ギャルゲーの脇役、情報通な彼に転生してしまった!~こうなったらヒロインの一人位は絶対に確保する!~

GARUD

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 南條紫織が転校してきてから一ヵ月が経った頃……

「学芸会は桃タロスです。これからみんなで役を決めていきましょう」

 教壇に立つ先生の言葉に、クラスのみんなが元気よく返事を返し、配役を自薦他薦で決めていく。

 昔話【桃タロス】
 俺は各自に配られた昔話のコピーを手にとって読み始めた。



 昔々、あるところに、山に住んでいた老夫婦が居ました。
 今日もお爺さんは山に日課の獣人探しに
 お婆さんは川に日課の人魚探しにと出かけました。
 お婆さんが川に潜って人魚を探していると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと頭上を通り過ぎていくではないか。
 お婆さんは海女さんも真っ青な泳ぎで桃を掴み取った。

「おおきい桃だねぇ。お爺さんに見せてあげなきゃ」

 お婆さんは大きな桃を両手で抱えてスキップしながら家に帰宅しました。

「お爺さんお爺さん。見ておくれ、大きな桃だよ」
「おお!お婆さん!これは食べ応えがありそうだ。どれ、斬ってみよう」

 お爺さんは昔取った杵柄と、西洋剣を構えて桃に向かって斬りつけます。
 すると、桃は真っ二つに割れ、中から鬼のような形相をした男の子が現れたのです。

「おお!なんと凛々しく男らしい男の子か!」
「お爺さんや、この男の子に名前を付けましょう」
「そうだな。よし、桃から産まれたから桃タロスと名付けよう」

 こうして桃タロスと名付けられた子はすくすくと育ち──

「爺!婆婆!俺はこれから鬼ヶ島に噂の鬼退治に行ってくるぜ!」
「おお!桃タロスよ、立派になって……」
「桃タロスや、お婆さんが作ったきび団子を持って行きなさい」

 こうして桃タロスは旅に出るのでした。

「チッ…なにがきび団子だよ。普通旅立ちなんだなら金だろうよ」

 桃タロスはきび団子をムシャムシャと食べながら川沿いを歩いていると、一人の女の子が川で水浴びをしているのに気が付き、桃タロスは声をかけました。

「おい、そこの女。海はどっちだ?」
「海ならこのまま川を降って行けば着くわ」
「そうか」
「ねぇ?その食べてるお団子美味しそうね?一つちょうだいよ」
「あ?やだよ」
「いいじゃん団子くらい!ケチ!」
「あぁ?煩え女だな。んじゃ、団子やる代わりに俺に付いて来いよ」
「え~……あんた何処に向かってるのよ?」
「鬼ヶ島に鬼退治だ」
「なにそれ!面白そう!嫌って言っても着いていくわ!」
「お……おぅ」
「あ、私、浦コよ!こう見えても人魚なの!」
「人魚……ホントに居たのか。婆婆……ボケてたんじゃねーんだな……」

 こうして人魚の浦コを仲間にした桃タロスは川を下り、一路鬼ヶ島を目指すのであった。



「続編ものかよおおおおお!」
「ゆッ?ゆーやさま?!」

 俺が突然立ち上がって叫んだ事に、クラスのみんなが一斉にこっちを向いた。
 雫ちゃんは真横に座っていたので大層驚いていた。すまぬ……

「えっと……佐藤くんは桃タロスに立候補……と」
「え?」

 俺が呆然と立ち尽くす中、先生はサッサと黒板に俺の名前を書く。

「次は人魚の役ね~。だれかやりたい人は居るかな~?」

 ああ、俺の桃タロスは決定ですね。と俺がスゴスゴと椅子に座る中、教室内には嫌な静けさが充満していた。

 クラス内の幼女達が視線をソワソワと辺りに散らし、まるでお互いを牽制するような気配を醸し出している。

「あれれ~人魚をやりたい子は居ないのかな~?南條さんはやってみたりしたくない?」

 のほほんとした先生の言葉に幼女達は首をグリン!と回すとグワッ!と一斉に南條紫織に視線を向けた。
 発せられた殺気にクラス内の男子達はガクブルと身を震わせて縮こまっている。
 まるで射殺さんばかりの視線が向かう中、南條紫織が口を開いた。

「わたし、さとうくんとうわさされるのいやだから、にんぎょやらない」

 あ、そうですか……そりゃそうですよね。
 あなたは出現しただけで好感度稼ぐイベントなんてこの一月一個もありませんでしたもんね。ま、ゲーム内の彼女は親しくならないと心を開いてくれない、当然一緒に何かをしてくれる事もない。つまりこれは当然の結果というわけだ。
 それにしてもゲームと変わらないセリフに俺はびっくりだよ。
 俺が、うんうんと頷き、達観している中……クラス内の全幼女達から、決して聞いたり聞こえたりしてはいけない、ドス黒い声が聞こえた。

 後に語られる第一次南條紫織戦争の勃発であった──



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