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2月に入ったある休日の朝、刺すような寒さに窓を開けて外を見ると、あたり一面に雪が積もっていた。
「雪だァァァァ!」
俺は決してはしゃいだり、寝間着のまま外に飛び出したり、あまつさえ積もっていた新雪を掴んで頬張ったりなんて絶対にしないんだからな?!
「裕くん。お洋服に着替えてからにしなさいね。風邪ひいちゃうから~」
「そうだぞ裕也。あと雪は食べちゃダメだぞ?汚いからな」
そうやって両親は注意しつつもサンダルでヒャッハーしている俺を暖かい目で見守ってくれている。
あ?別にはしゃいでなんかねーぞ?なんだ文句あんのか?
俺は部屋に戻って着替えると、早速バケツを持って外に出る。
バケツに雪をぎゅうぎゅうに詰めてはひっくり返してを繰り返し、水を軽く掛けて雪を氷に変える。
それを学校で使う彫刻刀でザクザクと形を整えて行く。
そうやって約2時間程、一心不乱に雪を氷にして削り出す作業をこなした結果──
「完成ー!」
我が家の庭にヨーロッパ風の城のミニチュアが出来上がったのだ。
「すごいの出来たね~」
庭には、パチパチと拍手をして笑顔を向けている母親と、三脚立ててビデオカメラを回している父親が居た。
「うむ。久々のネタか。タイトルは小学一年生が雪でヨーロッパ風のお城を建造?!だな」
どうやら父親は相変わらずのようだ。
城制作が一息付き、家に入ってご飯を食べる。
お雑煮って冷えた体に染み込むよな。
翌日、何時ものように佳子ちゃんが家に迎えに来て、庭の城に驚いていた。
「しんきょがたってる!ゆぅくんとおしろで……はぅ~」
佳子ちゃんは何故かほっぺに両手を添えて腰をクネクネしながら「あたしにする?わたしにする?それともよしこ?」等とトリップしている。どうやら変な薬をキメて来たらしい。
なかなか現実に戻ってこない佳子ちゃんを引きずるようにして駅に向かう、そして学校の最寄り駅に降りると、そこには何時ものように雫ちゃんが待っていた。
「雫ちゃん。おはよ!」
「おはようございます。ゆーやさま……なんでよしこちゃんをひきずってるの?」
「ん?ああ……俺が家の庭に雪でヨーロッパ風の城を建てて置いたんだけど、朝迎えに来た佳子ちゃんが、それを見た後ずっとこんな感じで……」
「おしろ?!」
「でへへ……ゆぅくんとのしんきょ~おしろでぶとうかい~……」
「む~……ゆーやさま!わたしもみたいです!」
「あー……今日ならまだ溶けないとは思うけど……どうしようか……」
「でしたら、私めが車にて三人を裕也様の家まで送りましょう」
「おわ!実松さん居たの?!」
「執事ですから」
俺がどうしようか悩んで居たら、いつの間にか俺の背後に立っていた十条家執事兼運転手の実松さん。執事っていつから当然のように他人の背後を取るような仕事になったのだろう。
「それは助かるけど、雫ちゃんは今日は習い事ないの?」
「ぅぅ……ピアノが……」
「お嬢様、お稽古でしたら時間をずらして貰えますので、少々の寄り道なら問題ございません」
「ホント?!わーい!やったー!」
「あはは。良かったね雫ちゃん」
「はい!」
ニッコリと大輪の華のような笑顔ではしゃいでいる雫ちゃんの頭を撫で、手を繋ぐと俺達は未だ戻ってこない佳子ちゃんを後ろ手で引き摺りながら学校に向かった。
授業も終わる頃には佳子ちゃんの頭も通常営業に戻り、俺達三人は車で送ってもらった。
車が我が家に着き、飛び出した雫ちゃんが我が家の庭にそびえ建つ城を見てうっとりとする。
「ゆーやさまとけけけけっこんしきしなきゃ!さねまつー!しんぷさん!」
「畏まりました」
「雫ちゃん?!」
「ゆぅくんはわたしのだからダメー!」
「佳子ちゃん?!俺は俺のだから!」
「ゆーやさまばーじんろーどに!」
「雫ちゃんは何処でそんな言葉覚えたの?!」
「ゆぅくんとばーじんろーどあるくのはわたしなのー!」
「佳子ちゃんも落ち着いて?!」
「汝、病めると時も、健やかな時も~」
「実松さん!おいこらー!」
「ゆーやさま……ちかいのキスを……」
「しないよ?!」
「そーよ!ゆぅくんはわたしとちかいのキスするんだから!はい、ゆぅくん……ん~」
「だからどっちともしないから!こら執事!いい加減笑って見てないで助けろよ!」
「お嬢様、わたくしが裕也様を抑えている内に!」
「あぁぁぁ!状況が悪化した!」
結局、雫ちゃんと佳子ちゃんの二人からほっぺにチョンとキスを貰った所で雫ちゃんのお稽古の時間となり解散となった。
その夜の夕食の時間、何故かその結婚式もどきの動画が家の大画面モニターで流れていた……
「うふふ。もう裕くんは二人ともお嫁さんにするしかないわね~」
「うむ。そうなれば父は働かずして左団扇だな!がはは!」
「あ、裕くん。佳子ちゃんと雫ちゃんの家にDVD郵送しといたわよ~」
後日、DVDを観て我が家に突撃してきた零士と佳子パパが鉢合わせした。すわ一触即発か?!
