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雪時雨【2月短編】
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「おみ、巻き寿司作るぞ」
「おしゅしー!」
二月三日の夕方、我が家におみの喜びに満ち溢れた声が響いた。今日は立春の前日、つまり節分だ。豆まきをするかとも考えたが、神様であるおみにとっては鬼も何もないだろうと辞めることにした。
代わりに、と言ってはなんだけれど。
我が家の空腹大魔神のために節分にちなんだ夕食を作ることにした。俺はイワシの煮付け、おみには恵方巻きをお願いしよう。その方が被害は少なさそうだ。
「海苔の上に酢飯を乗せて。あとは好きな具材を選べばいいよ」
「じゅるり……」
ううん。心配だ。今回は具材を多めに用意してしまったか。逆に言うと、おみはつまみ食いし放題ということだ。果たしてちゃんと具材は残ってくれるんだろうか。
心配だ……。
「おみ、たまご、あと、さもん!」
「じゃあ任せるからな」
「うぃ!」
心配だけどこちらも魚を煮たい。ここはおみの良心を信じるとしよう。
鰯の臭みを取りたいから生姜を入れて、醤油、砂糖、味醂で味漬けしていく。骨が柔らかくなるまで炊きあげたら完成だ。簡単だし、たくさん作れるのはいいな。
「むん、むん」
「おみ、出来た?」
「むむー!」
隣を見ると、手には収まらない大きさの巻き寿司を作ろうと必死なおみがいた。具材を入れすぎたせいか、少し海苔が破れている。
これは、豪快というかなんというか。
つまみ食いよりも大変だな。
「りょーた、まけない……」
「少し減らそうな。そしたら巻けるから」
「ぴいぃ……」
食欲と達成感、その二つを天秤にかけているようだ。早く食べたいけれど綺麗に完成させたい。その葛藤に、おみは唸り声を上げていた。
変なやつ。巻き寿司なんていつでも出来るのに。
「むふん、むふふん」
結局、破れた海苔からご飯がはみ出した歪な恵方巻きが完成した。とはいえ、おみにとっては紛れもなく恵みの多い巻き寿司なんだろう。
大喜びで美味しそうに平らげる姿を見ていると、俺にまで福がやって来た気持ちになった。
「おしゅしー!」
二月三日の夕方、我が家におみの喜びに満ち溢れた声が響いた。今日は立春の前日、つまり節分だ。豆まきをするかとも考えたが、神様であるおみにとっては鬼も何もないだろうと辞めることにした。
代わりに、と言ってはなんだけれど。
我が家の空腹大魔神のために節分にちなんだ夕食を作ることにした。俺はイワシの煮付け、おみには恵方巻きをお願いしよう。その方が被害は少なさそうだ。
「海苔の上に酢飯を乗せて。あとは好きな具材を選べばいいよ」
「じゅるり……」
ううん。心配だ。今回は具材を多めに用意してしまったか。逆に言うと、おみはつまみ食いし放題ということだ。果たしてちゃんと具材は残ってくれるんだろうか。
心配だ……。
「おみ、たまご、あと、さもん!」
「じゃあ任せるからな」
「うぃ!」
心配だけどこちらも魚を煮たい。ここはおみの良心を信じるとしよう。
鰯の臭みを取りたいから生姜を入れて、醤油、砂糖、味醂で味漬けしていく。骨が柔らかくなるまで炊きあげたら完成だ。簡単だし、たくさん作れるのはいいな。
「むん、むん」
「おみ、出来た?」
「むむー!」
隣を見ると、手には収まらない大きさの巻き寿司を作ろうと必死なおみがいた。具材を入れすぎたせいか、少し海苔が破れている。
これは、豪快というかなんというか。
つまみ食いよりも大変だな。
「りょーた、まけない……」
「少し減らそうな。そしたら巻けるから」
「ぴいぃ……」
食欲と達成感、その二つを天秤にかけているようだ。早く食べたいけれど綺麗に完成させたい。その葛藤に、おみは唸り声を上げていた。
変なやつ。巻き寿司なんていつでも出来るのに。
「むふん、むふふん」
結局、破れた海苔からご飯がはみ出した歪な恵方巻きが完成した。とはいえ、おみにとっては紛れもなく恵みの多い巻き寿司なんだろう。
大喜びで美味しそうに平らげる姿を見ていると、俺にまで福がやって来た気持ちになった。
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