いきなり有能になった俺の主人は、人生を何度も繰り返しているらしい

一花みえる

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3章

3-5

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 宿屋に戻り、すぐさまレオたちをノア様の部屋に集めた。本来であればベルリアンを出発する前に伝えるべきだったが、あまりにも時間がなかったため詳しい内容を伝えていなかったのだ。借りられた部屋の中で一番広い部屋ではあるが、五人も入るとやはり手狭だ。メリッサ嬢との会話も含めてノア様が簡単に説明し、これからの作戦について話をした。

 ポルテベラもベルリアンと同じく、働き手である少年たちが修道院に連れて行かれている。ただ、ここはベルリアンと違って信仰深い人間が多いというわけではない。喜んで自分の子供を修道院に入れる家庭はそう多くはないそうだ。

 だから、メリッサ嬢も今の状況に手を焼いている。お互いに不干渉を貫いている手前、表立ってサンジーリョの総本山に文句を言うこともできない。おそらくベルリアンよりも領民からの不満は多いはずだ。

「と言う訳で、今から子供達の捜索を行う」
「い、今からですか……?」
「期限は次の夜明けまでだからね。早く子供達を見つけて、ポルテベラと同盟を組みたい」
「ひぇ……」

 レオは驚いた声を上げたが、俺はもう仕方がないと腹を括っていた。ノア様が「やる」と言ったら、俺たちはその言葉に従わなくてはいけない。それにタイムリミットもある。今ここで文句を言っていてもしょうがない。

 さっそく支度をして、どこに行くか話し合うことにした。一番手っ取り早いのは修道院に直接行くことだ。そこに行けば連れて行かれた子供たちがいるだろう。しかし、ベルリアンの人間である俺たちが何の許可もなく乗り込むと問題になるのは間違いない。

「おそらく、すぐに修道院に連れて行く訳じゃないと思うんだ」
「私もそう思います。ポルテベラの修道院は離島にあります。ある程度の人数が集まってからまとめて送るほうが効率的でしょう」
「うん。だから、おそらくどこかに子供達を集めている場所があると思うんだ。そこを見つけて、修道院に送られる前に助け出す」
「しかし、どうやってそこを見つけるんですか? いくら手分けしてもポルテベラはかなり広い」

 ノア様に護衛として俺がつくとして、残るレオたち三人は戦えるほどの戦力はない。もしもレオたちが相手と遭遇した場合、あっさりとやられる未来しか見えない。それに、怪我でもしたらここではゆっくりと治療することも難しい。俺が光魔法で癒すこともできなくはないが、ノア様に止められている以上あまり当てにすることはできない。

 一番いいのは五人で固まって動くことだが。そのためには目標となる場所を的確に見定める必要が出てくる。そのために必要な情報が俺たちにはないのだが。もしかしたら、ノア様はわかっているのだろうか。

「ポルテベラは海辺にたくさん倉庫がある。そこなら船に乗せることも、子供達を隠すことも簡単だ」

 確かに、先ほどポルテベラの街並みを見て回った時に赤煉瓦で創られた倉庫が並んでいるのが見えた。近くには貿易のための港があり、大勢の人で賑わっていたのを覚えている。あそこなら人混みに紛れて子供を倉庫に入れるくらい簡単だろう。

 これなら探す手間がかなり省ける。

「おおよその場所は僕が君たちに伝える。なるべく穏便に、話し合いで解決させよう」
「イエス、マイロード」

 俺たちが返事をしたところで、ちょうど夕方を知らせる鐘の音が街中に響き渡った。タイムリミットは、次にあの鐘がなる時だ。今からおおよそ十時間程度と言ったところか。ノア様のいう通り、あまり時間をかけるわけにもいかないだろう。ポルテベラの次は、リベルマでも同じことをしなくてはいけないのだ。

 疲れが溜まっていることは無視して、ノア様を先頭に部屋を後にした。これから夜が訪れ、視界が悪くなる。逆に、俺たちが動きやすくもなるはずだ。他の土地から来た俺たちがこそこそ動くには、あまり目立たないほうがいい。なるべく黒い服を持ってくるようにとノア様に言われたのは、このことを見越していたのだろうか。

 だとしたら、ノア様は一体どこまで分かっているのだろう。この世界を、この事態を。俺たちには見えていない何かが、その瞳に映っているというのだろうか。その小さな背中に、ベルリアンの運命を背負っているのだとしたら。

 せめて、少しでも俺が負担を担ってあげたい。果たしてそれが従者として当然の気持ちなのか、それとも肩入れしすぎなのかはわからないが。今の俺たちはノア様に頼ることしかできないことは、紛れもない事実だった。
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