泣き虫龍神様

一花みえる

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雪時雨【2月短編】

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    節分の次の日は立春である。その日に豆腐を食べると幸せが訪れるのだとか。昨日は手作りの巻き寿司をお腹いっぱいに食べ、今日はお豆腐である。
    おみにとっては嬉しい行事が続いている。
「ぷるぷる」
「あんまり触ると崩れるからな」
「うぃ」
    絹豆腐を一丁、それからひき肉と玉ねぎを作業台に並べる。あとは卵とパン粉、少しの調味料で準備万端だ。
    最初は湯豆腐や冷奴も考えた。しかし、それだとなんだか味気ない。それならばと思い調べた結果、作る過程でおみも楽しめるハンバーグを作ることにした。
「前に一度作ったことあるな」
「たのしかったー!    おみ、こねこねする」
「よし、じゃあ生地はおみに任せようかな」
「わーい!」
    おみ専用の踏み台に登り、腕まくりをして待ち構えている。気合いの入り方が違うな。
    大きなボールに豆腐とひき肉を入れる。おみが小さな手で捏ねている間、俺は玉ねぎをみじん切りにしていく。少し歯ごたえがある方が好きなので、普段より粗めに切る。
「こねこね、こねこね」
「おお、いいな」
「そう?」
「上手」
「ふふん!」
    ハンバーグの捏ね方に上手いや下手があるのかは知らないが、均等に混ざっているところを見ると下手ではないだろう。
    そこに玉ねぎを入れて、またしっかりと捏ねてもらう。パン粉を適当に入れて、卵を割入れたらあとは馴染むまで無心に捏ねるだけ。
    単純だけど、大変な作業だ。
「おいしくなーれ」
「おまじない?」
「そう!    あめしゃがおしえてくれたの」
「そっか」
    どうやら宗像大社で教えてもらったことは、しっかりとおみの中に根付いているようだ。生地が完成するまでの間、付け合せを作る。ジャガイモの皮を剥き、人参を一口大に切る。レンジで柔らかくした後、バターで焦げ目がつくまで弱火で炒めていく。
    台所に香ばしい香りが広がってきた。
「りょーた、もういい?」
「うん。良さそうだな」
「おおー」
    生地が完成したらあとは俺の出番。生地を適度に大きさにしてフライパンで焼いていく。じゅうう、といい音が響いてきた。
    ハンバーグは簡単だし作り置きも出来るからよく作っている。今回はお豆腐を入れたおかげでいつもよりふわふわになっていた。
「おみ、おさらだすね」
「お、ありがとう」
「あと、おちゃもいれる」
「助かるよ」
    ぴょんぴょん飛び跳ねながら、おみが台所を走り回っている。早く食べたくてしょうがないんだろうな。
    じゅうじゅう焼かれるハンバーグを見ながら、なんとなくおみの背中が昔よりも大きくなったかのように見えた。
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