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第六話 団地のお祭り
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六月の終わり。
団地では毎年恒例の小さなお祭りが開かれる。
朝から町内会のおじさんやおばさんたちが、団地の中庭にテントを立てたり、金魚すくいのプールを並べたりしている。
僕はワクワクしながら窓からその様子を眺めていた。
お母さんも今日は昼間だけ仕事を休んでくれることになった。
久しぶりに、親子(もちろん信也くんと芽衣ちゃんも一緒)で、賑やかな一日がはじまる。
お昼前、僕は管理人さんに頼まれて焼きそばの屋台の手伝いをした。
おじさんは「今年もよろしくな」と笑い、僕にエプロンをかけてくれた。
「春斗くん、去年より背が伸びたなあ」
「ほんと?」
「お父さんも、こういうの大好きだったんだよ。昔は、お父さんが焼きそばを焼いて、みんなにふるまってくれてなあ」
そんな話を聞いて、なんだか少しだけ誇らしい気持ちになった。
午後、団地の広場は大賑わいだった。
ヨーヨー釣り、かき氷、スーパーボールすくい、どこも行列ができている。
芽衣ちゃんは浴衣姿で、「春斗くん、似合ってる?」と何度もくるくる回ってみせた。
「似合ってるよ、芽衣ちゃん!」
「やった!」
信也くんと三人で金魚すくいをしていると、突然、小さな女の子の泣き声が聞こえた。
「ママー!どこー!」
迷子になったらしい。
僕はすぐに駆け寄って、しゃがみ込む。
「大丈夫だよ。お母さん、きっとすぐ見つかるから」
女の子の手を握って、近くのおばさんに「この子のお母さん、知ってますか?」と聞く。
「あら、もしかして、○○さんちの子かしら。探してみるわね」
しばらくすると、顔をぐしゃぐしゃにしたお母さんが走ってきて、女の子をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとうね、春斗くん」
「いえ……」
人の輪の中で、僕はなんだか胸がいっぱいになった。
お祭りの終わりが近づいた頃、広場の隅にひとり静かに立っている男の人が目に入った。
見覚えのない顔だけど、どこか懐かしさを感じる。
その人は少しの間だけ僕のことをじっと見つめて、にこりと微笑んだ。
気づけば、夕暮れの中に消えていた。
家に帰ると、机の上に新しいメモが置かれていた。
「今日もありがとう。きみのやさしさは、みんなの元気になるよ」
その字を見つめていると、なんだか心がじんわりとあたたかくなった。
お母さんが浴衣姿の僕を見て、「大きくなったね」と笑ってくれる。
団地の夜空には、花火がぽん、ぽんと咲いていた。
団地では毎年恒例の小さなお祭りが開かれる。
朝から町内会のおじさんやおばさんたちが、団地の中庭にテントを立てたり、金魚すくいのプールを並べたりしている。
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お母さんも今日は昼間だけ仕事を休んでくれることになった。
久しぶりに、親子(もちろん信也くんと芽衣ちゃんも一緒)で、賑やかな一日がはじまる。
お昼前、僕は管理人さんに頼まれて焼きそばの屋台の手伝いをした。
おじさんは「今年もよろしくな」と笑い、僕にエプロンをかけてくれた。
「春斗くん、去年より背が伸びたなあ」
「ほんと?」
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そんな話を聞いて、なんだか少しだけ誇らしい気持ちになった。
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「似合ってるよ、芽衣ちゃん!」
「やった!」
信也くんと三人で金魚すくいをしていると、突然、小さな女の子の泣き声が聞こえた。
「ママー!どこー!」
迷子になったらしい。
僕はすぐに駆け寄って、しゃがみ込む。
「大丈夫だよ。お母さん、きっとすぐ見つかるから」
女の子の手を握って、近くのおばさんに「この子のお母さん、知ってますか?」と聞く。
「あら、もしかして、○○さんちの子かしら。探してみるわね」
しばらくすると、顔をぐしゃぐしゃにしたお母さんが走ってきて、女の子をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとうね、春斗くん」
「いえ……」
人の輪の中で、僕はなんだか胸がいっぱいになった。
お祭りの終わりが近づいた頃、広場の隅にひとり静かに立っている男の人が目に入った。
見覚えのない顔だけど、どこか懐かしさを感じる。
その人は少しの間だけ僕のことをじっと見つめて、にこりと微笑んだ。
気づけば、夕暮れの中に消えていた。
家に帰ると、机の上に新しいメモが置かれていた。
「今日もありがとう。きみのやさしさは、みんなの元気になるよ」
その字を見つめていると、なんだか心がじんわりとあたたかくなった。
お母さんが浴衣姿の僕を見て、「大きくなったね」と笑ってくれる。
団地の夜空には、花火がぽん、ぽんと咲いていた。
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