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「よう、兄ちゃん。頑張れよ!応援してるぞ!」
「がんばってね」
「あいつらなんかガツンとやっちゃいな!」
「はい、ありがとうございます」
俺はすれ違う人たちからの声援に応えながら歩いていた。
それは、街の至る所に貼られたポスターが原因だった。
「・・・」
俺は一枚のポスターの前に立ち止まってその内容に目を通す。
俺と四十三人の男たち全ての顔が描かれた、俺たちが決闘を行うことを知らせる為のポスター。
対立していることを強調するように俺と四十三人の男たちが向かい合って描かれており、ポスターの面積の中で俺が占める割合が三で、四十三人の男たちが占める割合が七。
俺の方が半分以下の面積とはいえ、俺は一人だけなので物凄く目立つ。
今回の決闘の主役が俺であるかのように。
四十三人の男たちなど完全に脇役扱いであった。
それにしても、戦う場所の提供は仲裁とは言わないなんて言っておきながら、これはどういうつもりだろう?
このポスターには入場料まで記されているのだ。
完全に見世物じゃねえか!こんなのどう考えても仲裁じゃなくて興行だろ!
俺と四十三人の男たちの戦いを金を取って観客に見せようというのだから完全に興行だろう。
仲裁と言える要素などまるで感じられない。
まあ、俺たちもギルドに戦う場所の提供を求めていただけだったので非難はし辛いけどさ。
それはそうと、今回、俺は四十三人の男たちと戦うことになったけど、全員と一斉に戦う訳じゃない。
四十三人の男たちは、十四人、十四人、十五人、の三つのグループに抽選で振り分けられており、俺はそれらのグループと三回に分けて戦うのだ。
それぞれの戦いの間には長めの休憩時間が設けられていて、一人で戦う俺への配慮ということになっている。
これらのことは、治療体制を万全にする為だとか、人数が多過ぎることで動きが阻害されないようにする為の措置だとヨハンは言っていたけど、俺は違う気がする。
多分、一番の理由は入場料収入を増やす為だ。入場料は一つの戦い毎に必要なのだから。
これで四十三人と一度に戦わせるよりも三倍の入場料が得られるという訳である。
他に、屋台を出して飲み物や軽食を売ったりもするし、賭け事まで行うつもりのようだ。実に商魂逞しい。
冒険者ギルドではなく、商人ギルドなんじゃないかと疑ってしまうよ。
「はあー、見世物にされるのか・・・。まあ、観客の前でぶちのめせばあいつらも絡んでこなくなるかもな」
観客の前で十数人の集団が一人の人間に倒されたら恥ずかしいだろう。
俺に絡むことも少なくなるのではないだろうか。
「さて、俺も戦い方の練習をしておかないとな。観客の前で服とかズボンを切られるのは嫌だし」
例え相手が何人いようとこのチートボディーなら負けることなど考えなくていい。
ただ、チートなのは防御力だけなので攻撃を食らわないとは言えなかった。
だから、少しでも攻撃を回避する練習をしておきたい。
最初の戦闘でゴブリンにズボンを切られてしまった時のようにならない為に。
観客の前であの時みたいになるのは恥ずかし過ぎるからな。
「すみません、立ち止まってしまって」
俺はポスターから離れると、ブルータスと戯れていたイリーナさんに声を掛ける。
イリーナさんは五日後にある四十三人の男たちとの決闘の日まで、俺と男たちが諍いを起こさないか監視するようにギルドから依頼されて同行していた。
泊まっている宿が俺と一緒だし、騒ぎの時に居合わせて事情を知っているので都合がよかったから。
監視が目的とはいえ、イリーナさんと一緒に行動出来るのは凄く嬉しい。
決闘の日までじゃなく、ずっと一緒に行動してほしいんだけどな。
「気にするな。自分がそれだけでかでかと描かれていたら気になるって。取り敢えず、決闘が終わるまでは我慢するしかないな」
「はい・・・」
決闘のポスターについては迷惑なだけだ。
目立ちたいと思っていない者にとって、街中に自分の顔が貼り出されるという状況はかなり恥ずかしい。
落書きされているやつもあるし。
このポスターについては決闘の日までじゃなく、今すぐ剥がしていきたい。マジで。
「それで、今日はどこに行くんだ?」
「えーと、草原の方に行こうかと」
「ふーん、草原ね」
行き先が草原と分かってイリーナさんは訝しんでいるようだ。
草原は冒険者の糧になる獲物などが少ないからね。俺も狩りをするなら森に行くし。
今日は溜まってきた『不幸ゲージ』を消費する為に草原に行っておきたいのだ。ブルータスに会ってから行ってないので不幸ゲージが結構溜まってしまっているんだよ。
