漆黒の夜は極彩色の夢を 〜夢日記ショート·ショート~

羽瀬川璃紗

文字の大きさ
64 / 132

リスク ※犯罪表現あり

しおりを挟む
 職場の後輩:チハルが、国際結婚する事になった。 

 旦那さんは両親が日本人だが、生まれと育ちが外国で日本国籍保有者ではないので、純和風の見た目で外国人なのだという。 

「都子さんにはとてもお世話になったので、彼を紹介したいんです」 

 表面上は好意で言ってるが、当面予定の無い私への当てつけであるのは明白だった。 

「ご自由にどうぞ~」 

 とはいえ、趣味が他人の学歴批判と自分の偏差値自慢というチハルを選んだ『彼』には、興味があった。 


 2人が私の自宅に来る当日のこと。母が新聞のお悔やみ欄を見せつつ言って来た。 

「これ見て」 

 最近、外国籍の人も掲載するようになったのだが、そこには『チハル・シュバイン』とのチハルの結婚後の名前があった。 

 記事によると死去は3日前。チハルとは先ほどもメールをやり取りしていたので、恐らく違うだろう。 

「すごいな、何という偶然」 

「どうした?」 

 父が足を止めたので、説明する。 

「今日これから来る国際結婚した後輩と、同姓同名の人がお悔やみ欄載ってる」 

 すると父はこう言った。 

「最近さ、市町村の弔慰金の支給を外国籍の人まで拡大しただろう? 金を騙し取るために虚偽申請が相次いでるんだって」 

「へえ」 

「聞く話では、偽装結婚とか逆に離婚とか、養子縁組やなんかで知らない内に人の籍を悪用するんだって。大丈夫だろうけど、その人にも聞いてみたら?」 

「弔慰金ってそんなに貰えるの?」 

「いや、1万円弱」 

 そんなはした金欲しさに犯罪に手を染める人が居るのか。 

(まあ、チハルに限ってないだろう。これはきっと同姓同名だな) 


 間もなくチハルが自慢の夫と共に来た。馴れ初めや世間話をしてる時に、私は切り出した。 

「そうそう、ちょっとこれ見て」 

 2人に新聞を見せ、私は続けた。 

「新聞のお悔やみ欄に、たまたま同姓同名の人が載ってるの。前に役場関係の知り合いが『最近弔慰金詐欺で籍を悪用する輩が居る』って言ったの思い出してさ。
市町村の弔慰金なんて僅かな金の為に犯罪なんて、リスクの高い事する奴居るのかしらね?」 

 私は笑い話のネタとして言ったつもりだったのだが、チハルとその夫は表情が強張り手も震え、やたらキョロキョロしている。 

(え?どうした) 

 チハルは震える手で新聞を返し、 

「そ、そうですね、同姓同名ですよ」 

(怪しい。何その挙動…) 

「あ、ちょっと待ってて。犬にオヤツあげる時間だから」 

 私はさり気なくスマホをポケットにしまい、立ち上がる。 

「じゃあ、私達もそろそろ…」 

 自分の視界から、スマホごと私が消えるのを恐れているかの様なチハルの言動に、私は笑って返す。 

「いいよぉ、座っててよ! まだプロポーズの話聞いてないし」 

 たっぷり惚気話を聞かせようと自分で提案したのが、仇になった。だがチハルは引き下がらない。 

「じゃ、じゃあ、私もオヤツあげるの同伴します!」 

「あれ? チハル、犬アレルギーだったよね? さっきだって『犬の近く通らないように家に入れて欲しい』って言ったし」 

「…それは、えっと…」 

 狼狽えるチハルに私は笑顔を向け、そっとポケットに手を入れ、予め作成していた父宛てのメールを送信した。 

(通報は、何も目の前の私だけがするものじゃないんだよ?) 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鳴瀬ゆず子の社外秘備忘録 〜掃除のおばさんは見た~

羽瀬川璃紗
経済・企業
清掃員:鳴瀬ゆず子(68)が目の当たりにした、色んな職場の裏事情や騒動の記録。 ※この物語はフィクションです。登場する団体・人物は架空のものであり、実在のものとは何の関係もありません。 ※ストーリー展開上、個人情報や機密の漏洩など就業規則違反の描写がありますが、正当化や教唆の意図はありません。 注意事項はタイトル欄併記。続き物もありますが、基本的に1話完結、どの話からお読み頂いても大丈夫です。 26年1月限定で毎週金曜22時更新。 次回の限定更新は26年3月を予定しております。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...