王子の取り巻きの伯爵子息の僕、好きな子(公爵令嬢・子爵養女)が2人とも王子に奪われたので断罪イベ起こして自分のものにしようとしてみる

ぬぬぬ木

文字の大きさ
4 / 5

この青い1滴は愛した人へ

しおりを挟む
幼い頃は好きだった。



 きっかけは14年前、彼の誕生日会。一目見た時、胸が高なった。

 そのせいで最初の挨拶は失敗。恥ずかしいやら悲しいやらでその後1週間は塞ぎ込んじゃって……



 でもそれ以上に、お父様になんで元気がないの? って聞かれた時に



「好きな人に恥ずかしい格好みせちゃったの……」



 と答えた時の方が印象的だ。



「お前に好きな人なんて居ない。忘れなさい!!」



 これまで聞いたことの無い口調だった。それから知らされた許嫁の存在。



 許せなかった。あのクソ王子を暗殺してしまおうかしら? みたいに思ったこともあったけれど、そんなことをしても彼と結ばれることは無い。



 だからずっと、この先死ぬまで王子の妻として生きて行くんだって覚悟を決めたのに……



 学校に入学してから、いえ…… 彼女と出会ってから彼は変わった。

 それまでずっとしていた影のある表情を、彼女の前ではしなかった。



 だからそう。私のモノでは無いのに。諦めた筈なのに……



 彼が学園から居なくなった時を見計らい、クソ王子と彼女をくっつけてやろうとしたの。



 その為に、ある日彼女を放課後に呼び出した。



「ねぇあなた。最近仲がいいけど…… |ラダマス
《彼》のことが好きなの?」



 って。自分で自分を笑っちゃう。



 そしたら



「えっ、急にそんなこと言われてもぉ……」

「勿体ぶらないでさっさと言いなさい!」

「……私ラダマス君じゃなくって、貴女にお近付きになりたくって」

「え?」

「小さい頃に街で見掛けてから、ずっと憧れでした! 好きでした!」

「へっ!? 急にそんなこと仰られましてもぉ……」



 ってね。そんなこと言われたの初めてで、思わず変な感じになってしまった。



 それからはあっという間だった。

 私は好意を伝えられた経験が無くって。女の子だから大丈夫だって。



深みにハマってしまった。



彼女も私といるために、自分から王子に好かれに行ってくれた。



 そして昨日の事件が起こった。



 私を斬りつけてきたのは好きだった人。

 ショックのあまり斬られる前に気絶しちゃって。

 もうナギに会えないのかと思うと悲しくて。



 そう、私が最後に思ったのはナギのことで、目覚めた時に愛を囁いてくれた彼ではない。



「ずっと前から、初めて会った時からお慕い申し上げておりました。」



 あっ、気持ちは繋がってたんだ。



 ちょっと嬉しかった。だけどそれ以上に悲しかった。



 もうこの人の物にはなれない。こんなに頑張ってくれたのに。



「それは…… 駄目よ。私と貴方じゃ……! ムグッ」



 強引に閉じられた唇は、好きな人のとは全く違っていた。



 幸せが感じられなかった。



あんなにも欲しかったものなのに



「いやっ!!」



 手で彼をどかし、口から漏れたのは拒絶の言葉だった。



―――――――――



 今日、彼女が彼と結婚した。

 私たちの仲が悪いと思っているラダマスによって私は侍女の格好で彼女を迎え入れる。



 やったじゃない私。

 王子でしようと思っていたことが、王子よりもマシな人でできた。



 だけど私はナギを見誤った。彼女は前が見えていなかった。



 彼の隣にいた私には目もくれず、持っていたナイフでグサリと。



 彼の断末魔を聞き戻った私に見えたのは、崩れ落ちて私を呼ぶ愛しい彼女と



 ピクリとも動かず赤い染みを周囲に広める愛しかった彼だけ。



 どうにか彼女を立たせて、甘美な言葉を囁いて。

 もうこの国には居られない。愛しい人は人殺し。



 これから多くの壁が私の前に立ち塞がるでしょう。

 きっと大丈夫ではない。心のどこか、14年間私を支えていたナニカが崩れて。

 流れる涙はたった1滴。私が彼にあげられる最後のもの。



 あぁ、ナギは美しい。だってこんなに…… なにも考えずに、幸せそうなんだもの。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

乙女ゲームに転生したモブです!このままだと推しの悪役令嬢が断罪されてしまうのでなんとかしようと思います

ひなクラゲ
恋愛
「結婚してください!」    僕は彼女にプロポーズした    こんな強引な方法しかなかったけど…  でも、このままだと君は無実の罪を着せられて断罪されてしまう  何故わかるかって?  何故ならここは乙女ゲームの世界!  そして君は悪役令嬢  そして僕は…!  ただのモブです

ゲームの世界に転生した悪役令嬢は最愛の推しに求婚したい!

ひなクラゲ
恋愛
 私は転生者です  この世界は私の転生前の日本という国のゲームにそっくりです  【スイートスイート♡ハーレム】  という名前の乙女ゲームで、色とりどりのイケメンが出てきます  もちろん私も推しができる位ハマっていましたわ!  せっかくこのゲーム世界に転生したのだから、推しにありったけの愛を囁やきたいですわ!!!  ただ私、追放及び処刑が決まっている悪役令嬢に転生してしまったのです!  困りましたわ〜  

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

悪役令嬢に転生したにしては、腕っぷしが強すぎます

雨谷雁
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公は、悪役令嬢セラフィナ。 本来ならヒロインをいじめ、最後は断罪される役だ。 しかし彼女には一つ問題があった。 前世の影響で、異常に腕っぷしが強いのである。 悪役らしく陰で動こうとしても、トラブルが起きれば拳で解決。 剣術教師より強く、騎士団にも勝ち、結果的に周囲から恐れられる存在になる。 そのせいで、断罪イベントは次々失敗。 ヒロインや王子たちとの関係も、ゲーム通りには進まない。 破滅を避けたいだけなのに、 力が強すぎて世界の流れを壊してしまう―― これは、物理で運命をねじ曲げる悪役令嬢の物語。

処理中です...