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つまらない話
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朝、目が覚めると枕元に僕の人生の台本が置かれていた。
一ページ目には『こくう』という僕の名前と『ルリ』という幼馴染の名前が書いてあった。まだまだ靄がかかった頭でもこれが嘘ではないことは不思議と分かったんだ。なんというか、明らかに異質な感じがした。例えるなら異世界の産物を見ているようだった。これを読み進めるほどの勇気がなくて、僕はまた布団に潜り込んだんだが、大学の講義があることを思い出して無理やりにでも起きなきゃいけなくなった。
眠い目をこすりながら洗面所に行って顔を軽く洗う。居間に戻ってバッグに教科書やら筆箱やらを詰め込んで、机の上の電子時計に目をやると、七時半を指していた。自転車通というのもあって時間はまだ余っていた。だから僕はこの時間を使って日記を読み返すことにした。その日記帳は二年間お世話になっているもので、表紙は色あせ所々ページの角は折れていた。
一ページ目を開くとこんなことが書かれてあった。
八月十五日
最近、時間が経つのが早く感じる。それが何となく怖いから後になってもこのことを思い出せるように日記をつけようと思う。
僕はそんなことすっかり忘れていて、そうだったのかと思いだした。そう思えるだけで日記をつけ続けた意味はあったのかもしれないな。
さらにページをめくっていくと、日の間隔はどんどん短くなり、年をまたいだ今年の四月ごろには毎日欠かさず日記をつけていた。
四月六日
最近、毎日が死ぬほど退屈だ。世界から色がなくなってしまった気がする。だからこうやって無理やりにでも日記をつけて、昨日と今日の違いを探すしかないんだろう。
なんて悲しい日記なのだろうと思うかもしれないが、僕はそう思っていなかった。むしろ、内容はいったん置いといて、ここまで日記を続けられたことに多少なりとも達成感があったし、そんな日々を続けているとこの日記を楽しむコツなんかも分かってくるものだ。日記をつけるということは僕にとって間違い探しに近い。誰しもがやったことはあるだろう。そして、その難易度は時が経てばたつほど上がっていくし、些細なことになってくる。でも、その分見つけたときの爽快感は中々のものだ。しかし、だからと言ってこれが僕の支えになっているのかと言われたらそうでもない気がする。
じゃあ、何が僕の支えなのだろう。
自分でもいうのもなんだが、僕と言う人間は本当に生きていくのに向いていないというか、本来ならもうとっくに自殺したって不思議じゃない人間なのだ。
日記をパラパラめくりながら考えていると、その答えはすぐに出た。そして、相変わらずだなとため息にも似た笑いが込み上げてきた。それはルリと言う幼馴染が関係してくる。簡単に言えば彼女は僕のすべてなのだ。しかし、中学生になったころ彼女は遠いところに引っ越してしまってそれ以来一回も会っていない。僕は未だに彼女のことを忘れていない。しかしまあ、身の丈に合っていない恋をしたもんだ。きっと、可愛い彼女は今頃かっこいい彼氏でも作って幸せに暮らしているんだろう。そんな人間のことを支えにして生きているなんて、いつ支えが壊れるか想像したくもない。
日記をペラペラめくっていくたびに、日の間隔はさらに短くなって、一日に何度も日記をつけていた。ここら辺から曜日感覚が狂い始める。
七月七日
毎日寄っているコンビニがあって、今日もそこに寄ったが、今日の店員はいつもの愛層のいい店員ではなく、愛層の悪い人に興味なさそうな店員だった。長い前髪は目を完全に覆い隠し、猫背でどうにも接しづらいと感じる。当然ながら自分にも重なる部分はあって『大変だよな互いに』と心の中でつぶやいた。
僕はそのときのことを思い出してみると、僕はあの店員を嫌っていたという思う。彼を見ていると自分を思い出してしまってイライラするのだ。もし、彼が女性だったらまた違ったんだろう。
七月七日
今日の店員はいつもの愛層のいい女性だった。「いらっしゃいませー」の声も張りがあって、僕との共通点なんて死んで幽霊になっても見つけられないんだろう。でも、そっちのほうが絵でも見ているような感覚にさせてくれるから気が楽だ。
その後の日記もこのようなことが延々と描かれいて、つまらない、ああ、つまらない。
さらにページをめくるとちょうどページが今に追い付いた。
僕はすぐに日記をつけられるよう、そこのページの先端を折り、バッグを背負い大学へ向かった。
そこで講義を受けて帰るというのが僕のルーティーンだ。しかし、今日は大学にはいかなかった。その理由をうまく説明するためにはルリとの生活をもう少し詳しく説明する必要がある。まあ、安心してほしい。ほんの数分で終わるから。
