え！？ゴ、ゴブリンですか、転生先!?最弱種族ゴブリンでも道具と知識を使えば格上の相手も殺せるんです。

21話（1）

　雄叫びを聞いた途端、村を襲っていたシルバーウルフたちにも変化があった。先ほどまで統率がなくなり、おのおのバラバラに行動していたのにも関わらず、急に誰かに指示されたかのように動き始めたのだ。


　たぶん先ほどのボスの雄叫びが命令であったのだろう。狼たちは先ほどまでの行動がウソであったかのようにすぐに体制を立て直してしまう。


　それから彼らは奇妙な行動を取り始めた。


　狼たちは走って村から、どこか遠くに離れていくと思ったら思いっきり速度を付けて帰ってきて柵に向かい、その体をぶつけ始めたのだ。一匹だけではなかった。残っていたすべての狼たちが順番にまるで規則でもあるかのように突撃をしてくる。



　大きい体に速度を付けたシルバーウルフのタックルにさすがに柵もミシミシと嫌な音を立て始めている。だが狼たちも無傷ではない。思いっきり体を柵にぶつけているためあちこちをケガし、出血もひどくなってきている。けれど狂ったように彼らは突進を続けている。


　まずい状況だった。これを繰り返されれま長くはもたない。内側にいるゴブリン達も初めての狼たちの行動に動揺しパニックになってるようだ。このままでは、やられてしまう。


　急いで対処しなければと私は思い、突進しようとしているシルバーウルフに矢を放ち、命中させるが彼らは当たった瞬間はよろめくもそのまま柵へ突進を行い激突し、そこで絶命した。その姿を見ているにも関わらず、後続達は問答無用に突っ込んでくる。柵は何度も突進をくらい、少しずつきしむ音が大きくなってきている。


　私は矢を放つペースを上げてなんとか狼たちが柵にぶつかる前に倒そうとした。できるだけ急所を狙い、当たったもう動けなくなるように集中して矢をはなった。


　そしてそれがいけなかった。


　弓を放とうとしたその時、ドンという衝撃が体に走る。するとメキメキと音を立てて登っていた木が倒れ始めた。


　「な！」


　私は何が起こったのか分からず思わず下をみた。目に入ったのはあのボス狼の姿だった。こちらをしっかりと残った左目で見つめ、落ちてきた瞬間かみ殺そうと牙をむき出しにしていた。コイツが体当たりをして、私の登っていた木をなぎ倒したのだ。


　地上に落ちるのはまずい。そうとだけ考えて必死に飛び、隣の木に飛び移る。私がギリギリ隣の木にしがみつくことができた。


　やられた。完全に油断していた。狼たちが洞窟を襲っている時、私は狼達に、自分たちが食べる側でやられるなどどは思っていないのだろう、という評価をした。


　でも、どうやら私も同じらしい。私は狼を倒す側で倒されるわけはない、そう思ってしまっていた。コイツは、このボス狼はそこまで甘くない。現状、私の危険性を理解し、油断している所を殺しに来た。他の狼よりとても賢いのだ。