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原作でのマリーは青い炎という特殊な魔法をつかうキャラクターだった。
青い炎は本来の赤い炎の完全上位互換で帝国最強の魔法だ。
この力でマリーはたいした努力もせずに帝国のトップに立ち、主人公達を苦しめたのである。
けれど最終的には努力した主人公達に敗北し、友情、努力、勝利の素晴らしさを示すダシにされてしまうわけだ。
ちゃんちゃん。
もちろん私はそんな結末は嫌だし、自身の首もかかっているので原作のように怠けたりはしない。
魔法の練習は毎日みっちり欠かさずにやる。
もともとこの体が持つ才能のおかげか、毎日の努力の結果かはわからないけど私の魔法はやればやるほど伸びていっていた。
万が一のときに頼れるのは自分の力だけだ。
保険として鍛えておいて損はないだろう。
で、そんな風に魔法については順調であったのだが、それ以外がぜんぜん上手くいっていなかった。
国の政策については両親にこのままでは危ない!
と訴えたのだが、所詮他人からみれば私はただの5歳児だ。
誰が5歳児の言葉を真剣に聞いて、自身の行動を変えてくれるだろうか?
それに私には知識はあっても、実績はない。
だから信じていうことを聞いて貰うということがとても難しいのだ。
だから私はまず実績を作ろうと思った。
たくさん実績をあげ、あの人がいうならきっと正しいのだろうと誰もが思う存在になる。
そうなってようやく国の政策を自由にねじ曲げられるようになる。
革命まで残り13年。
実績を上げ、国を変えるにしては、全く足りない。
でも諦める気もない。
まだ5歳だからたいしたことをやらせてもらえてはいない。
本格的に実績をあげるとなれば学園に入学してからになるだろう。
今できるだけ勉強して、魔法も鍛えて、学園への入学にそなえるのだ。
「マリーは本当に頑張り屋さんね!人が変わったみたいだわ!ご褒美上げちゃう!もってきて!」
「ありがとうございます。お母様」
母は勉学にも魔法の特訓にも打ち込む
私をとてもかわいがってくれている。
まあ、原作でもこの母親は娘を溺愛していたので、何をしてても褒めてくれたのだろうけど。
それに人がかわったみたい、か。
あながち間違いではない。
今のわたしはマリーでもあり、前世の名前は思い出せない誰かでもある。
あなたの知るマリーではないのだから、当然だ。
そんな事実を知りもしない母は、メイドさんに合図をして何かをもって来させる。
ケーキだった。
たくさんの飾りのついたすごい奴だ。
うげえ、血税があ、と思ってもしまうが、
下手に断って関係を悪くしたくないので笑顔を作る。
「さあ、マリー、好きなだけ食べてちょうだい」
私の喜ぶ顔を見て、母はとても上機嫌だ。
本当、原作での主人公達への態度とは大違い。
貴族に対してはちゃんと優しい人で驚きだ。
「あ!」
と、母と話していると、メイドさんの悲鳴が聞こえた。
14,5際くらいのメイドさんが転んだ。若い。見習いだろうか?
そして悲鳴とともにケーキが空を飛ぶ。
そのままケーキは床にグシャリと落ちてしまうのであった。
一瞬、部屋に沈黙が訪れる。
メイドさん達の顔が青ざめていき、
それとは対照的に母の顔は真っ赤に染まった。
「この大馬鹿者!」
母は怒り、転びケーキを台無しにした見習いメイドさんを罵る。
「平民はこの程度のこともできぬのですか!?ああ!気分が悪い!」
「も、もうしわけございません、奥様!」
「あなたはクビです!今すぐ出て行きなさい!」
「そ、それだけは!それだけはお許しください!ここを解雇されてしまったら明日食べるものも・・・」
「黙れ!すぐに出て行きなさい!ごめんね、マリー。すぐ新しいモノを用意させるからね」
母は今にも泣きそうな見習いメイドさんには目もくれず、
私を慰めるように優しくいった。
うちに使えるメイドさんは、普通の労働者よりも賃金がいい。
だからその分家族に仕送りをしている子も多いのだ。
反応を見るに、おそらくあの見習いメイドさんもそうだ。
それに対して私はケーキを落とされただけ。
心配する方を間違えてるよ、お母様。
これが貴族と平民の差だ。
貴族は気まぐれ。
平民はその気まぐれで死んでしまう。
「お母様。私はお母様のお気持ちだけで十分です。あなたもケガはない?」
私は怒る母に感謝を伝えなだめつつ、転んでしまった見習いメイドさんの元へと行く。
ケガはなさそうだった。
「ま、マリー様。も、申し訳ございません」
見習いメイドさんは声を震わせ、目に涙を浮かべている。
さすがにたった一度の簡単なミスで、すべてお終いなんてかわいそうだよ。
「お母様、このメイド私にいただけますか?興味が湧きました」
「え?それを?別にマリーがいいのなら、構わないけど・・・」
母は私の要求をもごもごしながらも、受け入れてくれた。
転んでしまった彼女を、私専用のメイドさんにしてもらう。
これで簡単には解雇はされないはずだ。
今の私には、これくらいしかできないけど。
仕送り、頑張ってね。
青い炎は本来の赤い炎の完全上位互換で帝国最強の魔法だ。
この力でマリーはたいした努力もせずに帝国のトップに立ち、主人公達を苦しめたのである。
けれど最終的には努力した主人公達に敗北し、友情、努力、勝利の素晴らしさを示すダシにされてしまうわけだ。
ちゃんちゃん。
もちろん私はそんな結末は嫌だし、自身の首もかかっているので原作のように怠けたりはしない。
魔法の練習は毎日みっちり欠かさずにやる。
もともとこの体が持つ才能のおかげか、毎日の努力の結果かはわからないけど私の魔法はやればやるほど伸びていっていた。
万が一のときに頼れるのは自分の力だけだ。
保険として鍛えておいて損はないだろう。
で、そんな風に魔法については順調であったのだが、それ以外がぜんぜん上手くいっていなかった。
国の政策については両親にこのままでは危ない!
