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足元
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私は、イベントに参加していた。
イベントは『カプセルトイ』の会社主催の第1回ファンミーティング的な物で、内容はシークレット。
参加資格もカプセルトイの機械を回し、『当たり』の出た人だけという、どこまでもカプセルトイにこだわった仕様となっているらしい。
私は夫と娘と会場に来たが、夫と娘が『はずれ』で私1人が当たってしまった。
「カノン、パパと外で待っててね。モニターで中継されるから、その辺でアイスでも食べて見てて」
「あーあ、カノン行きたかったなあ」
「仕方ないよ、子供1人では行けないし」
私は夫に娘の手荷物を渡し、係員の元へ向かった。
通された部屋には、小学校高学年から70代くらいの男女約20名が待機していた。進行役と思しき男が、配信スタッフと共に入室し、イベントの生配信が開始。
「この度は、カプセルトイファンのためのカプセルトイづくし記念イベントに参加頂き、誠にありがとうございます!『カプセルトイ』による厳正な抽選の結果、ここに20名のファイナリストが集結致しました」
我々の座席の向かい側には、大きなモニターが設置され、配信の様子と共に会場の外の観客達も映し出されていた。
(娘たちもこの映像見ているのかな…)
そんな事を考える私の前に、何の変哲もない白と黒のカプセルトイの機械2つが運ばれてくる。進行役は説明を始めた。
「今からこのファイナリスト達に、白いマシーンでチームと順番の書いてあるカプセルをひいて貰い、組み分けします。更に黒いマシーンを1回ずつ回して、出た物のレア度の高さによって勝敗が決まる、『カプセルトイバトル』を行なって貰います!」
モニター画面には、『カプセルトイファンによるカプセルトイにおけるカプセルトイバトル!!』との書き文字が合成され、BGMが流れた。
(へー、観客の『引き運』頼みのイベントか。見てて面白いかな、これ)
シンプル過ぎる内容を素人ながら心配する私をよそに、進行役は黒い機械に触れつつ、口を開いた。
「こちらの機械には、カプセルトイを日本で最初に作ったA社の、これまでの傑作選とも言われる『品』が中に入っています。
そして、その品全てに独自のレア度を設定しました。中には激レアも入っておりますが、誰が何を引くのか、引かないまま終わるのかすらも我々には分かりません。
何が出るか分からないからカプセルトイは面白い、皆様そう思いませんか?」
ノリ方の分からないファイナリスト達だが、会場の外の観客達は総立ちで盛り上がってる様だ。組み分けカプセルを引いた結果、私は後攻チームの1番最後となってしまった。
(何で今日に限ってこういう『運』がついているんだよ…)
苦笑する私をよそに、バトルスタート。先攻チームが1人ずつカプセルを引き、それぞれ一斉に開封する。
「まずは1人目、90年代後半製『クリスタルミニフィギュア』!! こちらのシリーズは当時としてはかなり短い2ヶ月間だけの販売でした。レア度はBランク、まずは100点です!」
進行役はカメラに物品をかざし、事細かに説明をする。ランクごとに点数を加算し、先攻チームの総得点は3750点となった。
次に私達後攻チームのカプセル開封となったが、アクシデント発生。私の隣に居た女子中学生が、うまく開封出来ず手こずってしまった。
思わず私が手を貸し、無事開封。ところが、目の前の台に置いた筈の、私が引き当てた物品が無い。
(あ、手伝う時に無意識にポケットに入れちゃった…?)
慌ててポケットの物を出すと、彼はそれを見て目を点にした。
「お、これは…?」
彼は怪訝な表情になると、別のスタッフを呼んだ。その他にも何名かが集まってくる。進行役はカメラにこう説明した。
「ちょっとお待ちくださいね…」
(え、何?こういう演出別に要らないんだけど)
『これ何?レア度いくつのやつ?』
『いや、こんなんあったっけ?』
カメラが引くと、スタッフは口々に呟いた。物品を見た私は驚いた。
(…噓でしょ)
そこには、先日娘が作った『ビー玉2個を接着剤で付けて作った小さな雪ダルマ』があったのだ。
(前回この服を着た時に、受け取ってそのままだったんだ。え、じゃああたしがひいたやつは?)
