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花時雨【4月短編】
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最近、おみはテレビに夢中になっている。最初の頃は「はこにひとがいる!」と怯えていたが、仕組みを理解してからは何かと見たがるようになった。
とはいえ、ここはチャンネル数も少ないし見るのはもっぱら動画配信サイトの動画になってしまう。最近は本当にいろいろな動画があるから、おみも興味深そうに見ている。
「りょーた、これなに?」
「これは動物の特集だな」
「ほほー」
サムネで大体の内容は理解できるが、文字を読めないおみは俺にどんな内容か聞いてくる。この前は「瀬戸内海グルメ旅」という動画を見て、終始ヨダレを垂らしていた。
たまに子供向けのダンス動画を見ては、くにゃくにゃと体を動かしたりしている。きっとあれはダンスのつもりなんだろう。まったくそうは見えないが。
「猫向けの動画もあるらしいぞ」
「ちびちゃもみるかな」
「どうだろう。今はお昼寝してるから、今度見てみようか」
「やったー!」
縁側で気持ちよさそうに昼寝をしている地域猫のちびすけが、返事をするように尻尾をぱたんと振る。どうやら彼も興味津々のようだ。
今回の動画は、レッサーパンダの特集らしい。つぶらな瞳がきゅるんとこちらに向いている。うーん、かわいいな。
「れさぱんだ」
「レッサーパンダ」
「ぱんだしゃん?」
「どうだろう。見てみようか」
「うぃ」
わくわく、楽しそうにしらたきと二人でテレビの前に座り込む。俺もそれに倣って隣に腰をおろした。
再生ボタンを押すと、これまた可愛らしい音楽と共にレッサーパンダが映し出された。
「きゃー! かわいい!」
「可愛いなぁ」
「ぱんだしゃんよりちっさいね」
「本当だ。でも尻尾が長いし太い」
「むむ……おみよりながい……」
解説によると、尻尾を含めると全長1メートルを優に超えるらしい。角と尻尾を入れたおみの全長とあまり変わらないな。
頭の上にしらたきを乗せたら勝てるかみしれないが。
「ねー、れさぱんだしゃん、あんよが黒いよ」
「靴下履いてるみたいだな」
「おてても! てぶくろだねー」
「冬でも暖かそうだ」
「おみのてぶくろもあったかいもんね」
太い足で、でちでち歩く。無邪気で可愛らしい姿だ。しかし実際は肉食に分類され、かなり攻撃的だと解説される。
見かけによらないものだ。おみなんて、見たまんまの性格なのに。
「あー! みて、たった!」
「これは威嚇してるんだよ」
「みゃー!」
レッサーパンダの特徴とも言える、威嚇姿が映る。後ろ足で立ち、前足を大きく上にあげる。これは自分を大きく見えるためだと言うが、見ているこちらとしてはただ可愛いとしか思えない。
そんなことを思っていると、おみが突然立ち上がった。何をしたいのか、なんて考えなくても分かる。
「みゃーん! みて、りょーた! いかく!」
「おお」
やはりというか、なんと言うか。思い切り両手を広げて威嚇のポーズを取っていた。鳴き声があまり威嚇になっていない気もする。
それに。
「どう? いかくできてる?」
「うーん、どちらかというと可愛いかな」
「いかくしてるのー!」
「よしよし、そうだな」
「みー!」
尻尾をぱたぱた振るおみを優しく撫でる。いつか一緒にレッサーパンダに会いにいけたら、その時は写真に撮ってやろう。
その時はレッサーパンダより大きくなっていような、おみ。
とはいえ、ここはチャンネル数も少ないし見るのはもっぱら動画配信サイトの動画になってしまう。最近は本当にいろいろな動画があるから、おみも興味深そうに見ている。
「りょーた、これなに?」
「これは動物の特集だな」
「ほほー」
サムネで大体の内容は理解できるが、文字を読めないおみは俺にどんな内容か聞いてくる。この前は「瀬戸内海グルメ旅」という動画を見て、終始ヨダレを垂らしていた。
たまに子供向けのダンス動画を見ては、くにゃくにゃと体を動かしたりしている。きっとあれはダンスのつもりなんだろう。まったくそうは見えないが。
「猫向けの動画もあるらしいぞ」
「ちびちゃもみるかな」
「どうだろう。今はお昼寝してるから、今度見てみようか」
「やったー!」
縁側で気持ちよさそうに昼寝をしている地域猫のちびすけが、返事をするように尻尾をぱたんと振る。どうやら彼も興味津々のようだ。
今回の動画は、レッサーパンダの特集らしい。つぶらな瞳がきゅるんとこちらに向いている。うーん、かわいいな。
「れさぱんだ」
「レッサーパンダ」
「ぱんだしゃん?」
「どうだろう。見てみようか」
「うぃ」
わくわく、楽しそうにしらたきと二人でテレビの前に座り込む。俺もそれに倣って隣に腰をおろした。
再生ボタンを押すと、これまた可愛らしい音楽と共にレッサーパンダが映し出された。
「きゃー! かわいい!」
「可愛いなぁ」
「ぱんだしゃんよりちっさいね」
「本当だ。でも尻尾が長いし太い」
「むむ……おみよりながい……」
解説によると、尻尾を含めると全長1メートルを優に超えるらしい。角と尻尾を入れたおみの全長とあまり変わらないな。
頭の上にしらたきを乗せたら勝てるかみしれないが。
「ねー、れさぱんだしゃん、あんよが黒いよ」
「靴下履いてるみたいだな」
「おてても! てぶくろだねー」
「冬でも暖かそうだ」
「おみのてぶくろもあったかいもんね」
太い足で、でちでち歩く。無邪気で可愛らしい姿だ。しかし実際は肉食に分類され、かなり攻撃的だと解説される。
見かけによらないものだ。おみなんて、見たまんまの性格なのに。
「あー! みて、たった!」
「これは威嚇してるんだよ」
「みゃー!」
レッサーパンダの特徴とも言える、威嚇姿が映る。後ろ足で立ち、前足を大きく上にあげる。これは自分を大きく見えるためだと言うが、見ているこちらとしてはただ可愛いとしか思えない。
そんなことを思っていると、おみが突然立ち上がった。何をしたいのか、なんて考えなくても分かる。
「みゃーん! みて、りょーた! いかく!」
「おお」
やはりというか、なんと言うか。思い切り両手を広げて威嚇のポーズを取っていた。鳴き声があまり威嚇になっていない気もする。
それに。
「どう? いかくできてる?」
「うーん、どちらかというと可愛いかな」
「いかくしてるのー!」
「よしよし、そうだな」
「みー!」
尻尾をぱたぱた振るおみを優しく撫でる。いつか一緒にレッサーパンダに会いにいけたら、その時は写真に撮ってやろう。
その時はレッサーパンダより大きくなっていような、おみ。
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