我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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29 足音

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 子供の頃に家族で体験した、不可解な出来事の話。 


 私が小学5年くらいの頃、大叔父(祖母の弟)が亡くなった。 

 訃報が届いたのは夕方頃。夕食後に、祖母、父、母、そして私を含め4人の子供達の計7人で、車で30分の所にある祖母の実家へ向かった。 


 祖母の実家は山間の集落にあり、腰痛持ちの祖母が家の前で一足先に降りた。
 敷地内は先に来ていた親族の車でいっぱいだったので、私達は少し離れた集会所の駐車場に車を停めて、そこから歩く事になった。 


 夜に親同伴で外を歩く非日常体験に、私や妹は不謹慎にもワクワクしていたのを覚えている。 

 みんなでワチャワチャ歩いていると、足音が聞こえた。
 山間の集落とは言え、所々に街灯があり、現代的にアスファルト舗装された道路だ。地形のせいか周囲に反響して聞こえてくる。 

「こんな時間に外を歩いてる?」 

「もしかすると、同じ集落の人がおばあちゃん実家へお線香をつけに行く為に歩いてるのかも」 

 父と母はそういう風に話していた。 

 足音から察するに、革靴で男の様だった。
 と言うのも、父の足音に似ていて(勿論、父が歩みを止めても音は止まない)、音の間隔も同じ位(同じ速度で歩いてる?)で、砂利や葉を踏んでない音だったからだ。 

「変だね。どこ歩いてるんだろう。姿見えない」 

 夜とは言え山間部なので、歩ける場所(音の出る場所)は限られている。私達が前や後ろに目を凝らしても、人の姿は見当たらない。 

 父が言った。 

「この辺曲がりくねってるからな。カーブ曲がった先だと、歩く人はここからじゃ見えないよ」 


 祖母の実家まであと50メートル位の所で、道がまっすぐになった。ところが。 

「誰も居ない」 

 土地が開けていて、ざっと100メートル先まで見渡せる場所なのだが、歩行者は1人も居なかった。 
 足音は続いている。

 父が意外そうな顔をする。 

「あれ? こっち側に居るかと思ったのに」 

 その時、足音(音の高さと響き?)が変わった。
 遠かった音が、同じエリア内に入って来た感じの音に変わった。 

 音の主も、この開けた場所に入った。前や後ろを見ても、誰も居ない。

 私が思わず口に出す。 

「誰かこっち来てるよね? どこ? 見えないんだけど」 


 私達家族は、思わず立ち止まり、足音が続くなか辺りを見渡した。街灯もあるが、人影は何処にも見当たらない。


 怖さを紛らわそうと、父が言う。 

「行く場所一緒なら、ここで待ってりゃその人ココ通るね?」 

「やだ!」 

 妹が喚くと、険しい顔の母が父をたしなめる。 

「子供怖がらせる様な事、言わないで」 

 私の耳は、そのやり取り中に足音を聞きとれなくなった。 

「ねえ、聞こえなくなったよ」 

「本当だ。どっか途中にある家にでも入ってんじゃない?」 

 母の一声で、私達はまた歩き始めた。

 その仮説が正しければ、玄関のドアや引き戸の開閉音も聞こえる筈だが、それは聞こえなかった。 


 祖母の実家へ着いた私は、さり気なく祖母に聞いた。 

「私達来るまでの間に、他の人誰か来た?」 

 祖母は家の奥へ行ったり来たりしたので、来客まで見てなかったそうだ。
 そして、私の両親がお線香をつけたタイミングで、何故か停電した。 


 完全にビビッてしまった私と妹は、帰りは歩きたくないと駄々をこねて、祖母と一緒に玄関先で待たせてもらった。 

 結局流れで、母と弟、末弟も一緒に待つ事にしたので、父が1人で車を取りに行った。 


 父は『何だよ怖がりだな~』なんて笑っていたけど、内心ビビッてたんじゃないかと思う。

 今更だが、申し訳ない事をした。 

 
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