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秋霖 【10月短編】
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朝晩めっきり冷え込んできた。ふわふわの毛布を出しておいて本当によかった。庭に出ると朝露が降っている時もふえてきた。
朝は随分と冷え込むのに、昼間はぐんと気温が上がる。日差しが強ければ汗ばむこともあり、まだまだ扇子が手放せない。
そんな中。
「りょーたー! おはな!」
「元気だなぁ……」
おみは庭を走り回っていた。まだ麻の浴衣を着せていた方がいいのか、と思うくらい毎日汗だくになるまで遊んでいる。今日はコスモスを見つけたらしく、両手いっぱいに抱えて帰ってきた。
額に浮かんだ汗を拭い、温い麦茶をしっかりと飲ませる。今月は遠出をしないといけない予定がある。ここで体調を崩しては大変だ。
「あとねー、あかいおはなもあった!」
「彼岸花かな」
「きれいだった! あと、あと、虫がいて」
「よしよし。おやつ食べながら聞くから中に入ろう」
「うぃ」
暑さが苦手なおみにとって、今の季節はとても過ごしやすいのだろう。楽しそうにはしゃいでは転び、ぴぃぴぃ泣く日々が続いている。
遠出をするのは月の下旬なので、それまではここで用意をしなくてはいけない。着物は織田さんに頼んでいるし、移動などの手配は実家が進めている。
「さかぐちはー?」
「坂口さん、な。この時期は忙しいんだってさ」
「んむー」
稲刈りが始まり、収穫が盛んになるこの時期は多忙になると言っていた。五穀豊穣に携わるため、気が抜けないのだと話していた気がする。
「さかぐちにあいたいー」
「今度お手伝いに行こうか」
「いく!」
喜びに任せて俺の腹に飛び乗ってきた。抱き上げると体が熱を帯びてホカホカしている。髪の毛から甘い香りがしてきて、よく見ると金木犀の花が散らばっている。
やれやれ。一体どこまで探検してきたのか。
「明日は何をする?」
「あしたは、どんぐり拾う!」
「よし。楽しみだな」
嬉しそうに揺れる尻尾に一匹の蜻蛉がじゃれついていて、思わず笑ってしまう。明日も晴れるといいな、と優しく頭を撫でてやった。
朝は随分と冷え込むのに、昼間はぐんと気温が上がる。日差しが強ければ汗ばむこともあり、まだまだ扇子が手放せない。
そんな中。
「りょーたー! おはな!」
「元気だなぁ……」
おみは庭を走り回っていた。まだ麻の浴衣を着せていた方がいいのか、と思うくらい毎日汗だくになるまで遊んでいる。今日はコスモスを見つけたらしく、両手いっぱいに抱えて帰ってきた。
額に浮かんだ汗を拭い、温い麦茶をしっかりと飲ませる。今月は遠出をしないといけない予定がある。ここで体調を崩しては大変だ。
「あとねー、あかいおはなもあった!」
「彼岸花かな」
「きれいだった! あと、あと、虫がいて」
「よしよし。おやつ食べながら聞くから中に入ろう」
「うぃ」
暑さが苦手なおみにとって、今の季節はとても過ごしやすいのだろう。楽しそうにはしゃいでは転び、ぴぃぴぃ泣く日々が続いている。
遠出をするのは月の下旬なので、それまではここで用意をしなくてはいけない。着物は織田さんに頼んでいるし、移動などの手配は実家が進めている。
「さかぐちはー?」
「坂口さん、な。この時期は忙しいんだってさ」
「んむー」
稲刈りが始まり、収穫が盛んになるこの時期は多忙になると言っていた。五穀豊穣に携わるため、気が抜けないのだと話していた気がする。
「さかぐちにあいたいー」
「今度お手伝いに行こうか」
「いく!」
喜びに任せて俺の腹に飛び乗ってきた。抱き上げると体が熱を帯びてホカホカしている。髪の毛から甘い香りがしてきて、よく見ると金木犀の花が散らばっている。
やれやれ。一体どこまで探検してきたのか。
「明日は何をする?」
「あしたは、どんぐり拾う!」
「よし。楽しみだな」
嬉しそうに揺れる尻尾に一匹の蜻蛉がじゃれついていて、思わず笑ってしまう。明日も晴れるといいな、と優しく頭を撫でてやった。
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