとうわさされるのいやだから、にんぎょやらない」
あ、そうですか……そりゃそうですよね。
あなたは出現しただけで好感度稼ぐイベントなんてこの一月一個もありませんでしたもんね。ま、ゲーム内の彼女は親しくならないと心を開いてくれない、当然一緒に何かをしてくれる事もない。つまりこれは当然の結果というわけだ。
それにしてもゲームと変わらないセリフに俺はびっくりだよ。
俺が、うんうんと頷き、達観している中……クラス内の全幼女達から、決して聞いたり聞こえたりしてはいけない、ドス黒い声が聞こえた。
後に語られる第一次南條紫織戦争の勃発であった──
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる