38 / 153
38 じゃんけん
しおりを挟む
私が飲食店で働いていた頃の話。
接客中に知り合いと会った。高校の同級生のアオイだった。
アオイとは部活だけ一緒で、同じクラスになった事はなく、普段つるんでる友人も違ったので、あまり話した事がない。よく私を覚えていたな、と感心した。
「何時に仕事終わるの? ちょっとお茶しない?」
「終わるの午後6時だよ?」
今は昼過ぎだが、アオイは他で時間をつぶすという。
休憩中に高校時代の友人エリカへ『久しぶりにアオイと会ってお茶するんだ』と、何気なくメールすると、驚くべき返信が届いた。
『あの子、変なスピリチュアルの勧誘するらしいからやめな!』
私はそこで、アオイの目的に気が付いた。
(よく言うよね、全然会って無い知り合い程度の間柄なのに、急に近づいて来る奴はだいたいそうだって…)
悩んだ末、私は『発生したトラブルの処理を本社の上司と電話でやり取りする事になった』とアオイに直接言い、誘いを断った。
勿論、その後もアオイはよく店にやって来た。『今日も忙しいの?』『今日は何時上がり?』。客としてやって来るので無下に出来ず、私は疲弊した。
次第にアオイは『誰かに私の変な噂吹き込まれなかった?』『私、何かあなたにしたっけ?』などと、勘づいたのかネガティブな言い方をするようになった。
ある日、出勤すると店長が包みを見せてきた。アオイからだという。
中身は『忙しすぎて身体壊さないようにね!』のメッセージカードと、既製品のクッキー。
(やめてくれよ、完全にストーカーだよ!)
私はそれを見た瞬間、何か生温かいものが身体に絡みついたのを感じた。クッキーは悪いけど廃棄した。
その日彼女は来なかったものの、体調がおかしくなった。息苦しいような、怠いような…。
(これ、前もあったな。デキ婚した後輩と元同僚が、独身の私を勝手に羨ましがって、生き霊来たやつ)
夜は何者かに追われ、逃げ続ける夢を見た。心理的なものなのか、『生きた念』なのか、霊感の無い私には分からなかった。
翌日。出勤すると、今日から始まるイベントの説明を受けた。
会計時に客とじゃんけんして、客が買ったらドリンク無料券を進呈するという。
そして会計を私が担当している間、客とじゃんけんしたのだが。
「お姉さん、さっきからずっと負けないよね? すごいね!」
10組目の客に言われるまで気付かなかったが、私はじゃんけんで客にずっと勝ち続けていた。昼時の1時間、約30組の客と勝負したが、負けたのは4回だけ。
クレームを恐れた店長が、あいこでも無料券を渡すよう、ルールを変更。だが自分でもドン引きするぐらい、あいこすらも出る事無く、じゃんけんに勝ち続けた。
子供の頃から現在まで、数え切れないほどじゃんけんはしてきたが、そこまで強かった覚えは無い。
帰宅時。ふと気づくと、あの怠さは無くなっていた。
(何だろう。不思議体験をしたせいで気が紛れたのかな?)
家族と試しにじゃんけんしたが、勝率は普通に戻っていた。翌日の勤務時も、じゃんけんの勝率は普通。
(あの神懸かったじゃんけんの強さは何だったのだろう?)
そして、アオイは店に来なくなった。
これは仮説だが、『神懸かり』では無く、『生き霊懸かり?』の私は、自分とアオイの生き霊の2人分の力を使い、じゃんけんに勝ち続けたのではないか?
何故か力を大量消費したアオイは、生き霊を送るのを止めたとか。
ならば、生き霊に悩まされたら、数えきれないほど沢山じゃんけんをすればいいのだろうか。
そして、アオイとはまた違った形で再会する事になるのだった。
※紹介した方法は正当な方法ではないので、決して真似しないで下さい。真似した場合に発生したいかなる損害に対しても、こちらは責任を負いません。
接客中に知り合いと会った。高校の同級生のアオイだった。
アオイとは部活だけ一緒で、同じクラスになった事はなく、普段つるんでる友人も違ったので、あまり話した事がない。よく私を覚えていたな、と感心した。
「何時に仕事終わるの? ちょっとお茶しない?」
「終わるの午後6時だよ?」
今は昼過ぎだが、アオイは他で時間をつぶすという。
休憩中に高校時代の友人エリカへ『久しぶりにアオイと会ってお茶するんだ』と、何気なくメールすると、驚くべき返信が届いた。
『あの子、変なスピリチュアルの勧誘するらしいからやめな!』
私はそこで、アオイの目的に気が付いた。
(よく言うよね、全然会って無い知り合い程度の間柄なのに、急に近づいて来る奴はだいたいそうだって…)
悩んだ末、私は『発生したトラブルの処理を本社の上司と電話でやり取りする事になった』とアオイに直接言い、誘いを断った。
勿論、その後もアオイはよく店にやって来た。『今日も忙しいの?』『今日は何時上がり?』。客としてやって来るので無下に出来ず、私は疲弊した。
次第にアオイは『誰かに私の変な噂吹き込まれなかった?』『私、何かあなたにしたっけ?』などと、勘づいたのかネガティブな言い方をするようになった。
ある日、出勤すると店長が包みを見せてきた。アオイからだという。
中身は『忙しすぎて身体壊さないようにね!』のメッセージカードと、既製品のクッキー。
(やめてくれよ、完全にストーカーだよ!)
私はそれを見た瞬間、何か生温かいものが身体に絡みついたのを感じた。クッキーは悪いけど廃棄した。
その日彼女は来なかったものの、体調がおかしくなった。息苦しいような、怠いような…。
(これ、前もあったな。デキ婚した後輩と元同僚が、独身の私を勝手に羨ましがって、生き霊来たやつ)
夜は何者かに追われ、逃げ続ける夢を見た。心理的なものなのか、『生きた念』なのか、霊感の無い私には分からなかった。
翌日。出勤すると、今日から始まるイベントの説明を受けた。
会計時に客とじゃんけんして、客が買ったらドリンク無料券を進呈するという。
そして会計を私が担当している間、客とじゃんけんしたのだが。
「お姉さん、さっきからずっと負けないよね? すごいね!」
10組目の客に言われるまで気付かなかったが、私はじゃんけんで客にずっと勝ち続けていた。昼時の1時間、約30組の客と勝負したが、負けたのは4回だけ。
クレームを恐れた店長が、あいこでも無料券を渡すよう、ルールを変更。だが自分でもドン引きするぐらい、あいこすらも出る事無く、じゃんけんに勝ち続けた。
子供の頃から現在まで、数え切れないほどじゃんけんはしてきたが、そこまで強かった覚えは無い。
帰宅時。ふと気づくと、あの怠さは無くなっていた。
(何だろう。不思議体験をしたせいで気が紛れたのかな?)
家族と試しにじゃんけんしたが、勝率は普通に戻っていた。翌日の勤務時も、じゃんけんの勝率は普通。
(あの神懸かったじゃんけんの強さは何だったのだろう?)
そして、アオイは店に来なくなった。
これは仮説だが、『神懸かり』では無く、『生き霊懸かり?』の私は、自分とアオイの生き霊の2人分の力を使い、じゃんけんに勝ち続けたのではないか?
何故か力を大量消費したアオイは、生き霊を送るのを止めたとか。
ならば、生き霊に悩まされたら、数えきれないほど沢山じゃんけんをすればいいのだろうか。
そして、アオイとはまた違った形で再会する事になるのだった。
※紹介した方法は正当な方法ではないので、決して真似しないで下さい。真似した場合に発生したいかなる損害に対しても、こちらは責任を負いません。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる