このたび、小さな龍神様のお世話係になりました

一花みえる

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催涙雨【7月短編】

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 夏は着替えが嵩張らないで済む。暑くて湿度も高くて、偏頭痛が起きやすい季節ではあるが荷物が軽くなることはありがたい。
    必要なものをトランクに詰める隣で、おみも楽しそうに荷造りをしていた。
「ゆかたー、がよーし、くれよんー」
「大荷物だな」
「いーしゃんたちに、おみやげもわたすの!」
    なんとも楽しそうにぎゅむぎゅむ荷物を詰め込んでいる。あとで綺麗に詰め直さないと。夏に合わせて作った浴衣に兵児帯、水着や浮き輪など手当たり次第に詰め込まれている。
    明後日から二度目の宗像だ。おみがはしゃいでいるのも無理は無い。新調した麦わら帽子を被っては、本日三度目となる「りょーたみてー!」という声が響き渡った。
「よく似合ってるな」
「つの、ないないしたの」
「本当は普段から隠しててもらいたいんだけど……」
「んふふーおでかけー」
    俺の小言は聞こえていないらしく、麦わら帽子を被ったまま部屋中歩き回っている。楽しそうだな。
「あとはねーちびちゃもつれてくの」
「ちびすけ?」
    それは初耳だ。前回は何も気にせず留守番をさせていた。その時は地域猫として坂口さんや織田さんが世話をしていた。
    でも今はほぼ毎日この家に居る。確かに放っておくのは心配だ。しかし、連れていくにはいくつか問題がある。
「女の子は連れて行けないんだぞ?」
「あ、そうか」
「俺もおみも、しらたきも男だからいいけど……ちびすけは大丈夫なのか?」
「んむー」
    まあ、おみもしらたきも「一応」男の子なわけであって、そこは融通が効くのだけれど。ちびすけに関してはどうしようもない。
    宗像大社は決して女人禁制ではない。しかし、宗像三女神の長女であるおきつさんが「女の子はねぇ、ちょっとねぇ」とのことらしい。果たしてちびすけはこの試練を乗り越えられるのだろうか。
「ちびちゃーどこー?」
「みゃん?」
「いた!    おいでー」
「いにゃーん!」
「あああ、荷物が……」
    扇風機の前で寝ていたちびすけを追いかけるおみが、俺のトランクを盛大に蹴り飛ばした。中身が溢れ出て散らばっていく。
    その周りをドタバタ走り回る二人(もしくは二匹)を見ながら、額に滲む汗を拭った。今年は賑やかな夏になりそうだ。
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