泣き虫龍神様

一花みえる

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めぐる雨【2月長編】

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「かれーだー!」
    お風呂から上がってきたご主人が、テーブルの上を見て喜びの声をあげました。出来たてほかほかのカレーには、大きなお肉、ほくほくのじゃがいも、甘いにんじん、とろとろの玉ねぎが入っているんですよ。
    そして最後の隠し味に、あの長くて難しい名前のスパイスが入っているそうです。ご主人が頑張って貰ってきたものが、この美味しそうでたまらないカレーになったのです!
「おみのおかげで晩ご飯を作れたよ」
「わー!」
「ありがとな、おみ」
「むふふん」
    スプーンを握って、ぺたんと座ります。ぼくも隣でお利口さんに座りますね。ふんふん、とっても美味しそうな香りがします!
    頑張ってよかったですね、ご主人。
「いっただきまーす!」
「いただきます」
    スプーンいっぱいに乗せたカレーを、思い切り頬張ります。辛すぎず、でも様々なスパイスのおかげで香り高く作られたカレーはご主人の好物なのです。
    小さなお口がパンパンになって、もぐもぐと動いています。どうですか?    おいしいですか?
「おいしーい!」
    それはよかった!    ご主人の笑顔がぼくは何よりもうれしいです!
「んまま、んま」
「お使いは大変だった?」
「うーん」
    最後に残しておいたお肉を大事そうに食べながら、ご主人はしばらく考えておりました。初めて一人でお使いに行って、重たい荷物を持って、暗い中お家までの道を歩いてきたのです。
    途中で欲しいものを忘れて泣いちゃいそうにもなりました。それでも最後まで「りょうたさんのため」と思って頑張ってきたのです。
「たいへん、だったけど、たのしかった!」
「そっか。それならよかった」
「しらたきもいたから、さみしくなかった」
    それは嬉しいお言葉です!
    ぼくもご主人の隣でお守りできたので、とてと楽しかったですよ!    また行きましょうね。次は迷子にならないよう、このしらたき、頑張りますので!
「そういえばこのお花。どこで拾ったんだ?」
「みぃ?」
    食卓の上に飾られている銀色のお花。そういえばこのお花のおかげで帰りは迷うこともなかったのでした。
    この辺りでは見たことないお花です。しかもお外ではぼんやりと輝いておりました。不思議なお花ですね。
「おだしゃのおうちから、ここまでおちてたの」
「落ちてたのか」
「ぱんだと食べられちゃうからかなぁ」
「そうかもな」
    謎は残ったままですが、こうして無事に帰ってこられたのです。しかも美味しいご飯をみんなで食べることもできました。
    色んなことがあった一日でしたね、ご主人!
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