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無へと返そう
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「危ない!!」『ドスン』
男性の叫び声と大きな音に、歩いていた私と友人ナナミは振り向いた。歩道には80代くらいの高齢女性が倒れていて、人が集まる。
50代くらいの男性が青ざめた顔で言った。
「上の階から落ちてきたよ…。嘘だろ」
60歳前後の女性が声をかける。
「もしもーし! 大丈夫?」
高齢女性は頭から血を流し、ピクリともしない。30代くらいのサラリーマンがスマホを取り出す。
「ともかく救急車だ。動かさない方がいいかも」
高齢女性が落ちてきたと見られる建物は、1階がテナントの集合住宅だ。ナナミは言った。
「ここの住民なんじゃない? 家族が居るかも」
私達は親族を探しに、その古い集合住宅へ入った。管理人室は無く、郵便ポストを見ても名札があるのは15室のうち3,4室だけ。
(限界集落みたいなところだな)
1軒目をノックするが、留守なのか返事が無い。呼び鈴を押したが反応も無い。すると共用通路の向こう、事故現場から声が上がった。
思わず私が覗き込むと、50代くらいの男と60前後の女性が辺りを見渡し、喚いてる。
「ねえ、さっき救急車呼んでくれてた人は?」
「どこ行った? 救急車は?」
(あれ?どこ行ったんだろ。誘導しに離れた?)
気にはなったが、2軒目。こちらも反応無し。また、現場で声が上がった。60前後の女性だ。
「すいません、誰か? 誰か来て下さい!」
現場に居るのは、落ちた老婆と介抱するその女性の2人だけだ。ナナミも気づいて目を細める。
「ちょっとちょっと、皆さんどこ行っちゃったの」
「おじちゃんもお兄さんも居ないし」
「あっち行って手伝うわ。都子、残りの家お願い」
ナナミは慌てて階段を駆け下りる。現場に合流するのを見届け、私は上階へ。
ノックをした瞬間、ナナミの声がした。
「都子!」
通路から見下ろすと、老婆とナナミの2人だけが居た。
「え? あの奥様は?」
「分かんない! 振り返ったら居なくなった」
私は異変に気付いた。この白昼、騒ぎに気付いて寄ってきた人々は他にも居たのに、辺りには誰の姿も無いのだ。私はナナミに叫んだ。
「なっちゃん! すぐそこから離れて、ヤバいかも!」
「でも」
「待って、そっち行く!」
私は大急ぎで階段を駆け下りた。だが。
現場にナナミの姿は既に無く、老婆とその前に佇む初老の女性が居た。
初老の女性は、こちらを見て言った。
「何で、この人を助けるの?」
「え…」
「この人はね、最低最悪の母親なのよ。自分以外の人間を奴隷としか思ってない人なの。なのに、何でみんなで助けようとするの?」
皆を消していったこの人は、彼女の娘なのか。私は言った。
「…邪魔者を消しても、あなたは救われないよ」
初老の女性は、鼻で笑うと私に言った。
「やっぱりあなたも邪魔者ね」
消えゆく私。けれど私はある事を知っていた。
私を消すと、私が見ている夢の終焉と共にあの母娘も消える。そして、憎しみが癒される事が永久に出来なくなるのだ。
男性の叫び声と大きな音に、歩いていた私と友人ナナミは振り向いた。歩道には80代くらいの高齢女性が倒れていて、人が集まる。
50代くらいの男性が青ざめた顔で言った。
「上の階から落ちてきたよ…。嘘だろ」
60歳前後の女性が声をかける。
「もしもーし! 大丈夫?」
高齢女性は頭から血を流し、ピクリともしない。30代くらいのサラリーマンがスマホを取り出す。
「ともかく救急車だ。動かさない方がいいかも」
高齢女性が落ちてきたと見られる建物は、1階がテナントの集合住宅だ。ナナミは言った。
「ここの住民なんじゃない? 家族が居るかも」
私達は親族を探しに、その古い集合住宅へ入った。管理人室は無く、郵便ポストを見ても名札があるのは15室のうち3,4室だけ。
(限界集落みたいなところだな)
1軒目をノックするが、留守なのか返事が無い。呼び鈴を押したが反応も無い。すると共用通路の向こう、事故現場から声が上がった。
思わず私が覗き込むと、50代くらいの男と60前後の女性が辺りを見渡し、喚いてる。
「ねえ、さっき救急車呼んでくれてた人は?」
「どこ行った? 救急車は?」
(あれ?どこ行ったんだろ。誘導しに離れた?)
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「すいません、誰か? 誰か来て下さい!」
現場に居るのは、落ちた老婆と介抱するその女性の2人だけだ。ナナミも気づいて目を細める。
「ちょっとちょっと、皆さんどこ行っちゃったの」
「おじちゃんもお兄さんも居ないし」
「あっち行って手伝うわ。都子、残りの家お願い」
ナナミは慌てて階段を駆け下りる。現場に合流するのを見届け、私は上階へ。
ノックをした瞬間、ナナミの声がした。
「都子!」
通路から見下ろすと、老婆とナナミの2人だけが居た。
「え? あの奥様は?」
「分かんない! 振り返ったら居なくなった」
私は異変に気付いた。この白昼、騒ぎに気付いて寄ってきた人々は他にも居たのに、辺りには誰の姿も無いのだ。私はナナミに叫んだ。
「なっちゃん! すぐそこから離れて、ヤバいかも!」
「でも」
「待って、そっち行く!」
私は大急ぎで階段を駆け下りた。だが。
現場にナナミの姿は既に無く、老婆とその前に佇む初老の女性が居た。
初老の女性は、こちらを見て言った。
「何で、この人を助けるの?」
「え…」
「この人はね、最低最悪の母親なのよ。自分以外の人間を奴隷としか思ってない人なの。なのに、何でみんなで助けようとするの?」
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「…邪魔者を消しても、あなたは救われないよ」
初老の女性は、鼻で笑うと私に言った。
「やっぱりあなたも邪魔者ね」
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