ただ、一つだけ不安があった。イリーナさんが監視として俺に同行していることだ。
『不幸解放』と言って訪れる不幸にイリーナさんを巻き込んでしまう可能性があった。
だからといって、やらない訳にもいかない。放置しておくと決闘の日までには不幸ゲージがフルになってしまうのが確実だから。
神様から小さな街なら壊滅すると言われている事態を招く訳にはいかない。
それに、イリーナさんは決闘の日までずっと同行することになっているし、それなら早目に済ましてしまう方が溜まった不幸が少ないので安全なんじゃないだろうかと思う訳ですよ。
「それじゃあ、行きましょうか」
「ああ」
「きゃん」
そうして、俺たちは草原へと向かった。
「すみません、イリーナさんはここで待っていてもらえますか?ここから見える範囲で行動しますので」
草原まで来たところで、俺はイリーナさんにそう告げる。
今から『不幸解放』を行うからイリーナさんには俺から離れておいてもらわないと。
絶対に巻き込む訳にはいかないから。
「何だ?用を足しに行くのか?それなら早く行ってこい。待っててやるから」
「いや、用を足しに行く訳じゃないんです・・・」
「ん?何か他に用があるのか?」
「はい。それで、イリーナさんには少しの間離れていてほしいんです」
「側にいたらダメなのか?」
「はい。危険だと思うので」
「危険か。魔法の練習でもするのか?」
「違いますけど」
「何をするつもりなんだ?」
「えーと、具体的なことは言えないのですけど、危険なことです」
不幸を呼ぶ体質で、溜まった不幸を解放するんですなんて言える訳がない。
頭がおかしい奴だと信じてもらえないか、俺の呼ぶ不幸に巻き込まれないように避けられるようになるかのどちらかになりそうだから。
「・・・事を始めてから距離を取るんじゃダメなのか?これでもそれなりに修羅場は潜っていて、自分の身に危険が及ぶかどうかの判断は出来るつもりだけど」
「すみません。イリーナさんにはどうしても離れていてほしくて・・・」
『不幸解放』で訪れる不幸はどんなものになるか分からないからな。実力がある人でも大丈夫とは言い切れないんだよ。
イリーナさんのプライドを傷付けるかもしれないけど、離れていてもらわないと。
「・・・そうか。分かった。ここで待っていればいいんだな。ただし、私の視界から消えた時はギルドに報告するからな」
「・・・分かりました」
うーん、『不幸解放』でイリーナさんの視界から消えてしまう可能性はあるんだよな。
でも、イリーナさんの視界から消えただけでは罪に問われることは無い。
だけど、冒険者ギルドや衛兵たちからの心証は悪くなるし、四十三人の男たちに何かあった時は俺が疑われることになるのは確実だ。
十分に注意しておかないとな。
「ブルータス、お前もここで待っていろよ。ついて来てもいいことないから」
「・・・」
「・・・そうか。まあ、お前は好きにすればいいさ」
一応、ブルータスにも『不幸解放』に巻き込まないようにここで待つように言ったけど、ブルータスは首を横に振って拒否してきた。
まあ、ブルータスは少々のことでは死にそうにないし、俺の命を狙っている存在でもある。俺の不幸に巻き込まれたとしても構わないか。こいつが俺の忠告を無視して自分で選んだ行動でもあるし。
そこまで俺と一緒にいたいのなら放っておこう。
『不幸解放』と言ったことで現れた魔物が、『不幸解放』と言って訪れる不幸に巻き込まれたらどうなるかちょっと気にもなるから。
「それじゃあ、ちょっと行ってきます」
「ああ」
こうして、俺とブルータスはイリーナさんから離れていく。
正直なところ、どこまで離れたらいいのか分からない。
多分、遠ければ遠い程『不幸解放』に巻き込む可能性は低いと思う。
「取り敢えず、このくらいでいいかな?」
俺はイリーナさんから三百メートル程離れた所で立ち止まる。
このくらい離れるとイリーナさんがかなり小さく見えるので巻き込む可能性は低いんじゃないだろうか。
まあ、どうしても不安は感じてしまうけど。
いつもより不幸ゲージが溜まっているのもあるから。
「それじゃあ、ブルータス、何が起こるか分からないから用心していろよ」
「?きゃん」
俺が用心しろと告げると、ブルータスはきょとんとしながら返事をした。
まあ、きょとんとしてしまうのも無理はない。ブルータスはまだ一度も俺が『不幸解放』と言うところに立ち会っていないのだから。
「不幸解放」
俺はイリーナさんの方を注視してそう言った。
今回に関していえば、一番肝心なのはイリーナさんを巻き込まないかどうかだからね。
どんな不幸が訪れるのか気にしている場合じゃないんです。
