我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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38 じゃんけん

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 私が飲食店で働いていた頃の話。 


 接客中に知り合いと会った。高校の同級生のアオイだった。 

 アオイとは部活だけ一緒で、同じクラスになった事はなく、普段つるんでる友人も違ったので、あまり話した事がない。よく私を覚えていたな、と感心した。 

「何時に仕事終わるの? ちょっとお茶しない?」 

「終わるの午後6時だよ?」 

 今は昼過ぎだが、アオイは他で時間をつぶすという。 

 休憩中に高校時代の友人エリカへ『久しぶりにアオイと会ってお茶するんだ』と、何気なくメールすると、驚くべき返信が届いた。 

『あの子、変なスピリチュアルの勧誘するらしいからやめな!』

 私はそこで、アオイの目的に気が付いた。 

(よく言うよね、全然会って無い知り合い程度の間柄なのに、急に近づいて来る奴はだいたいそうだって…) 

 悩んだ末、私は『発生したトラブルの処理を本社の上司と電話でやり取りする事になった』とアオイに直接言い、誘いを断った。 


 勿論、その後もアオイはよく店にやって来た。『今日も忙しいの?』『今日は何時上がり?』。客としてやって来るので無下に出来ず、私は疲弊した。 

 次第にアオイは『誰かに私の変な噂吹き込まれなかった?』『私、何かあなたにしたっけ?』などと、勘づいたのかネガティブな言い方をするようになった。 

 ある日、出勤すると店長が包みを見せてきた。アオイからだという。
 中身は『忙しすぎて身体壊さないようにね!』のメッセージカードと、既製品のクッキー。 

(やめてくれよ、完全にストーカーだよ!) 

 私はそれを見た瞬間、何か生温かいものが身体に絡みついたのを感じた。クッキーは悪いけど廃棄した。 

 その日彼女は来なかったものの、体調がおかしくなった。息苦しいような、怠いような…。 

(これ、前もあったな。デキ婚した後輩と元同僚が、独身の私を勝手に羨ましがって、生き霊来たやつ) 

 夜は何者かに追われ、逃げ続ける夢を見た。心理的なものなのか、『生きた念』なのか、霊感の無い私には分からなかった。 


 翌日。出勤すると、今日から始まるイベントの説明を受けた。 

 会計時に客とじゃんけんして、客が買ったらドリンク無料券を進呈するという。
 そして会計を私が担当している間、客とじゃんけんしたのだが。 

「お姉さん、さっきからずっと負けないよね? すごいね!」 

 10組目の客に言われるまで気付かなかったが、私はじゃんけんで客にずっと勝ち続けていた。昼時の1時間、約30組の客と勝負したが、負けたのは4回だけ。 

 クレームを恐れた店長が、あいこでも無料券を渡すよう、ルールを変更。だが自分でもドン引きするぐらい、あいこすらも出る事無く、じゃんけんに勝ち続けた。 

 子供の頃から現在まで、数え切れないほどじゃんけんはしてきたが、そこまで強かった覚えは無い。 


 帰宅時。ふと気づくと、あの怠さは無くなっていた。 

(何だろう。不思議体験をしたせいで気が紛れたのかな?) 

 家族と試しにじゃんけんしたが、勝率は普通に戻っていた。翌日の勤務時も、じゃんけんの勝率は普通。 

(あの神懸かったじゃんけんの強さは何だったのだろう?) 

 そして、アオイは店に来なくなった。 


 これは仮説だが、『神懸かり』では無く、『生き霊懸かり?』の私は、自分とアオイの生き霊の2人分の力を使い、じゃんけんに勝ち続けたのではないか? 

 何故か力を大量消費したアオイは、生き霊を送るのを止めたとか。
 ならば、生き霊に悩まされたら、数えきれないほど沢山じゃんけんをすればいいのだろうか。 


 そして、アオイとはまた違った形で再会する事になるのだった。 



※紹介した方法は正当な方法ではないので、決して真似しないで下さい。真似した場合に発生したいかなる損害に対しても、こちらは責任を負いません。

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