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リスク ※犯罪表現あり
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職場の後輩:チハルが、国際結婚する事になった。
旦那さんは両親が日本人だが、生まれと育ちが外国で日本国籍保有者ではないので、純和風の見た目で外国人なのだという。
「都子さんにはとてもお世話になったので、彼を紹介したいんです」
表面上は好意で言ってるが、当面予定の無い私への当てつけであるのは明白だった。
「ご自由にどうぞ~」
とはいえ、趣味が他人の学歴批判と自分の偏差値自慢というチハルを選んだ『彼』には、興味があった。
2人が私の自宅に来る当日のこと。母が新聞のお悔やみ欄を見せつつ言って来た。
「これ見て」
最近、外国籍の人も掲載するようになったのだが、そこには『チハル・シュバイン』とのチハルの結婚後の名前があった。
記事によると死去は3日前。チハルとは先ほどもメールをやり取りしていたので、恐らく違うだろう。
「すごいな、何という偶然」
「どうした?」
父が足を止めたので、説明する。
「今日これから来る国際結婚した後輩と、同姓同名の人がお悔やみ欄載ってる」
すると父はこう言った。
「最近さ、市町村の弔慰金の支給を外国籍の人まで拡大しただろう? 金を騙し取るために虚偽申請が相次いでるんだって」
「へえ」
「聞く話では、偽装結婚とか逆に離婚とか、養子縁組やなんかで知らない内に人の籍を悪用するんだって。大丈夫だろうけど、その人にも聞いてみたら?」
「弔慰金ってそんなに貰えるの?」
「いや、1万円弱」
そんなはした金欲しさに犯罪に手を染める人が居るのか。
(まあ、チハルに限ってないだろう。これはきっと同姓同名だな)
間もなくチハルが自慢の夫と共に来た。馴れ初めや世間話をしてる時に、私は切り出した。
「そうそう、ちょっとこれ見て」
2人に新聞を見せ、私は続けた。
「新聞のお悔やみ欄に、たまたま同姓同名の人が載ってるの。前に役場関係の知り合いが『最近弔慰金詐欺で籍を悪用する輩が居る』って言ったの思い出してさ。
市町村の弔慰金なんて僅かな金の為に犯罪なんて、リスクの高い事する奴居るのかしらね?」
私は笑い話のネタとして言ったつもりだったのだが、チハルとその夫は表情が強張り手も震え、やたらキョロキョロしている。
(え?どうした)
チハルは震える手で新聞を返し、
「そ、そうですね、同姓同名ですよ」
(怪しい。何その挙動…)
「あ、ちょっと待ってて。犬にオヤツあげる時間だから」
私はさり気なくスマホをポケットにしまい、立ち上がる。
「じゃあ、私達もそろそろ…」
自分の視界から、スマホごと私が消えるのを恐れているかの様なチハルの言動に、私は笑って返す。
「いいよぉ、座っててよ! まだプロポーズの話聞いてないし」
たっぷり惚気話を聞かせようと自分で提案したのが、仇になった。だがチハルは引き下がらない。
「じゃ、じゃあ、私もオヤツあげるの同伴します!」
「あれ? チハル、犬アレルギーだったよね? さっきだって『犬の近く通らないように家に入れて欲しい』って言ったし」
「…それは、えっと…」
狼狽えるチハルに私は笑顔を向け、そっとポケットに手を入れ、予め作成していた父宛てのメールを送信した。
(通報は、何も目の前の私だけがするものじゃないんだよ?)
旦那さんは両親が日本人だが、生まれと育ちが外国で日本国籍保有者ではないので、純和風の見た目で外国人なのだという。
「都子さんにはとてもお世話になったので、彼を紹介したいんです」
表面上は好意で言ってるが、当面予定の無い私への当てつけであるのは明白だった。
「ご自由にどうぞ~」
とはいえ、趣味が他人の学歴批判と自分の偏差値自慢というチハルを選んだ『彼』には、興味があった。
2人が私の自宅に来る当日のこと。母が新聞のお悔やみ欄を見せつつ言って来た。
「これ見て」
最近、外国籍の人も掲載するようになったのだが、そこには『チハル・シュバイン』とのチハルの結婚後の名前があった。
記事によると死去は3日前。チハルとは先ほどもメールをやり取りしていたので、恐らく違うだろう。
「すごいな、何という偶然」
「どうした?」
父が足を止めたので、説明する。
「今日これから来る国際結婚した後輩と、同姓同名の人がお悔やみ欄載ってる」
すると父はこう言った。
「最近さ、市町村の弔慰金の支給を外国籍の人まで拡大しただろう? 金を騙し取るために虚偽申請が相次いでるんだって」
「へえ」
「聞く話では、偽装結婚とか逆に離婚とか、養子縁組やなんかで知らない内に人の籍を悪用するんだって。大丈夫だろうけど、その人にも聞いてみたら?」
「弔慰金ってそんなに貰えるの?」
「いや、1万円弱」
そんなはした金欲しさに犯罪に手を染める人が居るのか。
(まあ、チハルに限ってないだろう。これはきっと同姓同名だな)
間もなくチハルが自慢の夫と共に来た。馴れ初めや世間話をしてる時に、私は切り出した。
「そうそう、ちょっとこれ見て」
2人に新聞を見せ、私は続けた。
「新聞のお悔やみ欄に、たまたま同姓同名の人が載ってるの。前に役場関係の知り合いが『最近弔慰金詐欺で籍を悪用する輩が居る』って言ったの思い出してさ。
市町村の弔慰金なんて僅かな金の為に犯罪なんて、リスクの高い事する奴居るのかしらね?」
私は笑い話のネタとして言ったつもりだったのだが、チハルとその夫は表情が強張り手も震え、やたらキョロキョロしている。
(え?どうした)
チハルは震える手で新聞を返し、
「そ、そうですね、同姓同名ですよ」
(怪しい。何その挙動…)
「あ、ちょっと待ってて。犬にオヤツあげる時間だから」
私はさり気なくスマホをポケットにしまい、立ち上がる。
「じゃあ、私達もそろそろ…」
自分の視界から、スマホごと私が消えるのを恐れているかの様なチハルの言動に、私は笑って返す。
「いいよぉ、座っててよ! まだプロポーズの話聞いてないし」
たっぷり惚気話を聞かせようと自分で提案したのが、仇になった。だがチハルは引き下がらない。
「じゃ、じゃあ、私もオヤツあげるの同伴します!」
「あれ? チハル、犬アレルギーだったよね? さっきだって『犬の近く通らないように家に入れて欲しい』って言ったし」
「…それは、えっと…」
狼狽えるチハルに私は笑顔を向け、そっとポケットに手を入れ、予め作成していた父宛てのメールを送信した。
(通報は、何も目の前の私だけがするものじゃないんだよ?)
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