我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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51 唇 ※皮膚疾患表現あり

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 以前勤めていた職場に居た、嫌な上司にまつわる話。
 

 彼は目をつけた特定の人に嫌がらせをする。そして、私も標的になってしまった。 

 私が標的となってしまった理由は、標的になった上司直属の部下が軒並み辞めて行って、私しか居なくなってしまったからだ。 

 私はだんだん体調を崩していった。不眠、食欲不振、1番原因不明でタチが悪かったのは『謎の唇の湿疹』だった。 

 最初は使っているリップが合わないのだと考え、使うのをやめたが治らず、病院で貰った薬を塗っても、治ったそばから新しく湿疹が出来始める。
 常時3~4個が、出たり引っ込んだり。
 とは言え、湿疹自体は小さく見て判る病変で無かったので、極端に滅入る事は無かった。 


 その時期から、嫌な上司にも異変が起き始めた。 

 耳たぶに吹き出物が出て、患部が化膿した。病院へ行ったが原因不明で治らず、国立病院を紹介され通院することに。
 治療を受けているにも関わらず、1ヵ月後には朝に貼ったガーゼを昼前に交換しないとならないくらい、化膿が酷い状態になった。 


(同じ部署の2人が皮膚疾患か…。何か変な菌が職場にあるのかな) 

 とは言え、酷くなる一方の上司に対し、私のは一進一退で変わりない。他の部署にも、上司の疾患の噂は広がって行った。

 そんなある時。 

 私と上司2人に辞令が下り、異動になった。
 そもそも2人だけで回らない部署だったので、会社全体で人員の見直しとなり、再編成された。 

 私は異動して3ヶ月後、取引先の関連他社へ引き抜かれた。
 嫌な上司とは異動後は会う事無く、会社を後にした。 


 何年か後、元同僚と会った。 

「良かったね、あの人と離れられて」 

 同僚は裏話を教えてくれた。 

「辞令の前にあの人、取引先でやらかしたらしい。社長の縁故で入った人だから、どうにも出来なくて、それで再編成になったんだって」 

「何をやらかしたの?」 

「…複数の取引先で『化膿の臭い』や『患部の状態』が問題になって。会社に『不快だから他の人に変えてもらいたい』ってクレーム来ても意地張って譲らないから、問題になったの」 

「臭いが酷いから来るなって? 取引先といえそんな言い方する程よっぽどだったの?」 


 苦情が来る程の症状だったとは。
 同じ部署にいたけど、臭いを感じた事は無かった。鼻が慣れてしまったのか?私は首を傾げた。


「あの人、治った?」 

「うん。でも取引先では今でも語り継がれてて、見える所の話だし痕も残ってるし、人物が特定されるから外を廻る仕事はしてないみたい」 

 私の唇の荒れは、異動してすぐ跡形もなく治った。ストレスのせいだったと思っていた。 


 或いは、私は自身を糧に上司へ念を送って、重度の化膿をもたらしたのか。だとしたらむしろ、念どころか呪詛の域に達してるのではないか。
 それを無意識に行なっていた自分。そんな能力も、技術も持ってない筈なのに。


 相手が誰であれ、誰かを苛める事はいけない事、なのである。でないと、見えない力による倍返しをされるかもしれない。

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