「雫とお前が結婚なぞ断じて許さん!」
「裕也君!佳子以外と結婚なぞ断じて許さないよ!」
「「え?」」
結果、バトルは勃発しなかった。
犬猿の仲と言っていた二人が争うどころか何故か固く握手して去っていったよ……
「雪だァァァァ!」
俺は決してはしゃいだり、寝間着のまま外に飛び出したり、あまつさえ積もっていた新雪を掴んで頬張ったりなんて絶対にしないんだからな?!
「裕くん。お洋服に着替えてからにしなさいね。風邪ひいちゃうから~」
「そうだぞ裕也。あと雪は食べちゃダメだぞ?汚いからな」
そうやって両親は注意しつつもサンダルでヒャッハーしている俺を暖かい目で見守ってくれている。
あ?別にはしゃいでなんかねーぞ?なんだ文句あんのか?
俺は部屋に戻って着替えると、早速バケツを持って外に出る。
バケツに雪をぎゅうぎゅうに詰めてはひっくり返してを繰り返し、水を軽く掛けて雪を氷に変える。
それを学校で使う彫刻刀でザクザクと形を整えて行く。
そうやって約2時間程、一心不乱に雪を氷にして削り出す作業をこなした結果──
「完成ー!」
我が家の庭にヨーロッパ風の城のミニチュアが出来上がったのだ。
「すごいの出来たね~」
庭には、パチパチと拍手をして笑顔を向けている母親と、三脚立ててビデオカメラを回している父親が居た。
「うむ。久々のネタか。タイトルは小学一年生が雪でヨーロッパ風のお城を建造?!だな」
どうやら父親は相変わらずのようだ。
城制作が一息付き、家に入ってご飯を食べる。
お雑煮って冷えた体に染み込むよな。
翌日、何時ものように佳子ちゃんが家に迎えに来て、庭の城に驚いていた。
「しんきょがたってる!ゆぅくんとおしろで……はぅ~」
佳子ちゃんは何故かほっぺに両手を添えて腰をクネクネしながら「あたしにする?わたしにする?それともよしこ?」等とトリップしている。どうやら変な薬をキメて来たらしい。
なかなか現実に戻ってこない佳子ちゃんを引きずるようにして駅に向かう、そして学校の最寄り駅に降りると、そこには何時ものように雫ちゃんが待っていた。
「雫ちゃん。おはよ!」
「おはようございます。ゆーやさま……なんでよしこちゃんをひきずってるの?」
「ん?ああ……俺が家の庭に雪でヨーロッパ風の城を建てて置いたんだけど、朝迎えに来た佳子ちゃんが、それを見た後ずっとこんな感じで……」
「おしろ?!」
「でへへ……ゆぅくんとのしんきょ~おしろでぶとうかい~……」
「む~……ゆーやさま!わたしもみたいです!」
「あー……今日ならまだ溶けないとは思うけど……どうしようか……」
「でしたら、私めが車にて三人を裕也様の家まで送りましょう」
「おわ!実松さん居たの?!」
「執事ですから」
俺がどうしようか悩んで居たら、いつの間にか俺の背後に立っていた十条家執事兼運転手の実松さん。執事っていつから当然のように他人の背後を取るような仕事になったのだろう。
「それは助かるけど、雫ちゃんは今日は習い事ないの?」
「ぅぅ……ピアノが……」
「お嬢様、お稽古でしたら時間をずらして貰えますので、少々の寄り道なら問題ございません」
「ホント?!わーい!やったー!」
「あはは。良かったね雫ちゃん」
「はい!」
ニッコリと大輪の華のような笑顔ではしゃいでいる雫ちゃんの頭を撫で、手を繋ぐと俺達は未だ戻ってこない佳子ちゃんを後ろ手で引き摺りながら学校に向かった。
授業も終わる頃には佳子ちゃんの頭も通常営業に戻り、俺達三人は車で送ってもらった。
車が我が家に着き、飛び出した雫ちゃんが我が家の庭にそびえ建つ城を見てうっとりとする。
「ゆーやさまとけけけけっこんしきしなきゃ!さねまつー!しんぷさん!」
「畏まりました」
「雫ちゃん?!」
「ゆぅくんはわたしのだからダメー!」
「佳子ちゃん?!俺は俺のだから!」
「ゆーやさまばーじんろーどに!」
「雫ちゃんは何処でそんな言葉覚えたの?!」
「ゆぅくんとばーじんろーどあるくのはわたしなのー!」
「佳子ちゃんも落ち着いて?!」
「汝、病めると時も、健やかな時も~」
「実松さん!おいこらー!」
「ゆーやさま……ちかいのキスを……」
「しないよ?!」
「そーよ!ゆぅくんはわたしとちかいのキスするんだから!はい、ゆぅくん……ん~」
「だからどっちともしないから!こら執事!いい加減笑って見てないで助けろよ!」
「お嬢様、わたくしが裕也様を抑えている内に!」
「あぁぁぁ!状況が悪化した!」
結局、雫ちゃんと佳子ちゃんの二人からほっぺにチョンとキスを貰った所で雫ちゃんのお稽古の時間となり解散となった。
その夜の夕食の時間、何故かその結婚式もどきの動画が家の大画面モニターで流れていた……
「うふふ。もう裕くんは二人ともお嫁さんにするしかないわね~」
「うむ。そうなれば父は働かずして左団扇だな!がはは!」
「あ、裕くん。佳子ちゃんと雫ちゃんの家にDVD郵送しといたわよ~」
後日、DVDを観て我が家に突撃してきた零士と佳子パパが鉢合わせした。すわ一触即発か?!
「雫とお前が結婚なぞ断じて許さん!」
「裕也君!佳子以外と結婚なぞ断じて許さないよ!」
「「え?」」
結果、バトルは勃発しなかった。
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