「ん?地鳴りか?」
小さく響くゴゴゴゴゴって音と共に僅かに地面が揺れている。
間違いなく『不幸解放』によって発生したものだ。
俺は一段と周囲を警戒する。
特にイリーナさんの周辺を。
ボコッ。
「うおおおお」
「きゃうぅぅぅん」
突然陥没する地面。俺は何とか縁の部分に捕まることが出来て開いた穴への落下は免れたが、ブルータスはなす術もなく落ちていった。
まあ、あいつなら落ちても無事だろう。風魔法も使えるし。そのうち上がってくるはずだ。
今はブルータスのことを考えるより地面の上に上がることを優先しよう。今のままだと俺も穴に落ちかねないし。
俺はそう考え、腕に力を込めて地面の上に上がろうとする。
「うおっ」
上がろうと腕に力を込めた瞬間、右足を何かに引っ張られた。
いや、足を引っ張っていると言うより、足に食い付かれているのか。太腿から下が無数の尖ったもので締め付けられて結構痛い。
俺はこの状況を何とかしようと食い付かれていない左足で蹴るけど効果が無く、右足を抜くことは出来なかった。
途中から『身体強化』を使ったけど同じだ。
どうにか引きずり込まれないように出来ているだけだった。
「くそっ」
何度も蹴り続けるけど、一向に離れない。
ぶら下がっている状態で力が入ってないからだと思う。
いっそのこと下に降りて戦う方がいいのではと思ったけど、その考えは即座に捨てた。
ゴブリンの集団がわらわらと湧いて出てきたのだ。
「レイジー!」
イリーナさんが俺の名前を叫びながら走ってくる。
穴に落ちかけの俺と、湧いて出てきたゴブリンたちを見て助けないといけないと思ったのだろう。こちらに向かって全力疾走していた。
こんな状況で下に降りたらイリーナさんがゴブリンたちに囲まれてしまう。
増え続ける一方で総数が把握出来ないゴブリンたちの前でそれは危険過ぎた。
「ストーンショット!」
イリーナさんの方に向かっていたゴブリンに魔法を放つ。
不安定な体勢な上に、足を引っ張られている為狙いが逸れてしまった。
でも、倒すことは出来たからいいだろう。
何より、大半のゴブリンが俺の方に向って来てくれたのがありがたい。これでイリーナさんの危険度がぐっと減る。
俺は今まで以上に意識して狙いながらイリーナさんの方に向かうゴブリンを優先して倒していった。
「くそっ」
ゴブリンたちも馬鹿じゃない。順調に数を減らせていた時間は短かった。
奴らは俺が身動きが取れないことを見て、俺の視界の外から攻撃してくるようになったのだ。
矢はまだいい。それ程狙うのに影響が無いから。
ただ、投槍とか質量の大きい物を食らうと狙いが逸れてくる。特に斧なんかを食らった時はマジで狙いが逸れた。
「レイジー!!!」
既にイリーナさんはゴブリンとの戦闘に入っている。
魔法の狙いが逸れると援護どころかイリーナさんを傷付けてしまうことになる。
それだけは絶対にしてはいけなかった。
もっと集中しろ。攻撃を食らったくらいで狙いが逸れるのは集中出来ていないからだ。
「レイジー」
「ストーンショット!!!」
イリーナさんの動き、ゴブリンの動きをしっかりと見て狙いを付ける。
ダメだ。十センチはずれてる。
「レイ・・・」
「ストーンショット!」
五センチずれた。まだダメだ。
「レ・・・」
「ストーンショット」
うーん、まだ一、二センチはずれるな。
「・・・」
「・・・」
覆い被さるなくそゴブリン。見えねえだろ。
・・・よし。これでまた狙える。
・・・・・・
・・・
よし。
取り敢えず、イリーナさんの周りのゴブリンは倒し終えた。
だけど、まだゴブリンたちは残っている。現に俺の頭に矢が当たっているし。
残りのゴブリンを倒す為にも、先ずはこの穴から出ないとな。
「身体強化!!!オラッ!!!」
ドゴオオオン。
叫ぶことで効力の上がった『身体強化』を纏った俺は、足に噛み付いている何かを穴の天井にぶち当てるように蹴り上げる。
すると、蹴り上げた場所の地面と共に、俺の足に食い付いていたものの肉片が宙を舞った。
俺は足を蹴り上げた勢いのまま地面の上に降り立つと、今まで死角になっていた場所を見まわす。
「ストーンショット!!!」
残っていたゴブリンたちに魔法を打ち込む。これでゴブリンたちは殲滅出来た。
後は足に食い付いていた奴を倒せばいいだけだ。
「レイジー!!!」
「イリーナさん、無事でしたか?」
「それはこっちのセリフだ!!!お前は大丈夫なのか?」
「ええ、っと!」
「きゃ」
駆け寄ってくるイリーナさんの無事な姿を確認したのも束の間、僅かな地面の揺れを感じた俺はイリーナさんを抱えてその場を飛び退いた。
ボゴッ!
