まいにち、きみと奇跡を探しに

金森しのぶ

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第五話 秘密の作戦

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 翌朝、目が覚めても、胸の奥のざわざわは消えなかった。
 でも、今日は絶対にお母さんを笑顔にしたい――そう思って、僕は朝ごはんを食べながら秘密の作戦を考えた。

 作戦といっても、大したことはできない。
 けど、何かしなくちゃ、という気持ちでいっぱいだった。

 

 学校で信也くんと芽衣ちゃんにこっそり相談した。

「ねえ、今度の日曜にさ、お母さんにサプライズしようと思うんだ」

「サプライズ?」

「手紙を書いたり、折り紙で花を作ったり、できることをいろいろやってみようかなって」

「いいね!私もお手伝いするよ」

「俺も!折り紙得意だぜ」

 友達の二人が賛成してくれて、僕は少し元気が出た。

 

 放課後、芽衣ちゃんの家で折り紙をたくさん折って花束を作ることになった。
 芽衣ちゃんのお母さんが、「好きな色をいっぱい使ってね」と紙を出してくれる。

「これ、春斗くんのお母さんに? きっと喜ぶわよ」

「……うん」

 折り紙を折る指先は少しぎこちなかったけど、芽衣ちゃんや信也くんと話していると、どんどん心があたたかくなっていった。

 

 日曜日、僕は朝からドキドキしていた。
 お母さんが仕事から帰る前に、テーブルの上に手紙と花束をそっと並べておいた。

 

 午後三時すぎ、玄関の鍵がカチャリと鳴った。

「ただいま」

「おかえりなさい!」

 僕は大きな声で迎えた。

「どうしたの、今日はなんだか元気だね」

「えへへ、これ……」

 僕は、そっとテーブルの上を指さした。
 そこには、「いつもありがとう」と書いた手紙と、色とりどりの折り紙の花が並んでいる。

 

 お母さんは目を丸くして、そして、ぽろぽろと涙をこぼした。

「……どうして、こんなにやさしいの?」

「お母さんが、がんばってるの、知ってるから」

 お母さんは僕をぎゅっと抱きしめてくれた。

「ありがとう、春斗。……お父さんもね、昔、サプライズが大好きだったの。家族の誰かが悲しんでいたら、必ず何かしてくれてたのよ」

「そうなんだ」

「春斗は、お父さんに似てるね」

 そう言われると、なんだかうれしかった。

 

 その夜は、みんなで一緒にカレーを食べた。
 芽衣ちゃんと信也くんも、お母さんの作ったカレーを食べに来てくれた。

「おばちゃん、カレー美味しい!」

「ほんとだね。元気が出る味!」

 みんなの笑顔を見て、お母さんも自然と笑顔になっていった。

 

 夜、ベッドに入る前、僕は新しいメモを見つけた。
 今までと同じ字だけど、ちょっとだけ雰囲気が違う。

「だいじょうぶ、きみはきみのままでいい」

 その言葉を何度も読み返しているうちに、僕は心から安心して、眠りにつくことができた。
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