このたび、小さな龍神様のお世話係になりました

一花みえる

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雨の海【1月長編】

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   なんだかふわふわした夢を見た気がする。雲に乗って空を旅する夢だ。途中で機械の鳥とすれ違ったり、あったかい風に吹かれたりしながら海にたどり着いた。
    おみ、海だぞ、と隣を見てもどこにも見当たらない。おかしいな、おみはどうしたんだろう。もしかしたら雲を見て「わたあめー!」と食べてしまったんだろうか。そうだとしたら大変だ。すぐに探さないと。
「うーん……おみ……」
    そんな、強い使命感に駆られながら目覚めた。目の前にふわふわの銀色毛玉がある。よかった、おみはこんな所にいたのか。しらたきを抱きしめたまま、俺の腕に潜り込んですやすや眠っている。
   ああ、よかった。
   安心して再び目を閉じて。
「おみ!?」
「ぴっ!?」
    事態を理解して、慌てて飛び起きた。こんなにも近くにおみがいる状態で寝こけてしまうなんて。今まで何があっても避けていた状況のはずだったのに、とうとう疲れで頭が働かなくなってしまったのか?
    どうしよう、俺、このまま霊力を吸われて……?
「あ、あれ?    なんともなってない……」
「いーしゃんがくれたお水があるからへーきってりょーたいってた」
「あ、ああ……そうか」
    思い出した、寝る前においちさんから清められた水をもらったんだった。言われた通り部屋に置いていたおかげでおみの隣で寝ても何も起きていない。
    すっかり忘れていた。
「りょーたねぼすけさん?」
「うん、そうかも」
「んふふ、おみね、りょーたとしらたきと三人で寝たのうれしー」
    毛布の端っこからご機嫌な尻尾が見えた。ふらふら揺れて見ているだけで楽しそうだ。昨日も寝る直前まで嬉しくて興奮していたな。布団の上でころころして、急に電池が切れたみたいに寝てしまっていた。
    そうして、風邪を引かないようにと毛布をかけてあげて。俺もそのまま寝ちゃったんだった。
「かえってもまた眠れる?」
「どうだろう。おいちさんに聞いてみようか」
「うぃ」
    おみを抱っこしているおかげか普段よりポカポカしている気がする。福岡は九州だけどそこまで暖かいわけじゃない、というのは母がよく言っていたことだ。もちろん俺たちの山より気温は高いが、それでも冬はどこにいても寒い。
    それなのに今の俺はぬるま湯に浸かっているかのようにほかほかしていた。
「んみー……ねむいねー……」
「うん、ねむい」
「おみまたねちゃう」
「二度寝だな」
「んみー」
    眠たそうに目をこすって、くああ、と大きな欠伸をしたおみから。
    ぐきゅるるる……と大きな音が響いた。これはどう考えてとお腹の音だ。あまりの大きさに思わずおみと吹き出してしまう。
「お腹空いた?」
「すいたー」
「じゃあ起きる?」
「んー」
    睡眠欲と食欲、どちらを選ぶかはすぐに決まった。布団の中で思い切り伸びをして、おみと一緒に起き上がる。うーん、なんていい日だ。
    清々しくて気持ちがいい。きっと快晴の朝なんだろうな。そう思って携帯電話を見て。
     今度は俺が、大声を出す番だった。
「もう昼!?」
「おひるごはん!」
「どんだけ寝たんだ、俺たち」
    やれやれ。これは二度寝なんて言ってられない。急いで起き上がり、布団を片付ける。手早く着替えて、髪を整えている間におみも支度が出来たようだ。
    しらたきもお出かけの準備はばっちり。今日はお洒落な銀色のリボンだ。
「おひるごはん、なにかな」
「何だろうなぁ」
「おみ、おさかながいーな」
「海結さんに聞いてみよう」
「おー!」
    今日も元気に、楽しい一日が始まった。襖を開けるとかすかに潮の香りがする。それと同時に柔らかくて甘い香りがした。
    陽だまりのような暖かい香りは、きっとおみのものだろう。俺の胸もふわりと暖かくなっていった。
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