俺たちが立っていた地面を突き破って出てきたのは、胴体の直径が六十センチ、地表から出ている長さが四メートルはある巨大なミミズのような生き物だった。
気持ち悪。
巨大なミミズは兎に角気持ち悪い。
また地中に潜られてもまずいのでこんな奴はさっさと倒すに限る。
「ソニックブレイド!!!」
俺は巨大ミミズの地表付近と、先端に近い場所と、その中間くらいを目掛けて真空の刃を飛ばす。
巨大ミミズは一瞬でぶつ切りになって絶命した。
「ふうー」
他に何かが襲ってくる気配も無いし、今回はこれで終わりかな。
それにしても、今回はちょっと襲ってくるものが多かった。
やはり『不幸ゲージ』は溜まると厄介になるってことか。
「レイジ、体は大丈夫なんだよな?」
「ええ、大丈夫ですよ。ゴブリンの返り血が臭いですけど」
状況が一段落したことでイリーナさんが改めて大丈夫なのかと聞いてくる。
勿論、チートボディーのお蔭で今回も無傷だ。
ただ、ゴブリンの返り血の臭いや、巨大ミミズの見た目の気持ち悪さにちょっと吐きそうになっているけど。
「そうか、それはよかった。本当によかった。お前が無事で。もう、絶対死んじゃうと思ったから。うっ、ううう」
イリーナさんは俺に縋りつくように嗚咽を漏らした。
ああ、そうだよな。俺は今回、身動き出来ない状態でしこたま攻撃を食らっていたのだ。普通の人間なら確実に死んでいる。
そんな状況で俺はイリーナさんの周りのゴブリンを優先して倒していた。
イリーナさんからして見れば、それは自分の為に誰かが犠牲になっていくのを見せ付けられていたようなものだったのではないだろうか。
それは多分、自分の身が命の危険に晒されるよりしんどいことなんだと思う。
俺は彼女の身を守りながら心を傷付けていたのだ。きっと。
「ごめんなさい」
「ううう」
俺は宥めるようにイリーナさんの頭を優しく撫でる。
そうしていると、イリーナさんの嗚咽は段々と聞こえなくなっていった。
「・・・」
「・・・」
暫くして、落ち着いたのかイリーナさんが顔を上げる。
その顔にはまだ涙が浮かんでいるものの、すっきりしたように見えた。
「ごめんな。取り乱しちゃって」
「いいえ。俺の方こそ心配掛けてごめんなさい」
俺はそう言って、イリーナさんの顔に僅かに流れていた涙を拭った。
あ、うるうるしているイリーナさん滅茶苦茶可愛い。
そう思った俺の体は自然とキスをしようと動いていく。
待て待て、同意の無いままキスなんてしちゃダメだ!
微かに残った理性が頭を過るけど、体にブレーキは掛からない。
俺の顔はイリーナさんの顔に段々と接近していた。
あれ?イリーナさんは避けないの?このままだとキスしちゃうよ。
イリーナさんが俺のことを見ていない訳じゃない。俺の動きをはっきりと見た上で避けないのだ。
あと少しでキスしてしまう。そうなった時、イリーナさんは目を瞑って受け入れ態勢を取ったではないか。
いったれー!!!!!!
イリーナさんの行動に理性さえもが突っ走る。
どん。
「うおっ」
キスまであと一歩というところで受けた背中への衝撃。
俺はまだ襲ってくる敵がいるのかと周囲を見渡す。
だけど、敵らしき存在は確認出来ず、その代わりにブルータスがいた。
「くぅぅぅん」
ブルータスは俺の足元でふらふらしていた。
この様子だとこいつが俺にぶつかったので間違いない。
多分、穴から出る為に風魔法で加速して飛び出し、勢い余って俺にぶつかったのだろう。
まあ、無事で何よりだ。
いいところで邪魔しやがってとは思うけど!
「ブルータス、お前も無事だったんだな」
イリーナさんがふらふらしているブルータスを抱き上げる。
そして、その無事を喜ぶように優しく撫でていた。
よく見ればブルータスもゴブリンの返り血で汚れているではないか。
きっと、穴の中でゴブリンと戦っていたんだろう。
キスの邪魔をしてくれたことへの怒りは浮かぶものの、それをぶつける気にはならなかった。
それに、よくよく考えてみれば俺もゴブリンの返り血でべとべとなのだ。
こんな状態でキスを迫るのはダメな気がしてきた。
『ファーストキスはゴブリンの返り血の臭い』って酷過ぎるよな。
「帰りましょうか」
「そうだな」
「きゃん」
草原に来てそれ程時間は経ってないけど、俺たちは取り敢えず街に戻ることにした。
ゴブリンはかなりの数を討伐したし、巨大なミミズも倒した。一日の稼ぎは十分稼いだと思う。
それに何より、みんな汚れてて早く風呂屋に行きたい。今の状態は酷過ぎる。
イリーナさんとキスを出来なかったのは残念だけど、きっと、イリーナさんとキスをするチャンスはまたやって来ると思う。
隣を歩くイリーナさんに触れる手の甲の熱がそう告げていた。
「がんばってね」
「あいつらなんかガツンとやっちゃいな!」
「はい、ありがとうございます」
俺はすれ違う人たちからの声援に応えながら歩いていた。
それは、街の至る所に貼られたポスターが原因だった。
「・・・」
俺は一枚のポスターの前に立ち止まってその内容に目を通す。
俺と四十三人の男たち全ての顔が描かれた、俺たちが決闘を行うことを知らせる為のポスター。
対立していることを強調するように俺と四十三人の男たちが向かい合って描かれており、ポスターの面積の中で俺が占める割合が三で、四十三人の男たちが占める割合が七。
俺の方が半分以下の面積とはいえ、俺は一人だけなので物凄く目立つ。
今回の決闘の主役が俺であるかのように。
四十三人の男たちなど完全に脇役扱いであった。
それにしても、戦う場所の提供は仲裁とは言わないなんて言っておきながら、これはどういうつもりだろう?
