漆黒の夜は極彩色の夢を 〜夢日記ショート·ショート~

羽瀬川璃紗

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いにしえの約束と言うものは

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 私は、ある屋敷の使用人として雇い入れられた。

「いいね。この浅見家での、しきたりをちゃんと守るんだよ。そうすれば長生き出来るからね」

「…はい」


 浅見家は、暗い印象でとても大きな旧家だった。そして、呪われていた。
 この家は、当主を含めた一族と使用人、全員が30歳を迎える前に死んでしまう。そんな恐怖の屋敷だった。

(親族だけなら遺伝性の病と想像つくけど、使用人もだからたまったもんじゃないよな)

 身寄りがなく孤児院育ちの私は、溜息をつき門をくぐった。


「戦国時代に、当時の当主が人を斬り過ぎたって話だよ。この呪いはそれが始まり」

 先輩使用人が洗濯中に軽口を叩くと、別の使用人が口を尖らす。

「それで呪いになるなら、先の戦争はどうなるのよ。国のお偉いさんは生きててピンピンしとるよ」

 使用人達は早死を恐れ、みな早々にここを離れるらしい。使用人は離れて難を逃れられるられるから、まだいい。
 浅見家で生まれ育ったある女性は、20代前半で嫁いで30歳手前で病気で命を落とした。
 また逆に、他所で生まれここに嫁いだり養子で来た者も、不慮の事故死や心を病んで自殺した。


(相当な呪い、かあ)

 ある夜、私は夢を見た。夢の中で私は、いい所のお嬢様だった。婚約者が居て、両家公認の逢瀬を重ねていた。とても幸せな時間を過ごしていた。

 婚約者から『結婚を先延ばしにしたい』との旨があった。留学をするためだ。婚約者の帰りを待つ私は、いつしか29歳となっていた。
 やっと婚約者が帰国、するとその父は『もっと齢若い嫁を貰うべき』と、一方的に婚約を破棄してきた。
 破棄の撤回をお願いに向かった私は、道中で何者かに斬り殺されてしまった。それは、婚約者の父が差し向けた者だった。


 夢から覚めた私は寝間着のまま、ある所へ向かった。屋敷稲荷の祠の傍、樫の木の根元を掘り返す。

(私がこの屋敷に来る事は、必然だったのだ)
(私は、呪いを終わらせる役目がある)

 手を泥まみれにして掘り当てたそれは、銀色のかんざしであった。

 婚約者は留学前、前世の私のかんざしをここへ埋めた。帰国後に結婚をして、夫婦になったら掘り出そうと言った。
 婚約者は私亡き後に他の女性と結婚したが、生まれた子供も孫も、彼やその父親より先にみな亡くなった。
 彼らは嫌と言うほど子孫を見送ってから、天寿を全うした。

 明るくなる東の空を、私は眺めた。

(あーあ、2人で掘り出したかったな)
(いや、)
(散々待たせた上に、若い子に乗り換えろって父親の言いなりになる男なんか、)
(要らねえっての)

 私は朝日を見ながら笑った。

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