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玲央side
しおりを挟む*玲央side**
昔、いつも俺のあとを必死に追う存在がいた。
戸籍上、そして事実上、俺の唯一の兄弟である小虎という弟だ。
やつと俺は二歳差だが、やつにはその二年の違いが大きかったのだろう。
俺のあとをついては目をキラキラと輝かせ、いつも「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と呼び、手を伸ばしていた。
その手が煩わしかった。
未発達な子供特有の高い声で呼ばれることも、この世界が眩いのだと輝かせる目も――いくら殴ってもついてくる図太い神経も、そのすべてが煩わしかった。
はじめて殴ったときそこに大した理由もなく、あるとするなら「うるさかったから」なんてものだったと思う。
だけど殴ったときには泣いていたやつがその夜、俺のところに来て「……一緒に寝てもいい?」なんてのたまった瞬間、俺の中でなにかが壊れた。
こいつは、俺に殴られてもついてくるのだ。
泣いても、痛くても、俺のあとをついてくる。
嫌悪、不快、唾棄(だき)、虫唾が、走る。
その日から俺がやつを殴ることになんの理由も疑問もなかった。
ただそこにやつがいて、へらへらと笑っている。――だから殴る。――なのについてくる。
気持ち悪い。
到底「じゃれあい」とは呼べない暴力がつづいたのは、俺が中学一年になるまでだった。
俺はいわゆる悪ガキと称されるカテゴリーに属しており、プライドだけは人一倍強いクソ親父はそんな俺を嫌っていた。
お袋は「やんちゃなくらいがちょうどいい」とか言って、俺の養育を放棄することはなかったが。
だから、なのだろう。
クソ親父とお袋が離婚するのに、時間など関係なかった。
俺はお袋に引き取られ、やつはクソ親父に引き取られる。
誰が家を買ったと思っている。そんなクソ親父の言葉に恐れる様子もなくお袋が言ったのは「言われなくても出て行きます」だった。
そして俺とお袋がその家を出るとき、そのときだった。
今もまだ俺のなにかを捕え、ずっと離さない過去の記憶が生じた瞬間は。
俺がお袋と家を出ると知ったやつはその日まで延々と泣きつづけた。行かないで、連れてって、側にいて。そんな幼稚な言葉をお袋にぶつけながら。
だけどそれが叶うことはなかった。
そして家を出るその日、見送りなどする気もないクソ親父が仕事に行って、目を真っ赤に腫らしたやつが玄関先で一人、俺とお袋を見つめていた。
うさぎのような目に嫌悪を覚えつつお袋と共に歩き出す。正直清々していた。これでやつから解放される、そんなことを思いながら。
きっと、魔がさした。
たいした思い出もない家のほうを、やつのほうを振り返ってしまった。
そこには本当に意味もなく、ただ自然と、ふと振り返っただけだった。
――だけどそこにいたのは、無表情なままこちらを見るやつの姿。
真っ赤な目を俺に集中させ、怒っているのか悲しんでいるのかも分からない、感情の読めないゾッとするような冷えた視線。
そのときはじめて、俺は弟に恐怖を覚えた。
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