このポスターには入場料まで記されているのだ。
完全に見世物じゃねえか!こんなのどう考えても仲裁じゃなくて興行だろ!
俺と四十三人の男たちの戦いを金を取って観客に見せようというのだから完全に興行だろう。
仲裁と言える要素などまるで感じられない。
まあ、俺たちもギルドに戦う場所の提供を求めていただけだったので非難はし辛いけどさ。
それはそうと、今回、俺は四十三人の男たちと戦うことになったけど、全員と一斉に戦う訳じゃない。
四十三人の男たちは、十四人、十四人、十五人、の三つのグループに抽選で振り分けられており、俺はそれらのグループと三回に分けて戦うのだ。
それぞれの戦いの間には長めの休憩時間が設けられていて、一人で戦う俺への配慮ということになっている。
これらのことは、治療体制を万全にする為だとか、人数が多過ぎることで動きが阻害されないようにする為の措置だとヨハンは言っていたけど、俺は違う気がする。
多分、一番の理由は入場料収入を増やす為だ。入場料は一つの戦い毎に必要なのだから。
これで四十三人と一度に戦わせるよりも三倍の入場料が得られるという訳である。
他に、屋台を出して飲み物や軽食を売ったりもするし、賭け事まで行うつもりのようだ。実に商魂逞しい。
冒険者ギルドではなく、商人ギルドなんじゃないかと疑ってしまうよ。
「はあー、見世物にされるのか・・・。まあ、観客の前でぶちのめせばあいつらも絡んでこなくなるかもな」
観客の前で十数人の集団が一人の人間に倒されたら恥ずかしいだろう。
俺に絡むことも少なくなるのではないだろうか。
「さて、俺も戦い方の練習をしておかないとな。観客の前で服とかズボンを切られるのは嫌だし」
例え相手が何人いようとこのチートボディーなら負けることなど考えなくていい。
ただ、チートなのは防御力だけなので攻撃を食らわないとは言えなかった。
だから、少しでも攻撃を回避する練習をしておきたい。
最初の戦闘でゴブリンにズボンを切られてしまった時のようにならない為に。
観客の前であの時みたいになるのは恥ずかし過ぎるからな。
「すみません、立ち止まってしまって」
俺はポスターから離れると、ブルータスと戯れていたイリーナさんに声を掛ける。
イリーナさんは五日後にある四十三人の男たちとの決闘の日まで、俺と男たちが諍いを起こさないか監視するようにギルドから依頼されて同行していた。
泊まっている宿が俺と一緒だし、騒ぎの時に居合わせて事情を知っているので都合がよかったから。
監視が目的とはいえ、イリーナさんと一緒に行動出来るのは凄く嬉しい。
決闘の日までじゃなく、ずっと一緒に行動してほしいんだけどな。
「気にするな。自分がそれだけでかでかと描かれていたら気になるって。取り敢えず、決闘が終わるまでは我慢するしかないな」
「はい・・・」
決闘のポスターについては迷惑なだけだ。
目立ちたいと思っていない者にとって、街中に自分の顔が貼り出されるという状況はかなり恥ずかしい。
落書きされているやつもあるし。
このポスターについては決闘の日までじゃなく、今すぐ剥がしていきたい。マジで。
「それで、今日はどこに行くんだ?」
「えーと、草原の方に行こうかと」
「ふーん、草原ね」
行き先が草原と分かってイリーナさんは訝しんでいるようだ。
草原は冒険者の糧になる獲物などが少ないからね。俺も狩りをするなら森に行くし。
今日は溜まってきた『不幸ゲージ』を消費する為に草原に行っておきたいのだ。ブルータスに会ってから行ってないので不幸ゲージが結構溜まってしまっているんだよ。
ただ、一つだけ不安があった。イリーナさんが監視として俺に同行していることだ。
『不幸解放』と言って訪れる不幸にイリーナさんを巻き込んでしまう可能性があった。
だからといって、やらない訳にもいかない。放置しておくと決闘の日までには不幸ゲージがフルになってしまうのが確実だから。
神様から小さな街なら壊滅すると言われている事態を招く訳にはいかない。
それに、イリーナさんは決闘の日までずっと同行することになっているし、それなら早目に済ましてしまう方が溜まった不幸が少ないので安全なんじゃないだろうかと思う訳ですよ。
「それじゃあ、行きましょうか」
「ああ」
「きゃん」
そうして、俺たちは草原へと向かった。