ふと見た足元には、小さなキーホルダーが落ちていた。私の鼓動が早くなる。
(誰も気づいてないの?え、どうしよう)
カメラも場内の参加者もスタッフも、台の上ばかりを見ていて、私の足元など見ていない。沈黙の後、進行役は叫んだ。
「おめでとうございます! SSランクです!! ついに出ましたぁーー!」
イベントは『カプセルトイ』の会社主催の第1回ファンミーティング的な物で、内容はシークレット。
参加資格もカプセルトイの機械を回し、『当たり』の出た人だけという、どこまでもカプセルトイにこだわった仕様となっているらしい。
私は夫と娘と会場に来たが、夫と娘が『はずれ』で私1人が当たってしまった。
「カノン、パパと外で待っててね。モニターで中継されるから、その辺でアイスでも食べて見てて」
「あーあ、カノン行きたかったなあ」
「仕方ないよ、子供1人では行けないし」
私は夫に娘の手荷物を渡し、係員の元へ向かった。
通された部屋には、小学校高学年から70代くらいの男女約20名が待機していた。進行役と思しき男が、配信スタッフと共に入室し、イベントの生配信が開始。
「この度は、カプセルトイファンのためのカプセルトイづくし記念イベントに参加頂き、誠にありがとうございます!『カプセルトイ』による厳正な抽選の結果、ここに20名のファイナリストが集結致しました」
我々の座席の向かい側には、大きなモニターが設置され、配信の様子と共に会場の外の観客達も映し出されていた。
(娘たちもこの映像見ているのかな…)
そんな事を考える私の前に、何の変哲もない白と黒のカプセルトイの機械2つが運ばれてくる。進行役は説明を始めた。
「今からこのファイナリスト達に、白いマシーンでチームと順番の書いてあるカプセルをひいて貰い、組み分けします。更に黒いマシーンを1回ずつ回して、出た物のレア度の高さによって勝敗が決まる、『カプセルトイバトル』を行なって貰います!」
モニター画面には、『カプセルトイファンによるカプセルトイにおけるカプセルトイバトル!!』との書き文字が合成され、BGMが流れた。
(へー、観客の『引き運』頼みのイベントか。見てて面白いかな、これ)
シンプル過ぎる内容を素人ながら心配する私をよそに、進行役は黒い機械に触れつつ、口を開いた。
「こちらの機械には、カプセルトイを日本で最初に作ったA社の、これまでの傑作選とも言われる『品』が中に入っています。
そして、その品全てに独自のレア度を設定しました。中には激レアも入っておりますが、誰が何を引くのか、引かないまま終わるのかすらも我々には分かりません。
何が出るか分からないからカプセルトイは面白い、皆様そう思いませんか?」
ノリ方の分からないファイナリスト達だが、会場の外の観客達は総立ちで盛り上がってる様だ。組み分けカプセルを引いた結果、私は後攻チームの1番最後となってしまった。
(何で今日に限ってこういう『運』がついているんだよ…)
苦笑する私をよそに、バトルスタート。先攻チームが1人ずつカプセルを引き、それぞれ一斉に開封する。
「まずは1人目、90年代後半製『クリスタルミニフィギュア』!! こちらのシリーズは当時としてはかなり短い2ヶ月間だけの販売でした。レア度はBランク、まずは100点です!」
進行役はカメラに物品をかざし、事細かに説明をする。ランクごとに点数を加算し、先攻チームの総得点は3750点となった。
次に私達後攻チームのカプセル開封となったが、アクシデント発生。私の隣に居た女子中学生が、うまく開封出来ず手こずってしまった。
思わず私が手を貸し、無事開封。ところが、目の前の台に置いた筈の、私が引き当てた物品が無い。
(あ、手伝う時に無意識にポケットに入れちゃった…?)
慌ててポケットの物を出すと、彼はそれを見て目を点にした。
「お、これは…?」
彼は怪訝な表情になると、別のスタッフを呼んだ。その他にも何名かが集まってくる。進行役はカメラにこう説明した。
「ちょっとお待ちくださいね…」
(え、何?こういう演出別に要らないんだけど)
『これ何?レア度いくつのやつ?』
『いや、こんなんあったっけ?』
カメラが引くと、スタッフは口々に呟いた。物品を見た私は驚いた。
(…噓でしょ)
そこには、先日娘が作った『ビー玉2個を接着剤で付けて作った小さな雪ダルマ』があったのだ。
(前回この服を着た時に、受け取ってそのままだったんだ。え、じゃああたしがひいたやつは?)
ふと見た足元には、小さなキーホルダーが落ちていた。私の鼓動が早くなる。
(誰も気づいてないの?え、どうしよう)
カメラも場内の参加者もスタッフも、台の上ばかりを見ていて、私の足元など見ていない。沈黙の後、進行役は叫んだ。
「おめでとうございます! SSランクです!! ついに出ましたぁーー!」
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