と訴えたのだが、所詮他人からみれば私はただの5歳児だ。
誰が5歳児の言葉を真剣に聞いて、自身の行動を変えてくれるだろうか?
それに私には知識はあっても、実績はない。
だから信じていうことを聞いて貰うということがとても難しいのだ。
だから私はまず実績を作ろうと思った。
たくさん実績をあげ、あの人がいうならきっと正しいのだろうと誰もが思う存在になる。
そうなってようやく国の政策を自由にねじ曲げられるようになる。
革命まで残り13年。
実績を上げ、国を変えるにしては、全く足りない。
でも諦める気もない。
まだ5歳だからたいしたことをやらせてもらえてはいない。
本格的に実績をあげるとなれば学園に入学してからになるだろう。
今できるだけ勉強して、魔法も鍛えて、学園への入学にそなえるのだ。
「マリーは本当に頑張り屋さんね!人が変わったみたいだわ!ご褒美上げちゃう!もってきて!」
「ありがとうございます。お母様」
母は勉学にも魔法の特訓にも打ち込む
私をとてもかわいがってくれている。
まあ、原作でもこの母親は娘を溺愛していたので、何をしてても褒めてくれたのだろうけど。
それに人がかわったみたい、か。
あながち間違いではない。
今のわたしはマリーでもあり、前世の名前は思い出せない誰かでもある。
あなたの知るマリーではないのだから、当然だ。
そんな事実を知りもしない母は、メイドさんに合図をして何かをもって来させる。
ケーキだった。
たくさんの飾りのついたすごい奴だ。
うげえ、血税があ、と思ってもしまうが、
下手に断って関係を悪くしたくないので笑顔を作る。
「さあ、マリー、好きなだけ食べてちょうだい」
私の喜ぶ顔を見て、母はとても上機嫌だ。
本当、原作での主人公達への態度とは大違い。
貴族に対してはちゃんと優しい人で驚きだ。
「あ!」
と、母と話していると、メイドさんの悲鳴が聞こえた。
14,5際くらいのメイドさんが転んだ。若い。見習いだろうか?
そして悲鳴とともにケーキが空を飛ぶ。
そのままケーキは床にグシャリと落ちてしまうのであった。
一瞬、部屋に沈黙が訪れる。
メイドさん達の顔が青ざめていき、
それとは対照的に母の顔は真っ赤に染まった。
「この大馬鹿者!」
母は怒り、転びケーキを台無しにした見習いメイドさんを罵る。
「平民はこの程度のこともできぬのですか!?ああ!気分が悪い!」
「も、もうしわけございません、奥様!」
「あなたはクビです!今すぐ出て行きなさい!」
「そ、それだけは!それだけはお許しください!ここを解雇されてしまったら明日食べるものも・・・」
「黙れ!すぐに出て行きなさい!ごめんね、マリー。すぐ新しいモノを用意させるからね」
母は今にも泣きそうな見習いメイドさんには目もくれず、
私を慰めるように優しくいった。
うちに使えるメイドさんは、普通の労働者よりも賃金がいい。
だからその分家族に仕送りをしている子も多いのだ。
反応を見るに、おそらくあの見習いメイドさんもそうだ。
それに対して私はケーキを落とされただけ。
心配する方を間違えてるよ、お母様。
これが貴族と平民の差だ。
貴族は気まぐれ。
平民はその気まぐれで死んでしまう。
「お母様。私はお母様のお気持ちだけで十分です。あなたもケガはない?」
私は怒る母に感謝を伝えなだめつつ、転んでしまった見習いメイドさんの元へと行く。
ケガはなさそうだった。
「ま、マリー様。も、申し訳ございません」
見習いメイドさんは声を震わせ、目に涙を浮かべている。
さすがにたった一度の簡単なミスで、すべてお終いなんてかわいそうだよ。
「お母様、このメイド私にいただけますか?興味が湧きました」
「え?それを?別にマリーがいいのなら、構わないけど・・・」
母は私の要求をもごもごしながらも、受け入れてくれた。
転んでしまった彼女を、私専用のメイドさんにしてもらう。
これで簡単には解雇はされないはずだ。
今の私には、これくらいしかできないけど。
仕送り、頑張ってね。
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