「すみません、イリーナさんはここで待っていてもらえますか?ここから見える範囲で行動しますので」
草原まで来たところで、俺はイリーナさんにそう告げる。
今から『不幸解放』を行うからイリーナさんには俺から離れておいてもらわないと。
絶対に巻き込む訳にはいかないから。
「何だ?用を足しに行くのか?それなら早く行ってこい。待っててやるから」
「いや、用を足しに行く訳じゃないんです・・・」
「ん?何か他に用があるのか?」
「はい。それで、イリーナさんには少しの間離れていてほしいんです」
「側にいたらダメなのか?」
「はい。危険だと思うので」
「危険か。魔法の練習でもするのか?」
「違いますけど」
「何をするつもりなんだ?」
「えーと、具体的なことは言えないのですけど、危険なことです」
不幸を呼ぶ体質で、溜まった不幸を解放するんですなんて言える訳がない。
頭がおかしい奴だと信じてもらえないか、俺の呼ぶ不幸に巻き込まれないように避けられるようになるかのどちらかになりそうだから。
「・・・事を始めてから距離を取るんじゃダメなのか?これでもそれなりに修羅場は潜っていて、自分の身に危険が及ぶかどうかの判断は出来るつもりだけど」
「すみません。イリーナさんにはどうしても離れていてほしくて・・・」
『不幸解放』で訪れる不幸はどんなものになるか分からないからな。実力がある人でも大丈夫とは言い切れないんだよ。
イリーナさんのプライドを傷付けるかもしれないけど、離れていてもらわないと。
「・・・そうか。分かった。ここで待っていればいいんだな。ただし、私の視界から消えた時はギルドに報告するからな」
「・・・分かりました」
うーん、『不幸解放』でイリーナさんの視界から消えてしまう可能性はあるんだよな。
でも、イリーナさんの視界から消えただけでは罪に問われることは無い。
だけど、冒険者ギルドや衛兵たちからの心証は悪くなるし、四十三人の男たちに何かあった時は俺が疑われることになるのは確実だ。
十分に注意しておかないとな。
「ブルータス、お前もここで待っていろよ。ついて来てもいいことないから」
「・・・」
「・・・そうか。まあ、お前は好きにすればいいさ」
一応、ブルータスにも『不幸解放』に巻き込まないようにここで待つように言ったけど、ブルータスは首を横に振って拒否してきた。
まあ、ブルータスは少々のことでは死にそうにないし、俺の命を狙っている存在でもある。俺の不幸に巻き込まれたとしても構わないか。こいつが俺の忠告を無視して自分で選んだ行動でもあるし。
そこまで俺と一緒にいたいのなら放っておこう。
『不幸解放』と言ったことで現れた魔物が、『不幸解放』と言って訪れる不幸に巻き込まれたらどうなるかちょっと気にもなるから。
「それじゃあ、ちょっと行ってきます」
「ああ」
こうして、俺とブルータスはイリーナさんから離れていく。
正直なところ、どこまで離れたらいいのか分からない。
多分、遠ければ遠い程『不幸解放』に巻き込む可能性は低いと思う。
「取り敢えず、このくらいでいいかな?」
俺はイリーナさんから三百メートル程離れた所で立ち止まる。
このくらい離れるとイリーナさんがかなり小さく見えるので巻き込む可能性は低いんじゃないだろうか。
まあ、どうしても不安は感じてしまうけど。
いつもより不幸ゲージが溜まっているのもあるから。
「それじゃあ、ブルータス、何が起こるか分からないから用心していろよ」
「?きゃん」
俺が用心しろと告げると、ブルータスはきょとんとしながら返事をした。
まあ、きょとんとしてしまうのも無理はない。ブルータスはまだ一度も俺が『不幸解放』と言うところに立ち会っていないのだから。
「不幸解放」
俺はイリーナさんの方を注視してそう言った。
今回に関していえば、一番肝心なのはイリーナさんを巻き込まないかどうかだからね。
どんな不幸が訪れるのか気にしている場合じゃないんです。
「ん?地鳴りか?」
小さく響くゴゴゴゴゴって音と共に僅かに地面が揺れている。
間違いなく『不幸解放』によって発生したものだ。
俺は一段と周囲を警戒する。
特にイリーナさんの周辺を。
ボコッ。
「うおおおお」
「きゃうぅぅぅん」