一ページ目には『こくう』という僕の名前と『ルリ』という幼馴染の名前が書いてあった。まだまだ靄がかかった頭でもこれが嘘ではないことは不思議と分かったんだ。なんというか、明らかに異質な感じがした。例えるなら異世界の産物を見ているようだった。これを読み進めるほどの勇気がなくて、僕はまた布団に潜り込んだんだが、大学の講義があることを思い出して無理やりにでも起きなきゃいけなくなった。
眠い目をこすりながら洗面所に行って顔を軽く洗う。居間に戻ってバッグに教科書やら筆箱やらを詰め込んで、机の上の電子時計に目をやると、七時半を指していた。自転車通というのもあって時間はまだ余っていた。だから僕はこの時間を使って日記を読み返すことにした。その日記帳は二年間お世話になっているもので、表紙は色あせ所々ページの角は折れていた。
一ページ目を開くとこんなことが書かれてあった。
八月十五日
最近、時間が経つのが早く感じる。それが何となく怖いから後になってもこのことを思い出せるように日記をつけようと思う。
僕はそんなことすっかり忘れていて、そうだったのかと思いだした。そう思えるだけで日記をつけ続けた意味はあったのかもしれないな。
さらにページをめくっていくと、日の間隔はどんどん短くなり、年をまたいだ今年の四月ごろには毎日欠かさず日記をつけていた。
四月六日
最近、毎日が死ぬほど退屈だ。世界から色がなくなってしまった気がする。だからこうやって無理やりにでも日記をつけて、昨日と今日の違いを探すしかないんだろう。
なんて悲しい日記なのだろうと思うかもしれないが、僕はそう思っていなかった。むしろ、内容はいったん置いといて、ここまで日記を続けられたことに多少なりとも達成感があったし、そんな日々を続けているとこの日記を楽しむコツなんかも分かってくるものだ。日記をつけるということは僕にとって間違い探しに近い。誰しもがやったことはあるだろう。そして、その難易度は時が経てばたつほど上がっていくし、些細なことになってくる。でも、その分見つけたときの爽快感は中々のものだ。しかし、だからと言ってこれが僕の支えになっているのかと言われたらそうでもない気がする。
じゃあ、何が僕の支えなのだろう。
自分でもいうのもなんだが、僕と言う人間は本当に生きていくのに向いていないというか、本来ならもうとっくに自殺したって不思議じゃない人間なのだ。
日記をパラパラめくりながら考えていると、その答えはすぐに出た。そして、相変わらずだなとため息にも似た笑いが込み上げてきた。それはルリと言う幼馴染が関係してくる。簡単に言えば彼女は僕のすべてなのだ。しかし、中学生になったころ彼女は遠いところに引っ越してしまってそれ以来一回も会っていない。僕は未だに彼女のことを忘れていない。しかしまあ、身の丈に合っていない恋をしたもんだ。きっと、可愛い彼女は今頃かっこいい彼氏でも作って幸せに暮らしているんだろう。そんな人間のことを支えにして生きているなんて、いつ支えが壊れるか想像したくもない。
日記をペラペラめくっていくたびに、日の間隔はさらに短くなって、一日に何度も日記をつけていた。ここら辺から曜日感覚が狂い始める。
七月七日
毎日寄っているコンビニがあって、今日もそこに寄ったが、今日の店員はいつもの愛層のいい店員ではなく、愛層の悪い人に興味なさそうな店員だった。長い前髪は目を完全に覆い隠し、猫背でどうにも接しづらいと感じる。当然ながら自分にも重なる部分はあって『大変だよな互いに』と心の中でつぶやいた。
僕はそのときのことを思い出してみると、僕はあの店員を嫌っていたという思う。彼を見ていると自分を思い出してしまってイライラするのだ。もし、彼が女性だったらまた違ったんだろう。
七月七日
今日の店員はいつもの愛層のいい女性だった。「いらっしゃいませー」の声も張りがあって、僕との共通点なんて死んで幽霊になっても見つけられないんだろう。でも、そっちのほうが絵でも見ているような感覚にさせてくれるから気が楽だ。
その後の日記もこのようなことが延々と描かれいて、つまらない、ああ、つまらない。
さらにページをめくるとちょうどページが今に追い付いた。
僕はすぐに日記をつけられるよう、そこのページの先端を折り、バッグを背負い大学へ向かった。
そこで講義を受けて帰るというのが僕のルーティーンだ。しかし、今日は大学にはいかなかった。その理由をうまく説明するためにはルリとの生活をもう少し詳しく説明する必要がある。まあ、安心してほしい。ほんの数分で終わるから。
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