我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

文字の大きさ
30 / 153

30 龍の花嫁

しおりを挟む
 友人が結婚した頃の話。 


 友人:アイリと出会ったのは、中学生の時。男勝りで竹を割ったような性格で、好きなゲームをきっかけに仲良くなった。 

 彼女の家は代々続く寿司屋で、4つ下に弟が生まれるまで『跡取り娘』として、厳しく躾られたそうだ。
 なので、性格の割に細やかな気配りなど女子力が高く、物事に対して真面目に取り組む女性でもあった。 


「結婚願望あるけど、一生独身かもしれない~」 

 と、大人になってから会う度に愚痴っていたアイリだが、縁に恵まれ結婚する事になった。 

 生まれ育った家を離れる寂しさよりも、愛する旦那さんとの新生活へのワクワクの方が、勝っていたアイリ。
 婚姻届の提出前夜、彼女は夢を見た。 


 テレビで、人形劇の番組をやっていた。 

 『ナントカ童子』という題名のそれは、中華圏が舞台らしい。
 少年が拾った動物を、ペットとして可愛がっていたが、それは龍の化身だった。 

 大人になった龍は天界へ。少年は泣きながら感謝を述べて、お別れをした。 

 よくあるオチだなと思い、ふと部屋の襖を見ると、少年と龍が描かれていた。 

(え?ウチの襖の柄ってこの物語のモチーフだったっけ?) 

 驚いてると、来客を知らせるチャイムが鳴った。 

 行くと、そこには見知らぬ女性が居たという。年齢は40~50代だろうか、身綺麗な美人だった。 

 女性は柔らかな笑みで、破魔矢の様な物を差し出した。 

(新しい物を持って来たんだ。これは、弟へだ) 

 直感的にアイリは思い、弟を呼び受け取らせた。女性は家を後にする。 

(大変、お礼を言わなくちゃ!) 

 アイリは追いかけた。
 外は雨が上がり、夕暮れが近いのか空は金色に輝いている。ゆっくり眺めていたい、と思うくらい綺麗だった。 

 自宅敷地内の屋敷稲荷にも、同じ破魔矢が置いてあった(現実には置いてない)。 

 女性の後ろ姿を見つけ、アイリは大声を出した。 

「ありがとう!」 

 女性は振り向いて、笑顔で応えた。 


 起きた時、アイリは泣きそうになったそうだ。 

 弟が生まれて、家族に蔑ろにされた気がしたり、気弱な弟と比べられ『お前が女じゃなく男だったら良かったのに』など軽口を叩かれたり…。
 アイリは物心ついてから、モヤモヤを抱いていたのだという。 


「家が嫌だとずっと思ってたけど、家にとっての私は『龍』みたいに大層な存在だったのかも、なんて、柄にも無く思って。
家を出るにあたって、盛大に送ってもらった気がしたんだ」 

 オカルトに興味のないアイリは、珍しくそう言った。 


 あの夢は、アイリが『これまでの人生』に自信を持って嫁入りしてもらう為に、見せられた夢ではないかと私は考える。 


 一男一女に恵まれたアイリは『跡取りだ』『女子だから』と区別せず、別け隔てなく2人の子供を育てている。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

処理中です...