突然陥没する地面。俺は何とか縁の部分に捕まることが出来て開いた穴への落下は免れたが、ブルータスはなす術もなく落ちていった。
まあ、あいつなら落ちても無事だろう。風魔法も使えるし。そのうち上がってくるはずだ。
今はブルータスのことを考えるより地面の上に上がることを優先しよう。今のままだと俺も穴に落ちかねないし。
俺はそう考え、腕に力を込めて地面の上に上がろうとする。
「うおっ」
上がろうと腕に力を込めた瞬間、右足を何かに引っ張られた。
いや、足を引っ張っていると言うより、足に食い付かれているのか。太腿から下が無数の尖ったもので締め付けられて結構痛い。
俺はこの状況を何とかしようと食い付かれていない左足で蹴るけど効果が無く、右足を抜くことは出来なかった。
途中から『身体強化』を使ったけど同じだ。
どうにか引きずり込まれないように出来ているだけだった。
「くそっ」
何度も蹴り続けるけど、一向に離れない。
ぶら下がっている状態で力が入ってないからだと思う。
いっそのこと下に降りて戦う方がいいのではと思ったけど、その考えは即座に捨てた。
ゴブリンの集団がわらわらと湧いて出てきたのだ。
「レイジー!」
イリーナさんが俺の名前を叫びながら走ってくる。
穴に落ちかけの俺と、湧いて出てきたゴブリンたちを見て助けないといけないと思ったのだろう。こちらに向かって全力疾走していた。
こんな状況で下に降りたらイリーナさんがゴブリンたちに囲まれてしまう。
増え続ける一方で総数が把握出来ないゴブリンたちの前でそれは危険過ぎた。
「ストーンショット!」
イリーナさんの方に向かっていたゴブリンに魔法を放つ。
不安定な体勢な上に、足を引っ張られている為狙いが逸れてしまった。
でも、倒すことは出来たからいいだろう。
何より、大半のゴブリンが俺の方に向って来てくれたのがありがたい。これでイリーナさんの危険度がぐっと減る。
俺は今まで以上に意識して狙いながらイリーナさんの方に向かうゴブリンを優先して倒していった。
「くそっ」
ゴブリンたちも馬鹿じゃない。順調に数を減らせていた時間は短かった。
奴らは俺が身動きが取れないことを見て、俺の視界の外から攻撃してくるようになったのだ。
矢はまだいい。それ程狙うのに影響が無いから。
ただ、投槍とか質量の大きい物を食らうと狙いが逸れてくる。特に斧なんかを食らった時はマジで狙いが逸れた。
「レイジー!!!」
既にイリーナさんはゴブリンとの戦闘に入っている。
魔法の狙いが逸れると援護どころかイリーナさんを傷付けてしまうことになる。
それだけは絶対にしてはいけなかった。
もっと集中しろ。攻撃を食らったくらいで狙いが逸れるのは集中出来ていないからだ。
「レイジー」
「ストーンショット!!!」
イリーナさんの動き、ゴブリンの動きをしっかりと見て狙いを付ける。
ダメだ。十センチはずれてる。
「レイ・・・」
「ストーンショット!」
五センチずれた。まだダメだ。
「レ・・・」
「ストーンショット」
うーん、まだ一、二センチはずれるな。
「・・・」
「・・・」
覆い被さるなくそゴブリン。見えねえだろ。
・・・よし。これでまた狙える。
・・・・・・
・・・
よし。
取り敢えず、イリーナさんの周りのゴブリンは倒し終えた。
だけど、まだゴブリンたちは残っている。現に俺の頭に矢が当たっているし。
残りのゴブリンを倒す為にも、先ずはこの穴から出ないとな。
「身体強化!!!オラッ!!!」
ドゴオオオン。
叫ぶことで効力の上がった『身体強化』を纏った俺は、足に噛み付いている何かを穴の天井にぶち当てるように蹴り上げる。
すると、蹴り上げた場所の地面と共に、俺の足に食い付いていたものの肉片が宙を舞った。
俺は足を蹴り上げた勢いのまま地面の上に降り立つと、今まで死角になっていた場所を見まわす。
「ストーンショット!!!」
残っていたゴブリンたちに魔法を打ち込む。これでゴブリンたちは殲滅出来た。
後は足に食い付いていた奴を倒せばいいだけだ。
「レイジー!!!」
「イリーナさん、無事でしたか?」
「それはこっちのセリフだ!!!お前は大丈夫なのか?」
「ええ、っと!」
「きゃ」
駆け寄ってくるイリーナさんの無事な姿を確認したのも束の間、僅かな地面の揺れを感じた俺はイリーナさんを抱えてその場を飛び退いた。
ボゴッ!
俺たちが立っていた地面を突き破って出てきたのは、胴体の直径が六十センチ、地表から出ている長さが四メートルはある巨大なミミズのような生き物だった。
気持ち悪。
巨大なミミズは兎に角気持ち悪い。
また地中に潜られてもまずいのでこんな奴はさっさと倒すに限る。
「ソニックブレイド!!!」
俺は巨大ミミズの地表付近と、先端に近い場所と、その中間くらいを目掛けて真空の刃を飛ばす。
巨大ミミズは一瞬でぶつ切りになって絶命した。
「ふうー」
他に何かが襲ってくる気配も無いし、今回はこれで終わりかな。
それにしても、今回はちょっと襲ってくるものが多かった。
やはり『不幸ゲージ』は溜まると厄介になるってことか。
「レイジ、体は大丈夫なんだよな?」
「ええ、大丈夫ですよ。ゴブリンの返り血が臭いですけど」
状況が一段落したことでイリーナさんが改めて大丈夫なのかと聞いてくる。
勿論、チートボディーのお蔭で今回も無傷だ。
ただ、ゴブリンの返り血の臭いや、巨大ミミズの見た目の気持ち悪さにちょっと吐きそうになっているけど。
「そうか、それはよかった。本当によかった。お前が無事で。もう、絶対死んじゃうと思ったから。うっ、ううう」
イリーナさんは俺に縋りつくように嗚咽を漏らした。
ああ、そうだよな。俺は今回、身動き出来ない状態でしこたま攻撃を食らっていたのだ。普通の人間なら確実に死んでいる。
そんな状況で俺はイリーナさんの周りのゴブリンを優先して倒していた。
イリーナさんからして見れば、それは自分の為に誰かが犠牲になっていくのを見せ付けられていたようなものだったのではないだろうか。
それは多分、自分の身が命の危険に晒されるよりしんどいことなんだと思う。
俺は彼女の身を守りながら心を傷付けていたのだ。きっと。
「ごめんなさい」
「ううう」
俺は宥めるようにイリーナさんの頭を優しく撫でる。
そうしていると、イリーナさんの嗚咽は段々と聞こえなくなっていった。
「・・・」
「・・・」
暫くして、落ち着いたのかイリーナさんが顔を上げる。
その顔にはまだ涙が浮かんでいるものの、すっきりしたように見えた。
「ごめんな。取り乱しちゃって」
「いいえ。俺の方こそ心配掛けてごめんなさい」
俺はそう言って、イリーナさんの顔に僅かに流れていた涙を拭った。
あ、うるうるしているイリーナさん滅茶苦茶可愛い。
そう思った俺の体は自然とキスをしようと動いていく。
待て待て、同意の無いままキスなんてしちゃダメだ!
微かに残った理性が頭を過るけど、体にブレーキは掛からない。
俺の顔はイリーナさんの顔に段々と接近していた。
あれ?イリーナさんは避けないの?このままだとキスしちゃうよ。
イリーナさんが俺のことを見ていない訳じゃない。俺の動きをはっきりと見た上で避けないのだ。
あと少しでキスしてしまう。そうなった時、イリーナさんは目を瞑って受け入れ態勢を取ったではないか。
いったれー!!!!!!
イリーナさんの行動に理性さえもが突っ走る。
どん。
「うおっ」
キスまであと一歩というところで受けた背中への衝撃。
俺はまだ襲ってくる敵がいるのかと周囲を見渡す。
だけど、敵らしき存在は確認出来ず、その代わりにブルータスがいた。
「くぅぅぅん」
ブルータスは俺の足元でふらふらしていた。
この様子だとこいつが俺にぶつかったので間違いない。
多分、穴から出る為に風魔法で加速して飛び出し、勢い余って俺にぶつかったのだろう。
まあ、無事で何よりだ。
いいところで邪魔しやがってとは思うけど!
「ブルータス、お前も無事だったんだな」
イリーナさんがふらふらしているブルータスを抱き上げる。
そして、その無事を喜ぶように優しく撫でていた。
よく見ればブルータスもゴブリンの返り血で汚れているではないか。
きっと、穴の中でゴブリンと戦っていたんだろう。
キスの邪魔をしてくれたことへの怒りは浮かぶものの、それをぶつける気にはならなかった。
それに、よくよく考えてみれば俺もゴブリンの返り血でべとべとなのだ。
こんな状態でキスを迫るのはダメな気がしてきた。
『ファーストキスはゴブリンの返り血の臭い』って酷過ぎるよな。
「帰りましょうか」
「そうだな」
「きゃん」
草原に来てそれ程時間は経ってないけど、俺たちは取り敢えず街に戻ることにした。
ゴブリンはかなりの数を討伐したし、巨大なミミズも倒した。一日の稼ぎは十分稼いだと思う。
それに何より、みんな汚れてて早く風呂屋に行きたい。今の状態は酷過ぎる。
イリーナさんとキスを出来なかったのは残念だけど、きっと、イリーナさんとキスをするチャンスはまたやって来ると思う。
隣を歩くイリーナさんに触れる手の甲の熱がそう告げていた。
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